この俺に本気で勝てると思っているのか?〜偽りの一族に埋もれた、神を殺す力を持つ少年~

雪野湯

文字の大きさ
45 / 45

第45話 暴虐なる計画

しおりを挟む
 ギルドの使いをケフェウスと呼んだノヴァの言葉に、レックスとオリカは目を見開いて驚いた。

「はっ?」
「それは本当なの!?」
「うん。普段はいかついおじさんを影武者に立ててるから、二人は知らなかったんだろうけど」


 ノヴァはケフェウスへ体ごと向き直り、短く問い詰めた。
「どういうこと?」
「大雑把な質問だなぁ。一言でいえば、ソフィアの勝手な行動の後始末」
「彼女は何を企んでいるの? 私たちに何をさせようとしているの?」
「僕を止めたいんだろ。人類を数段高みへと成長させる計画をね……」

 この発言の意味が分からず、ノヴァは困惑の表情を浮かべた。
 それはレックスやオリカも同様だ。

 戸惑う三人をよそに、ケフェウスはデブリへ話しかける。
「久しぶりだね。意識集合体はまだ健在なんだ?」
「なんとかな。あなたはまだ、活動しているのか?」
「ああ、もちろん。他世界との競争と神の攻撃から、この世界を守るために必要なことだからね」


 レックスが二人の会話に割って入る。
「正直、関わりたくない気持ちが大きいんだが、それでも気になっちまう。あんたは何を考えてるんだ。俺たちを成長させるって?」
「君たちは見てきただろ? 神の力の恐ろしさを。神に対抗できる力を持つ種族を。僕は、そのような存在に対抗できるように、君たちを更なる高みへと引き上げたいんだ」

「なんで、あんたはそんなことを知ってるんだ? なんで、そんなことをするんだ? そもそも、そんなことできるのか?」
「知っている理由も、行いたい理由も、できる力を持っている理由も同じ。僕は失われた技術を保持している七百万年前の人類の生き残りで、神を殺した者の生き残りだからさ」
「はっ?」


 驚きに声を詰まらせるレックス。代わりにオリカが続きを尋ねる。

「それらが本当だとして、あなたの具体的な目的は?」

 この問いに、ケフェウスは天井を見上げて、遠くを見つめた。
「七百万年前に、僕たちは神に対抗し、勝った。だけど、この世界で神が人類に与えていた恩恵は知性。知性を失った同胞は皆、野獣へと落ちた。一夜にして、他の天体へ人を送れるほど発展していた文明が崩れ去ったんだ」

「それを取り戻そうと?」
「まぁね。ただ、神の影響からのがれ、知性を保つことをできたのは僕一人だった。それでも僕は、一から世界を作り直した。野獣に落ちた君たちに知識を与えて、今という時代を築いた」

 
 さらに語りを続けようとするケフェウスの声を遮り、ノヴァが叫ぶ。
「そんな話はどうでもいい! それがお兄ちゃんと何の関係があるの!?」
「おおありさ。彼はこれからの人類の模範となる存在だからね」
「え?」

「神に比類する力を持ち、殺せる力。様々な種族との競争にも耐えられる知恵と肉体。そのために生み出された、遥か昔の僕が作った生命体」
「あんたが、お兄ちゃんを作った?」

「ああ。もっとも、神との戦いで全滅していたとばかり思っていたけど。でも、生き残りがいた。おかげで、今後は君たちを加速度的に進歩させられそうだよ」


 そう言って、ケフェウスは皆の姿を宿すが、その瞳は実験動物を見るかのような冷たい無色の瞳。
 瞳に嫌悪感を抱いたノヴァが声に激情を乗せようとしたが、ケフェウスは先んじてこう語る。

「元神である君の、いや、君たち不死者とアルムスが組み合わされば、人類は強力な種族となるだろうね」
「――――こいつっ!? そうか、私を手元に置いたのはそのために! お兄ちゃんことも!」

「まぁ、そう興奮しないでよ。僕は君たちに直接どうこうするつもりはないから」
「つまり、間接的には何かするつもりってことね?」

「ああ――いや、正確にはもうおこなったかな? すでにアルムスと君のデータは十分にある。それを使って、僕は人類の改良に取り組む。ただそれだけで、君たちに迷惑は掛からないよ。これが完成するのもまた、遥かの先の話。それも、君たちが気づかないうちそう変わるように仕組むつもりだから」

