351 / 359
番外編 最良だったはずの世界
番外編5 フィナ&フィナ
しおりを挟む――バルドゥルがいる――
この言葉にケントは激しい否定を繰り出す!
「ありえない! 奴は私たちが完全に滅ぼした! 共鳴因子を鎖にして繋ぎ、全次元から存在を消したはずだぞ!」
「あなたの世界ではそこまでのことを……? 残念だけど、この世界ではアステがバルドゥルを蘇らせて、彼らは二人で知を求め合う存在になったの」
「そんなことに……」
「もっとも、現在ではその二人も対立関係だけどね」
「ん、それは?」
「アグリス内にはアステ派とバルドゥル派がいるのよ。旗色はアステ派の方がまだまだ優勢だけど、アステが無視できないくらいの勢力ができつつある」
「知を求め合う存在から、知を求め争う存在にか。何とも面倒な」
大きくため息を漏らすケント。
僅かに生まれる会話の空白。
この空白を今まで沈黙を保っていたミーニャが埋めた。
「共鳴因子の鎖が意味を為さなかった……このことで、ミーニャの力が封じられている理由がわかったニャ」
「ミーニャ?」
「この世界は空間の干渉波によって雁字搦めになっているニャ。そのため、ミーニャの力がまともに使えにゃいわけにゃが、バルドゥルとやらが共鳴因子の鎖から身を守るために空間を封鎖した影響のようニャね」
彼女の声に同意する言葉が、ケントの懐から聞こえてくる。
「ミーニャさんだっけ? 彼女の指摘通りよ」
「フィナ?」
ケントは懐から青いナルフを取り出す。
すると、ナルフが淡い蒼の光を放ち、ナルフを中心に置いてフィナの立体映像が浮かんだ。
「初めまして、皆さん。私はフィナ=ス=テイロー。あんたがこっちの世界の私ね」
「ええ……驚いた。私のナルフではあなたのナルフの存在を検知できなかった」
「ふふん、こっちは遺跡を爆破しちゃったみたいだけど、私の世界では隅々まで調べてるからね。その差がでたのかも」
胸を張り、身体を仰け反らせるフィナ。
これにこちらのフィナが眉を顰める。
「自分とは言え、ムカつく」
「ふふ、爆破なんてもったいないことしたね」
「たしかに。だけど、爆破して知識を得られなかった反面、バルドゥルが地球の技術をいかんなく振るえなくなった。いま彼は、地球の知識を何とかスカルペルの技術に落とし込めている状態。そのおかげで、何とか戦えている」
「なるほどねぇ」
「それにしても、そっちは全部を得たんでしょ? 隅々まで調べた割にはバルドゥルを消滅させることに失敗したんだ」
「うっさいな。天才でもミスはつきものよ」
「それじゃ、そのミス――」
「わかってる。同じミスがないかでしょ。今回の事象と他の可能性を含めて、センサーで次元を走査してるところ……うん、バルドゥルが残ってる世界はここだけみたい」
「大丈夫なの?」
「疑り深い私ねぇ~。あの、ミーニャさん?」
「なんニャ?」
「あなたは私たちよりも超すごい存在なんでしょ? この遺跡を乗っ取ろうとするくらいの知識があって、空間に干渉する魔力に関しては群を抜いてる。だから、色々わかるんじゃない?」
「まぁニャ」
「じゃ、他にバルドゥルいる?」
「あんまりお前らのやることに干渉するのはニャ~」
「あれ、今回の問題の発端は誰だっけ?」
「にゃっ? にゃかにゃか、悪ニャね」
「ふふ~ん、どういたしまして」
「にゃ~、仕方にゃいな。ちょっと調べるニャ……いにゃいニャ」
「だって、未来の私さん」
フィナはにんまりとした笑みを見せて軽い口調を見せる。
それにこちらのフィナはため息を漏らし、ケントが謝罪を口にする。
「はぁ、若いころの私ってこんな感じだったっけ?」
「申し訳ない。彼女のこういうお調子者っぷりはなかなか変わらなくてな」
「誰がお調子者だ! で、ケント。バルドゥルはどうすんの?」
「決まっている。あのような危険な存在、放っておくわけにはいかない」
彼はこちらのフィナへ顔を向ける。
「他世界の政治事情に介入することには気が引けるが、バルドゥルに関しては別だ。バルドゥル退治に手を貸そう」
「ふふ、ありがとう。ちょうど、総力戦の間際。新たな戦力は歓迎する」
「あくまでもバルドゥル退治だけだ。戦争に参加するつもりはないぞ」
「バルドゥルはアグリスにとって戦力の要の一つ。そいつがいなくなるだけでも、こちらとしてはありがたい。それで、あいつを消し去る方法は?」
「それは私の世界のフィナに尋ねる。フィナ、兵器の稼働は可能か? こちらへ持ってくることは?」
この問いかけに、立体映像のフィナは何やら忙しなく両目を動かしながら答えを返す。
「そうだねぇ、兵器関係は完全に封印してるから、それを解除すると時間が掛かるしなぁ。う~ん、大雑把な兵器であれば何とかなりそうかも。でもそれだと、破壊範囲が広大だし……そうだ、私がバルドゥルの気を引くから、ケントが止めを刺して」
「私が?」
「あんたの銃。銃弾は私製だけど、バルドゥルに十分通用するはずよ」
「そう言えば、この銃の弾丸はナノマシン特攻。言わば、古代人に対する特攻の弾丸だったな。わかった、何とかしよう。だが、どうやって気を引く?」
「それは今から考える。とりあえず、一度通信を切って、どうするかに集中するね。あ、モニタリングはしてるから安心して」
「わかった。では、頼んだ」
立体映像のフィナが姿を消す。
ケントは空中に浮かんでいるナルフを懐へ仕舞う。
一連のやり取りに対して、こちらのフィナが不安げに尋ねた。
0
あなたにおすすめの小説
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
転生したら実は神の息子だった俺、無自覚のまま世界を救ってハーレム王になっていた件
fuwamofu
ファンタジー
ブラック企業で過労死した平凡サラリーマン・榊悠斗は、気づけば剣と魔法の異世界へ転生していた。
チート能力もない地味な村人として静かに暮らすはずだった……が、なぜか魔物が逃げ出し、勇者が跪き、王女がプロポーズ!?
実は神の息子で、世界最強の存在だったが、その力に本人だけが気づいていない。
「無自覚最強」な悠斗が巻き起こす勘違い系異世界英雄譚、ここに開幕!
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜
もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。
ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を!
目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。
スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。
何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。
やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。
「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ!
ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。
ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。
2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる