銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯

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第二十一章 世界旅行

あと二つ

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 私はフィナに連れられて、家の隣にある納屋に案内された。
 納屋に入り、私は驚嘆に声が詰まる。
「こ、これは……遺跡の転送装置か!」

 納屋にはあの黒い大理石のような円盤に上下を挟まれた転送装置が備え付けられてあった。
 私の背後からフィナが説明を交える。


「遺跡からこの転送装置を持ち出して、ここに備え付けた。そして、これを使い、エクアを過去へ送ったの」
「そういうことか……ん?」
「どうしたの?」
「いや、あまり口にしにくいが、エクアは時間を越えたため塵になってしまったんだよな」
「……ええ、そうよ」

「それでは、どうして私はそうならないんだ?」
「あんたには銀眼があるでしょ。銀眼に宿るナノマシンがあんたを支えてるの。アステ=ゼ=アーガメイトがあんたに付与した銀眼は特別製。悔しいけど、今の私でも合成は不可能」
「特別製か。しかも今の君でも合成できないとは……さすがは父さんだ」

「あんた、ファザコンだったんだ?」
「父を敬愛して何が悪いっ」
「べ~つに、悪くはないけど。ちょっとだけ残念な話をしようか」
「うん?」

「その銀眼に宿るナノマシンをあんたに付与したのはアーガメイトだけど、作ったのは別の人よ」
「なにっ!? そいつは何者だ!?」
「ふふん、内緒」
「むむ、話せないということか?」

「分岐したとはいえ、ここは未来。あんまりあんたに関わる先のことを話すのはね。どのみち、いずれは知ることになると思うし。ま、その時まで待ってなさい。それがいつ訪れるかまではわからないけど」
「そうであるならば、気長に待つとするか」


 私は嘆息の混じる言葉を飛ばす。フィナはそんな私へ微笑みを見せて右手をぱっと広げた。すると、転送装置を操るためのモニターが浮かぶ。
 そして、瞳だけを動かしてモニターを操っている。


「さてと、今からあんたを送り帰すわけだけど、最後の質問。あんたは銃のことを詳しく知っているの?」
「銃というと、古代人の銃のことか?」

 私は腰のホルスターに収めている銃へ目を向ける。
 その様子を見て、フィナは首を横に振った。

「なるほど、色々知らないみたいね。ま、大事にしなさい。どこかで役に立ってくれるでしょ」
「これもまた、銀眼と同様に特別製というわけか。帰ったらフィナに調べさせてみるか」
「遺跡の調査もままならなくて、転送装置を暴走させるような私だと無駄だと思うよ。それだったら余計なことに興味を抱かせず、遺跡調査に集中させた方が近道だと思う」
「そうか? ならば、そうしよう」

「それにね、その銃はあんた以外、興味を惹かれない代物。だから、あんたはそれを親父から購入した。そんなわけで、あんたが直接調べるように言わないかぎり過去の私が興味を持つことはないから」
「ん?」

「知りたがりの過去の私は何度か銃に興味を持ったはず。でも、あんたにせがんで銃のことを探ろうとしない。それは、興味を抱いてもすぐに興味が薄れてしまうから」
「随分と不思議な力を宿した銃のようだが……なぜ、私だけはこの銃に興味を惹かれるんだ?」
「さぁ、なぜでしょうね?」


 フィナは片眉を上げて、挑発するような態度を見せる。
「はぁ、答える気はなしか……」
「その内、わかるかもね。ふふ、それじゃ、久しぶりに起動させますか」


 フィナはモニターに瞳を向けて、左右に動かし始める。
 すると、一本の光の線が納屋内をなぞるように通り過ぎ、フィナが確認の声を産む。
「次元係数計算終了。ケントの次元係数――αアルファ22.5472679・Ωオメガ2.546。必要エネルギー量計算。転送コイル充填。空間閉鎖……はぁ、一度じゃ無理みたいね」

「ん?」
「二つほど別の世界・時間軸を経由しないと無理みたい」
「つまり?」

「あと二つの世界を跨いで、元の世界に戻れるってわけ。転送先では必要となる転送装置が稼働しているはずだから、それを使って。私がいる時代なら私を捕まえて、いないなら使える人を探して」
「……そんなに都合よく捕まえられるだろうか?」

「世界間の共鳴因子が繋がってるから、あるべき場所に戻れるようになってる。だから大丈夫よ。はい、この紙に必要な座標と転送装置の扱い方を記しておくから持っていって」


 彼女から帰るために必要な数値と手順が書かれた紙を受け取る。
「ありがとう。正直、何を言っているのかさっぱりだが、君を信じよう」
「ふふ、ありがとう。ま、私の知るケントなら不安があったけど、エクアが語ったケントなら、どんな困難も乗り越えられるでしょ」
「そうありたいと願っている」
「頑張ってね。それじゃ、転送装置の台の上に乗ってちょうだい」
「ああ、わかった」


 私はつるりとした黒い円盤の上に乗る。
 フィナは私を見上げながら、笑顔を見せてくれた。

「まさか、ケントに会えるとは夢にも思わなかった。短い時間だったけど、楽しかった」
「こちらこそ貴重な経験をさせてもらった。事故とはいえ、命の恩人に直接礼を伝える機会が貰えて嬉しかったよ。改めて、ありがとう。フィナ、エクア」

「うん。私たちも六十年が無駄じゃなかったことが確認できて安心した……………………名残惜しいけど、そろそろ」
「ああ、さらばだ、フィナ」
「さよなら、ケント」


 フィナが数度まばたきをすると、彼女の前に手のひらサイズの光の円盤が現れた。
 円盤は激しく回転を始めて、それに合わせるように、私の乗る黒い円盤に青白い光のカーテンが下りた。
 フィナは私へ手を振る。
 私も手を振って応える。

 光のカーテンは周囲をぼやけさせ、やがては景色を消し去り、黒の世界へと暗転した。


――納屋

 一人残るフィナは天井を見上げ、遥か先を見通す。
「エクア、私たちはやったのねっ。あなたのおかげでケントを救えた。ありがとう。悲しい犠牲だったけど無駄じゃなかった。私ももうすぐあなたと同じ場所に行ける。いえ、同じ場所に行けるかはわからない。でも、もしあっちで会えたら、お祝いをしましょうね」
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