彩時 〜嚆矢の命編〜

ビードロくん。

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#F15B40 前編

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梅雨が開け、地を日光が照らす。
晴天の空の中を飛んでいく鳥の姿は自由そのもの、そんな世界の中一人の青年は真っ赤に染まっていた。


「はぁ…はぁ……はぁ」

陽射しが皮膚に鋭く突き刺さる。
肌が焼けていくのが、嫌でも伝わってくる。

〈華蓮、京都近辺の制圧は完了したぞ〉

〈こっちはまだ、終わってないよ。平日だって言うのに観光客が多すぎて〉

〈うんまぁだと、思ったから俺は外周を担当したんだけど〉

〈はぁ、後で絶対に恨むからな〉

乱暴に無線を切られる遥冴。

「ふぅん、仕方ない……応援行ってやるか」

遥冴はひと仕事終えた足で華蓮の元へ向かった。

一体何故、天由遥冴と飯塚華蓮が京都にやってきたのか、それは数週間前に遡る。


遥冴はいつも通り授業を受けていた。
なんとなく聞きながら、胸の内で関係ないことを考えている。

早くお昼ならないか、とか授業つまらないなとか、後は授業中にテロリストが襲撃してきたらどうしようかとか、そんな事を考えていると校内放送が入る。

「天由遥冴くん、天由遥冴くん、直ちに理事長室まで来なさい。繰り返しはしません」

理事長である飯塚華蓮、本人から直々にお呼び出しを受ける。

「えっと、なにかしたの?  天由さん」

「いやぁ……特に何もしてないと思うけどなぁ。とりあえず行ってきますね」

「はい、ゆっくりでいいですからね」

遥冴は先生とクラスメイトから見送られながら教室を出ていった。

理事長に到着し扉を開けると、

「遥冴、遅い。もう少し早く来てくれ」

と開口一番軽いお説教のような事を言われる。

「突然呼び出しておいてよく言うよ」

「飛び出し、突然来るものでしょ。それに呼び出すんだから急用かもしれないんだから急ぐのは普通でしょ」

「無線使わない時点で、急を要する件じゃないんだろ」

華蓮と話しながら遥冴は理事長のソファー、華蓮の対面に腰掛ける。

「そこを突かれると何も言えないんだけど?」

「事実なのだから、仕方なだろ。んで、なんの用?」

さっきの自由気ままな雰囲気はどこへ行ってしまったのか、気になってしまうほど理事長室は一気に真剣な空気が流れた。

「ここ最近の性蝕者被害の件、覚えてるか?」

「もちろん、寝る間も惜しんで対応してるんだから嫌でも覚えるよ」

「それでな、どうやらその原因が京都にあるらしいんだ」

「京都?」

華蓮の話はこうだ。
ここ数ヶ月増え続けている性蝕者達は全て京都の何処かしらで、増えていると。

なぜ、京都に原因があると言い切れるのかと言うと……特定の場所は不明だが、世界中の性蝕者被害について調べた時に京都だけが以上に性蝕者の反応が多い事に気づいたらしい。

「京都かぁ……もしかして、京都に行け!  …なんて言わないよな?」

「流石にこんなに急には言わないよ」

「だよなぁ、はぁ…良かった」

「遥冴ひとりじゃなくて、私と一緒に行くんだから」

「………はい?」


これが、ふたりが京都に来る事になった出来事である。

「うへぇ、人がいっぱいだなぁ……えっと、確かこの辺に…あっ、いた」

遥冴は京都の外周から中へ進み、観光地の商店街を歩いていると見覚えのある姿を発見し駆け寄った。

「おい、華蓮」

「ん?  って遥冴。なんでここにいるんだよ」

「なんでって、俺の担当範囲がしばらくは安全になったからだけど」

「羨ましい限___ッ!」

華蓮と遥冴は何かを感じとった様で、一斉に走り出した。
観光客の間や隙間を器用に駆け抜けていく。
周りの人達はふたりの姿を見て頭に疑問符を浮かべていた。

異変を感じ取った場所に向かうと、女性や男性の悲鳴が響いていた。

「遥冴!  ……あれって」

「奴らも進化してるって事だな……」

ふたりが見た光景は、今までの常識をひっくり返す光景だ。
華蓮と遥冴の視線の先では、騒ぎの中心に居る人達が順々に筋肉が肥大化していき、性蝕者になろうとしている瞬間が映る。

「皆さん!  直ちにこの場を離れてください!  急いで!」

華蓮が声を上げ、避難指示を出すと周りにいた人たちはようやっと事の重大さに気が付いたようだ。

戦場の花として名を轟かせている華蓮の声を聞き一目散に避難していく。

「流石、戦場の花だな」

「からかってる暇があるなら、あれ何とかするよ」

「はいはい、りょーかい」

観光客や一般人が避難するの横目に、ふたりは性蝕者に変わっていく人達と対面する。

「う゛ぅぅぅ……た、たすけて…ぐれ……」

徐々に意識が奪われていきながらも助けを乞う人達。

「遥冴、一瞬で終わらしてやろう」

「あぁ、流石にこれは見るに堪えないな」

性蝕者に完全に成り代わる前に、人として最後を迎えさせるようにふたりは攻撃を仕掛ける。

ギリギリ声を出せる人達の叫びや助けを乞う声がふたりの脳に響くが、ふたりは一寸の迷いもなく騒ぎの原因を処理していく。

十数体いた、性蝕者達はものの数分で跡形もなく姿を消した。

「遥冴、これはどういうことなの?  ……どうして生きている人が性蝕者に…」

華蓮の疑問は最もだった。
今まで、性蝕者は死んだ者の死体を利用されていた。
死体の生物兵器だった。
十年前から出現しだした性蝕者達の常識が、たった今ひっくり返った。

「……もしかしたら、死体を性蝕者に変化させるではなく…腐敗したものに触れる又は腐敗した物の近くにいる。実はこれが条件なのかもしれない」

「死ぬ事が条件じゃないとすると、たしかに辻褄は合うけど……だとしてなんでこんなに?」

「出店だ!  観光客が多い場所……そこの出店の商品に菌を混ぜこませる」

「……知らずに食べた人たちは、体が菌で蝕まれいつでも準備万端に……それなら、他にも被害者が出ちゃうかもしれない、手分けして原因の出店を探そう」

「あぁ、わかった」

遥冴と華蓮は二手に別れて京都中を探し回った。
菌とは、性蝕者の身体から発見される性蝕菌の事でこの菌は自然には発生しない。
何者かが、自身の力を……パーソナビリティを使用し世界にばら撒いている。

数年の研究の結果この性蝕菌は寒さに弱い事が判明した、華蓮達はそれを駆使し性蝕菌を見つけ出そうとしている。

「……死ぬ事が発現の条件じゃないか…こりゃある意味で振り出しに戻ったようなものだね」

華蓮は有名所の出店や屋台等をしらみ潰しに調べていく。
幸い、華蓮の顔が広いお陰で特にいざこざが起きることも無く調査に協力してくれる。

「ここにはないか……後は___ッ!  何者だ!」

人気の無い路地で次の目的地を確認して居る華蓮に向かって弓矢が放たれる。

「私の矢は時速三百三十キロ……新幹線よりも早いと言うのに、流石ですね。華蓮さん」

華蓮の居る路地に一人入ってくる女性。

「いきなり、矢を放つとは随分なご挨拶ね」

「仕方ありませんよ、あの戦場の花に真っ向で勝負して勝てるはずがありませんもん」

「なら、なぜ私と距離を詰めるのかな?  言動が一致してないと思うが?」

華蓮の問にうーんと唸り声をあげながら考えだす、女性。

「うーん……だって、不意打ちの初撃をあぁも簡単に避けられたら、その後攻撃を続けても無駄でしょ?  この矢地味に高いんだから」

華蓮の問に答える姿は、愚痴を言いながら拗ねているようにも見えた。

「そうね、確かに言えてるかも。でも、だとして何しに来たの?」

女性の言い分は、一度避けられたらその後も避けられるから意味が無い、だから華蓮の目の前に来たと言うが、それはそれで何故なのか疑問が募る。

「えっ?  それはね……近接の方が自身あるからよ……」

女性はそう呟くと、弓の形状を変化させ隠されていた刃を露わにし華蓮に喉仏目掛けて攻撃を仕掛ける。

華蓮は初動こそ遅れたが、危なげなく左腰に掛けている刀を抜き防御する。

「……そんなおもちゃで私の攻撃を止めるなんて……私って本当に可哀想」

華蓮と女性の攻撃が激化する。
路地裏の壁には傷が着き、金属同士の甲高い接触音が周囲に響く。

「どう?  防戦だけじゃ、音が響いて他の人たちか見に来ちゃうよぉ!?」

どんどん激しくなっていく女性の攻撃に、華蓮の刀は刃こぼれどころが徐々に響が入っていた。

華蓮は内心焦っていた。
女性の言う通り、防戦だけではいつかは押し切られてしまう。
武器の耐久も徐々に無くなっていっている。

華蓮の頭に、パーソナビリティという単語が浮かぶが出来れば最後まで使いたくない。
そんなことを考えながら、女性の攻撃を防御していると。

「そろそろ、終わりなんじゃないのかしら!  ___ッ」

華蓮の背後から槍が飛んできた。
その槍は女性の頬を掠めながら飛んでいく。

「…なに?  突然……」

女性は槍に気を取られてしまった。

「___喰らいな!」

その隙を逃すまいと華蓮は女性目掛けて刀を振り下ろす。
だが、ギリギリで反応した女性に攻撃を防がれこのままの勢いで刀身が粉々に粉砕してしまった。

「___これで!  本当におしまいよ!」

高笑をしながらトドメを刺そうとするが、華蓮は女性の攻撃を手で防ぐ。
刃が自身の掌に突き刺さるが、華蓮をその攻撃を利用し女性の後ろに回り込む。

「何をして___!?」

華蓮の突然の行動に困惑しながらも、女性は後ろを向き華蓮を追うが、次の瞬間女性は左目を潰されていた。

「……長物があって助かったわ」

女性は刺さっている槍を泣きながら抜く。

「い゛だい゛!  なんで…こんな事するの!」

突然逆ギレしだす女性。
華蓮はつい内心、先に手を出したのはあなただろうとつぶやいてしまう。

「殺しに来たなら、殺される事ある。あなたがどれだけ強くてもそれは変わることは無いのよ」

華蓮は淡々と血を流しながら泣き叫ぶ女性に言い放つ。
この子はきっと本当は凄い良い子なのにこうするしか無かった、こうせざる得なかったのだろうと、華蓮は勝手ながらに同情する。

「……いつまでも、泣き叫ぶ訳にはいかないでしょ。今…目の前にあなたを、自分を傷つけた相手が目の前にいるのに、どうして武器を持たないの?  ……いい?  十秒後にあなたは私に殺される。それまでに、私を殺してみせなさい」

華蓮は女性に情けをかけた。
十秒という時間は、日常生活なら然程気にする時間じゃ無いだろうが…戦場においては別になる。
十秒…五秒、一秒でさえ惜しくなる、それが戦場である。
その中で、華蓮は十秒というとても長く貴重な時間を彼女に与えたのだ。

だが、華蓮は気づいていた十秒の時間があれば動かない人を殺す事はそう難しい事じゃない。
ましてや、さっきまでの女性の動きを考えるとあくびが出てしまうくらいだろう。
ただ……それは、動く事が出来たらの話に限る。

女性は血液が流れ続けてる左目を抑えながら、地面にしゃがみただ子供の様に泣きじゃくるしか無かった。

「……五…四………三…………二………………一」

カウンドダウンが終わりを告げる。

華蓮は槍を女性に向かって突き刺す。

「___んぇ……なんで……どうして……」

槍は女性には当たっておらずすぐ横の地面に突き刺さっていた。

「あなたが綺麗だったからね。私と一緒に来る?」

女性を勧誘する華蓮。
その行為に困惑の表情を浮かべる女性。

「……ふっ、まぁ断ったら殺すんだけどね?」

笑顔で華蓮は云う。

「身体が震えてろくに話せないだろうから、相槌してよ。それなら出来るでしょ?」

震える体を何とか動かす女性。

「よし、それでいい……あっ、遥冴。」

女性を挟むように遥冴が華蓮の元へ合流した。

「お前な……勧誘の仕方が雑すぎるだろ」

遥冴は現場を見て瞬時に何が起こったのか、起こっているのかを理解し華蓮に云う。

「そう?  どっかの誰かさんと同じ手を使っただけなんだけど?」

「……誰だい?そんな奴がいるのか……怖いな!」

何の気なしに会話を始めた、二人を見てさらに困惑する女性。

「それで、この子。スカウトしていい?」

「別に構わんよ、あんたがスカウトするなんて珍しいからな。相当な何ががあったんだろう」

女性は、命が救われた事を理解したがそれよりも、自分の目を潰してきた相手と仲間にならないといけないという、困惑や衝撃で頭がいっぱいだった。
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