「だからって、私たちを実験動物にすることは変わらないじゃない!!」


 このノヴァの激昂に対し、ケフェウスはまるで鬱陶しい子虫を払うかのように手を振った。
「まったく、せっかくサービスでいろいろ教えてあげたのに」
「何がサービスよ! 今まで黙っていたくせに!!」
「すぐにカッカするのは君の悪い癖だと思うよ。どうやら、これ以上は冷静に話をできなさそうだ。失礼するよ」



 ケフェウスは岩盤となっている出口へ向かおうとしたが、途中で足を止めて、ノヴァやレックス、オリカへ微笑みかける
「邪魔をしたければ邪魔をすればいいさ。だけど、僕は……神よりも強いよ」


 そう言葉を残して、姿を消した。
 追いかけようとするノヴァをオリカが制止する。
「待ちなさい!」
「待って、ノヴァちゃん! 落ち着いて、アルムスを放置するわけにはいかないでしょう!!」
「――――っ!? もう!」


 ノヴァは頭を激しく振って、アルムスの体を借りているデブリに問いかける。
「あなたはケフェウスの味方なの?」
「私はどちらの味方でもない。むしろ、心情的には貴様たちの味方だ。だが、何もしてやれることはない。そろそろ、アルムスが目覚めるからな」
「お兄ちゃんが?」

「ああ。そうだ、消える前に言葉を残しておこう。彼に対抗するのはよせ。神でも対抗できぬ。それでも対抗したいのならば……アルムスが鍵となる。アルムスなら彼を殺せるだろう。お勧めはしないがな」


 そう言って、デブリは瞳を閉じ、台座へ前のめりに倒れた。
 レックスがすぐさま体を支える。
「……眠っただけのようだな。アルムスの方も眠っているって感じだ。起こすか?」

 問いかけに、オリカが首を横に振る。
「その前に、この話をどうするか決めておきましょう」
「そうだな。突拍子もない話……まず、アルムスには黙っておこう。これらは時期を見て話すとして。あとは俺たちがどうしたいかだが……」

 レックスは偽りのない自分の本音を言葉として表す。
「俺はもう、関わる気はない。ギルドマスターの話だと、何をするにしてもだいぶ先の話だし、ヤバそうなやつを敵に回してまでどうこうする気はねぇ」
「彼は私たち人間を実験動物のように見ているわよ」

「オリカ……それでもだ。俺は関わりたくない」
「そう……私はもっと深くギルドマスターに問いただしたいと思っているけどね。ノヴァちゃんは?」

 レックスとオリカの視線がノヴァへ集まる。
 彼女の答えは――


「……自分とお兄ちゃんが無事であればそれでいい。でも、やり口が気に入らない。それに、私たちが無事である保証はない。だけど、しばらくはお兄ちゃんにこのことは伏せておきたい。いろいろ行動するにしても、まずは私だけで」
「いえ、『私たち』でやりましょう」

 と言って、オリカはレックスを睨みつけるように見た。
「そんな目で見るなよ、オリカ。わかった。多少は手を貸してやるが、俺は深入りしはしねぇぞ」

 両手を上げて答えるレックス。
 オリカとノヴァはそんな彼を目にして、小さなため息を漏らす。
 そして、二人は眠るアルムスを見た。


「調べて、問題があれば、ギルドマスターを敵にする可能性もあるわね」
「うん、そだね。その敵は神よりも強い相手。対抗できるのはお兄ちゃんだけ。でも、できれば、危険なことをさせたくない」

 ギルドマスターケフェウスは己の理想のために、命を実験に使うことも厭わない。
 それに対して反発を覚えるノヴァとオリカだが、敵はあまりにも強大。
 対抗しようとすれば、大切な人を巻き込み傷つけることになるだろう。

 二人の心は大切な人への想いと懸念の狭間で揺れ動く。
 そんな中で、レックスは心にこう誓っていた。
(絶対、巻き込まれないようにしねぇとな!)


 神を殺し、神の恩恵を失おうとも、そこから這い上がり歩む世界。
 しかし、歩みを先導する者は他者の犠牲を厭わず、更なる高みを目指そうとしている。

 この、独りよがりの理想と暴走を止めるられるのはアルムスだけ。
 そして、その選択を与えられるのは二人の女性。

 神を超える存在に挑もうとする彼女たちの選択と歩みはこれからも続く。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

処理中です...