20 / 32
第四章 山に木霊する叫び声
出発
しおりを挟む
私たちの番が回ってきました。
目的地を目指して出発です!
と行きたかったのですが、後方でいまだ待機をしている生徒の姿が見えなくなったところまで歩き、私は立ち止まりました。
そして、皆さんにある提案を行います。
「え~っと、皆さん。このままコース通り進まず、ショートカットをしませんか?」
「はい?」
「ん?」
「ショートカット?」
私は地図を取り出して、現在地とゴール地点を直線で結びます。
「普通に道を進むと、湾曲した山道を歩き、途中で分岐した道を選ぶことになります。ですが、これだと大変なタイムロス。ですので、ここからゴールまで直線コースで向かいましょう」
そう、提案するとレンちゃんが眉を折りました。
「直線コースって……ここからゴール地点の間には山があるんだけど?」
「その山を越えていくんですよ」
「いや、あのね……」
「大丈夫ですって。山の高さはさほどではありませんし、頂上付近は台地になってますから、一気に登ってしまえば、あとは楽ですよ」
エルマが地図と目の前の山を見て、ため息を漏らします。
「ミコン、急がば回れって言葉知ってる?」
「失礼な、知ってますよ」
「だったら、こんな無茶しなくてもよ」
「人と同じことをしてても、同じような評価しか得られません。多少の無茶は必要なものですよ」
「そうは言ってもなぁ……」
「まぁまぁ、このショートカットを使えば、大幅な時間の短縮が可能です。私の計算では最低でも一時間半くらいは。ここで点数配分の内、五分短縮するごとに10点が輝きます。つまり、九十分短縮=180点の加算となります。これは大きいですよ」
この点数について、ラナちゃんが懸念を訴えてきます。
「だっども、スタンプはどうするの? その分点数が入手できないん?」
「この180点で十分賄えると思います。それに、今回の授業の本質はスタンプじゃありませんから」
「「「え?」」」
三人の疑問の声が重なります。
私はその疑問に答えました。
「今回の授業について、私は伝令中に寄り道しては駄目だと言っていました。それについてもう少し深く考えてみたんです。そこではたと気づいたんです」
ここでレンちゃんが小さくポンと手を打ちました。
「なるほど、伝令――つまり、早く情報を伝えること。そんな状況下でスタンプ集めはおかしい。スタンプ集めは罠か」
「そう、レンちゃんの指摘通り。とはいえ、スタンプを集めたからといって、減点されることはないと思います。表向き点数は加算されます。ですが、内申点は……」
エルマも授業の意図に気づいて、頷くように言葉を漏らします。
「そういうことかぁ。授業を額面通り受け取り、それを行ったことによる点数と、授業の本質に気づいて得た点数とに振り分けられるんだ」
「そういうことです。私は後者の方が、後々の評価が高いと踏んでいます」
と、意気揚々に私は答えましたが、ラナちゃんが不安そうに山を見つめます。
「だっども、この山を登んのは、わんずはともかくみんなはだいだけお?」
「ふふ、じぶんはともかく、ですか。ラナちゃんは自信あるみたいですね」
「んま、村では野山を駆け巡るなんてさはんのはいはいだから」
「私も同じです。レンちゃんとエルマの自信は如何ほどですか?」
「本格的な山登りはしたことないけど、こういった野外での活動や戦闘訓練を行っているよ」
「俺も同じ。それに体力には滅茶苦茶自信があるし」
「ふふ、ということは皆さん、体力気力に自信ありなわけですね。ならば、他の皆さんを出し抜いてやりましょう!」
私は元気いっぱいに拳を空へ突き出しました。
ラナちゃんとエルマはその勢いに押され、小さく手を上げて応えてくれますが……。
「……ふむ、そうであっても危険なんだけど」
「レ、レンちゃん。でも、ほら、この試験の本質を見抜いたことを証明できて、他の皆さんよりも印象を強く与えることができますから」
と、言い訳――もとい、正当な理由を述べますが、レンちゃんはジーっと私の顔を見て……。
「ミコン、前回の補習、どうだった?」
「ギクギク! も、もちろん、余裕ですよ。朝飯前というか、一切れのケーキをぺろりと言うか」
「芳しくなかったんだ?」
「それは…………」
私は観念して、ものすごい勢いで頭を下げました。
「すみません! いまいちだったんです。だから、ここで盛り返したんですよ!」
「やっぱり」
「でもでも、ほら! ラナちゃんとエルマの関係も上手くいったみたいですし、ここからは成績に目を向けて――」
「そういう言い訳は嫌いだなぁ。ここは素直であってほしい」
「あ、う……あの、皆さん、協力して頂けませんか?」
私は猫耳と尻尾をへたりと下げて、恐る恐る三人へ目を向けます。
すると――。
「まったく、下手な言い訳なんかつけずに、初めからそう言えばいいのに。いいよ、私は協力する。二人は?」
「わんずはミコンに世話になったから、ここでおへんしたい」
「ま、俺も誤解を解いてもらったってのがあるからいいけどさ」
「だそうだよ、ミコン」
「うう、すみません。皆さん。ありがとうございます」
「ふふ、じゃあ、話もまとまったことだし。ミコンが考えるショートカットとやらに挑戦してみるか。正直に言うと、普通に課外授業を熟すよりも面白そうだと感じてるからね」
目的地を目指して出発です!
と行きたかったのですが、後方でいまだ待機をしている生徒の姿が見えなくなったところまで歩き、私は立ち止まりました。
そして、皆さんにある提案を行います。
「え~っと、皆さん。このままコース通り進まず、ショートカットをしませんか?」
「はい?」
「ん?」
「ショートカット?」
私は地図を取り出して、現在地とゴール地点を直線で結びます。
「普通に道を進むと、湾曲した山道を歩き、途中で分岐した道を選ぶことになります。ですが、これだと大変なタイムロス。ですので、ここからゴールまで直線コースで向かいましょう」
そう、提案するとレンちゃんが眉を折りました。
「直線コースって……ここからゴール地点の間には山があるんだけど?」
「その山を越えていくんですよ」
「いや、あのね……」
「大丈夫ですって。山の高さはさほどではありませんし、頂上付近は台地になってますから、一気に登ってしまえば、あとは楽ですよ」
エルマが地図と目の前の山を見て、ため息を漏らします。
「ミコン、急がば回れって言葉知ってる?」
「失礼な、知ってますよ」
「だったら、こんな無茶しなくてもよ」
「人と同じことをしてても、同じような評価しか得られません。多少の無茶は必要なものですよ」
「そうは言ってもなぁ……」
「まぁまぁ、このショートカットを使えば、大幅な時間の短縮が可能です。私の計算では最低でも一時間半くらいは。ここで点数配分の内、五分短縮するごとに10点が輝きます。つまり、九十分短縮=180点の加算となります。これは大きいですよ」
この点数について、ラナちゃんが懸念を訴えてきます。
「だっども、スタンプはどうするの? その分点数が入手できないん?」
「この180点で十分賄えると思います。それに、今回の授業の本質はスタンプじゃありませんから」
「「「え?」」」
三人の疑問の声が重なります。
私はその疑問に答えました。
「今回の授業について、私は伝令中に寄り道しては駄目だと言っていました。それについてもう少し深く考えてみたんです。そこではたと気づいたんです」
ここでレンちゃんが小さくポンと手を打ちました。
「なるほど、伝令――つまり、早く情報を伝えること。そんな状況下でスタンプ集めはおかしい。スタンプ集めは罠か」
「そう、レンちゃんの指摘通り。とはいえ、スタンプを集めたからといって、減点されることはないと思います。表向き点数は加算されます。ですが、内申点は……」
エルマも授業の意図に気づいて、頷くように言葉を漏らします。
「そういうことかぁ。授業を額面通り受け取り、それを行ったことによる点数と、授業の本質に気づいて得た点数とに振り分けられるんだ」
「そういうことです。私は後者の方が、後々の評価が高いと踏んでいます」
と、意気揚々に私は答えましたが、ラナちゃんが不安そうに山を見つめます。
「だっども、この山を登んのは、わんずはともかくみんなはだいだけお?」
「ふふ、じぶんはともかく、ですか。ラナちゃんは自信あるみたいですね」
「んま、村では野山を駆け巡るなんてさはんのはいはいだから」
「私も同じです。レンちゃんとエルマの自信は如何ほどですか?」
「本格的な山登りはしたことないけど、こういった野外での活動や戦闘訓練を行っているよ」
「俺も同じ。それに体力には滅茶苦茶自信があるし」
「ふふ、ということは皆さん、体力気力に自信ありなわけですね。ならば、他の皆さんを出し抜いてやりましょう!」
私は元気いっぱいに拳を空へ突き出しました。
ラナちゃんとエルマはその勢いに押され、小さく手を上げて応えてくれますが……。
「……ふむ、そうであっても危険なんだけど」
「レ、レンちゃん。でも、ほら、この試験の本質を見抜いたことを証明できて、他の皆さんよりも印象を強く与えることができますから」
と、言い訳――もとい、正当な理由を述べますが、レンちゃんはジーっと私の顔を見て……。
「ミコン、前回の補習、どうだった?」
「ギクギク! も、もちろん、余裕ですよ。朝飯前というか、一切れのケーキをぺろりと言うか」
「芳しくなかったんだ?」
「それは…………」
私は観念して、ものすごい勢いで頭を下げました。
「すみません! いまいちだったんです。だから、ここで盛り返したんですよ!」
「やっぱり」
「でもでも、ほら! ラナちゃんとエルマの関係も上手くいったみたいですし、ここからは成績に目を向けて――」
「そういう言い訳は嫌いだなぁ。ここは素直であってほしい」
「あ、う……あの、皆さん、協力して頂けませんか?」
私は猫耳と尻尾をへたりと下げて、恐る恐る三人へ目を向けます。
すると――。
「まったく、下手な言い訳なんかつけずに、初めからそう言えばいいのに。いいよ、私は協力する。二人は?」
「わんずはミコンに世話になったから、ここでおへんしたい」
「ま、俺も誤解を解いてもらったってのがあるからいいけどさ」
「だそうだよ、ミコン」
「うう、すみません。皆さん。ありがとうございます」
「ふふ、じゃあ、話もまとまったことだし。ミコンが考えるショートカットとやらに挑戦してみるか。正直に言うと、普通に課外授業を熟すよりも面白そうだと感じてるからね」
0
あなたにおすすめの小説
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる