クズとカモ

春花菜

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『優しい恋人』番外編

あの日の話

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吾妻BADEND『優しい恋人』の番外編です。
吾妻が山奥に良仁を連れ込んでから、良仁が病院で目を覚ますまでの話。
吾妻BADEND読んでくださった方はご存知かと思いますが、サイコみ強いヤンデレなので閲覧注意です。
ちゃんと彼本来の光属性の吾妻と鴨川のハピエンルートも早く書いてあげたいですね…。


✳✳✳✳✳✳

鴨川良仁Side




 唄うような優しい声が聞こえる

 闇に溶けて消えてしまいそうな子守唄のような声

 微睡みの中、ふわふわとした頭とは逆に重くて仕方ない瞼を押し上げるように開けた。
月明かりしかない風景が、揺れている。
薄いわずかな光に照らされるようにしたキラキラとした粒がぽたりぽたりとオレの頬に落ちては溜まることなく溢れていく。


 「良仁」


 甘い声でオレの名前を呼ぶ。
そうだ、それがオレの名前だ。
呼ぶ声は誰だっけ。この耳心地のいい優しい声は誰だっけ。ここはどこだっけ。何してたっけ。
記憶の糸を手繰り寄せるように、繋ぐように頭の中を探る。
霞がかった意識の中、グチュグチュっ、と下品な水音が耳にへばりつくように聞こえてくる。視界が揺れ、体の中で何かが蠢いて、腰に骨張った感触が当たるたびに反応するように小さく息を吐くような声が自然と溢れた。
すえた臭いと生臭さが鼻につき、思わず口元を抑えた。
カラカラに乾いた口から出てくるものなんて何もないのに、そう考えてた瞬間霞がかっていたものが晴れるように頭がはっきりとした。


 そうだ、吾妻に犯されてたんだった。






✳✳✳✳✳✳✳

 『だから同じ方法で俺を好きになろっか』


 そう言った吾妻の声はいつもと変わらない調子で、撫でる手も優しくて、いつものように笑っていて


 オレは、それがとても怖かった。


 ガタガタと震える体を慰めるように、吾妻はオレを包み込んで抱きしめた。
視界の端で葛さんの遺体が映り、思わず目を背けてしまう。
葛さんがしたことは許せない。
正直、死んだほうがマシだと思う屈辱的な行為だった。


 『絆された?好きになった?』


 吾妻が言った言葉が脳裏を過る。
……絆されたりするわけないし、好きになる要素が微塵もない。
それこそ、殺したいほど憎いと思っていた。
でも、実際に手をかけることができるかと言われたらきっとできない。
許してるわけでもないし、一生許さない…だけど、人の命を奪っていいとは思わない。
だけど、奪ってしまった。
後戻りできない罪をオレのせいで吾妻に背負わせてしまった。


 ……オレが助けて、と言ってしまったから。


 耳元に吾妻の熱い息がかかり、ピクッと体が反応してしまう。
さっきまで散々葛さんに犯し尽くされた体は快感を貪るようになってしまっているらしく、ちょっとしたことでも快感に変換して簡単に受け入れてしまう。
幸い盛られた薬は抜けているようで、それだけが救いだ。もう、あんなあられもない痴態は晒したくない。


 「アイツに何された?」


 「………っ、ふ」


 耳元で囁くように吾妻が問う。
ゾクゾクと痺れに似たものが背中を走る。
言いたくない。あんなこと、思い出したくもない。
口と目をキュッと閉じると、呆れたようなため息が聞こえて耳をかぷりと噛まれた。


 「ひゃっぁ」


 「言わねえの?」


 ぴちゃぴちゃと鼓膜が犯されているような水音が脳を溶かす。
痺れるような快感が体を巡り、はしたない声が出るのを拒むように唇を噛んだ。
吾妻の舌が耳をぬるぬると這う。
こんなこと、いくら親友だからって普段なら気持ち悪くて仕方ないはずなのに、体が興奮するように熱を帯びてくるばかりか、下半身にある大事なところがゆるく勃ちあがってきていて絶望した。


 「良仁、噛むなよ…あ~ぁ、血出てる」


 「んっ」


唇をぺろっと舌で舐めた吾妻と目が合う。
よくわからない山奥の月明かりしかない車の中じゃよく見えないけど、吾妻の表情はどこまでも穏やかで微笑んでいるように見えた。


 「ほら、言ってみ?怒んねぇから」


 …怒らない?
そもそも吾妻が聞いたところで怒ることなんてないだろ。
もちろん吾妻が過保護で、オレを困らせる奴がいたらちょっと怒っていた気もするが…オレが怒るならともかく、吾妻が怒る必要は元々ないと思ってるから吾妻が怒るから言わないんじゃなくて、思い出したくもないことだから口に出さないだけだ。


 「良仁?」


 「……っ」


 慈しむような優しい手つきで吾妻がオレの頬を撫でる。いたずらを咎めないよ、と優しく慈愛に満ちた母のような瞳で。
それが酷く歪で、怖く感じた。


 「吾妻、警察…行こう。オレも一緒に捕まるから」


 オレは震える手をキュッと握ってゆっくりと言葉を出すと、吾妻は目を見開いた。まるで心底驚いたというような顔だ。


 「オレの、オレのせいだってわかってる。吾妻が、葛さんを殺したのだって…オレを助けるためだって。で、でも!人を殺して普通に生活なんてできないし…ずっと逃げることも、無理だし!それに罪を抱えて生きるより、罪を償う方が……」


 「罪?」


 吾妻は微笑んで首をひねった。
まるで、言っていることがわからないと言うように。


 「ひ、人殺しは、罪、だろ…?」


 「ああ、それ」


 ははっ、と吾妻が笑う。
笑っている声のはずなのに、それが酷く冷めているように聞こえて思わず息を飲んだ。

 「正しいことをしたんだから、罪じゃない」


 吾妻の声にオレは背筋が凍りそうになった。
当たり前のような顔して、当たり前のような声で言う吾妻が怖かった。
正しい?人殺しが?
罪じゃないって、意味がわからない。

 ああ、でもわかった。
今の吾妻はオレが知ってる吾妻じゃない。
今の吾妻は普通じゃない。
そして、吾妻をこんな風にしてしまったのはオレだ。
オレが助けを求めたから。
オレが自分でできなかったから。
オレのせいだ。
だったら、オレがこの罪を背負うべきだ。
吾妻の気が済むように、受け入れるべきだ。


 「良仁」


 吾妻がオレの頬に触れる。
震えそうになるのを堪えて、触れてくる手に頬ずりするように寄せると吾妻は満足そうに微笑み息を小さく吐いた。


 「言わないと、だめか?」


 「何?」


 「思い出したくない…アイツのこと」


 オレがそう言うと、吾妻は考えこむように顎に手を当てて視線を横に向けた。
心臓がバクバクとうるさく騒ぐ。
落ち着け、冷静に…吾妻は、オレを助けようとしてるんだから、嫌なことは、しない…はずだ。
吾妻が思案している間の時間がひどく長いものに感じた。
嫌な汗が背中を伝う。ゴクッとカラカラの喉で息を飲み込むと、吾妻がこちらを見つめるように向いた。


 「そうだな。オレたちは恋人なんだから、あんな奴がしたことをするのもおかしいよな。恋人はレイプじゃなくて、セックスなんだから」


 にっこりと吾妻は笑う。
…恋人?いつ、オレは吾妻の恋人になったんだ?
確かにさっき、葛さんを忘れさせるために好きになればいいとかなんとかよくわからないことを言っていた。
言っていたけど、オレと吾妻は親友で恋人になった覚えもない…けど


 そこまで考えてオレは唇をグッと噛んだ。
吾妻は今、普通ではないんだ。
普通に見えるけど、狂ってるわけで…よくわからない言動も噛み合わない話も、もしかすると頭の中がぐちゃぐちゃなのかもしれない。


 「そう、だろ?アイツと吾妻は違うんだから…吾妻は、恋人だし…す、好きだし…」


 オレは吾妻の言葉にのっかるように返事をした。オレのせいなんだから、受け入れるって決めたんだから…吾妻の言葉を否定するのは、きっと間違いだ。


 吾妻は目を見開くと、パチパチと大きく瞬きをしてから破顔した。
とろけてしまいそうな甘い瞳で、高揚するように顔を赤くした。心底幸せそうなまるで乙女のような表情に、ゾッとする。


 「俺も好きだよ、良仁。辛かっただろ?嫌だったよな、あんな奴に体触られて…大丈夫。俺はお前の味方だから、俺だけがお前を助けてやれるから。大丈夫、アイツのことなんてすぐ忘れさせてやるよ。な、良仁…」


 「う、うん…」


 オレはへらっと笑うと「そうだ」と、吾妻はゴソゴソと荷物からはさみを取り出した。
思わぬ刃物の登場に体が竦む。
そんなオレの様子を気にすることもなく、吾妻はオレの手を拘束していた結束バンドをパチンと切った。


 「ごめんな、良仁。外すの忘れてた」


 「いや、ありがと…」


 本当に忘れていたのかよ、と内心ツッコミたくなったが、そんな言葉は無意味だ。
吾妻が忘れていたということならそれでいい。
吾妻は結束バンドを切るとはさみをすぐに片付けた。オレは安堵するように小さく息を吐くと、吾妻が覗きこむようにオレの瞳を見つめる。
相変わらずの整った顔が、近すぎるくらいに近い。女の子なら卒倒してるかもしれない。


 「な、なんだよ…」


 「良仁、脱いで」


 「は?」



 「恋人同士のセックスなんだから、脱いで誘って欲しい。アイツには無理矢理されたんだろ?俺には無理矢理じゃないってとこ見せて」


 「……っ」


 セックス、という単語に動揺した。
おそらく数時間前、この車で行われた行為が脳裏を過ぎって体がガタガタと震えた。
拘束されて、無理矢理突っ込まれて、血が出ようが、痛いと言おうが止めてもらえず、それどころか興奮するように嗤いながらオレの上で腰を振られた。薬を盛られ、喘がされた…途中から記憶がないけど、人の尊厳を踏みにじるような最低なレイプ。


 「あ…っ、オ、オレ…」


 震えが止まらない。吐き気がこみ上げくる。はぁ、はぁ…とばかり声が出てきてうまく息ができない。
吾妻はそんなオレを大事そうに抱きしめると「大丈夫」と、繰り返しながら背中を撫でた。徐々に落ち着いてきた呼吸を整えていると、ふいに唇に柔らかい感触を感じた。
一瞬の出来事に驚いていると、吾妻の目尻が下がる。


 「落ち着いたか?」


 「え、あ……うん」


 確かに落ち着いた。
吾妻は、おかしくなったのかもしれないけど、吾妻といるのは落ち着く。
今までもたくさん助けてもらったし、なんだかんだ大切だったし、恋愛って意味じゃないけど好きだ。
僅かな月夜の光が吾妻を照らす。
どこまでも穏やかな表情の吾妻はオレの知っているいつもの吾妻に見えるけど、吾妻の後方にガラスにへばりつく葛さんの遺体が現実に引き戻す。


 受け入れる、でもやっぱり現実も受け入れるべきだ。


 「吾妻、やっぱり警察にいこう。このままじゃ……うわっ、な…っ!?」


 ガタンッと音がしたと思ったら、座席が倒れて吾妻に覆い被さられるように天井を向いていた。
肩をグッと押さえつけられるようにされて、肉の潰れるような痛みに思わず眉を寄せて吾妻を見ると、吾妻は見たこともない冷ややかな瞳で見下ろしていて、思わず喉がヒュッとなった。


 「だから、それもういいって」


 「あず……んっ、ぅ」


 これ以上話はないと言われるように強引に唇を塞がれた。
それに悲しむ暇もなく、顎を掴まれて無理矢理舌をねじ込まれた。
さっき戻してしまったばかりの口の中はさすがにマズイだろうと抵抗すると、更に角度を変えて遠慮も何もなく暴力的なほどに激しく舌で蹂躙する。
それなのに、絡み合う舌がうっとりするほど甘くて、気持ちよくて、もっともっとと貪欲にねだりそうになる。
息をするのも忘れて夢中でキスをしていると、いつの間にか押さえつけられていた肩から手が下に降りていて、尻のすぼみに指が入ってきた。


 驚いて体をひねると、足を曲げられ、膝にのしかかられると尻が持ち上がってしまった。


 「んっんーーー!!」


 抗議の声をあげようにも、舌を絡み取られて声を出すこともできない。逃げることもできるはずもなく、それどころか殴ることも蹴ることも出来ない。
怖い。こわいこわいこわい…っ


 自由のきかない体も、ザワザワと直接脳を触られているような蘇る不快感も。
体が震える、嫌な汗が背中を濡らす。
それでも、キスが気持ちよくて体が快感を求めてしまう。


 不安、恐怖、快感、矛盾


 体と心が噛み合わなくて頭がパンクしそうだ。グラグラと酔いそうになっているオレを無視して、吾妻は指を増やしていた。
鈎のように指を折り、ぬちゃぬちゃと卑猥に聞こえる粘着質な水音を立てながら掻き出すように指を出し入れした。
チリッとした痛みと同時にそれを上回る快感が襲い、キスをする唇の端から唾液が溢れた。
快感に支配されるように、体がだんだんと熱くなる。
ゆるく勃ちあがっていた雄が、今ではガチガチになって先走りがとろとろはしたなく溢れた。
キスのせいでただでさえ酸素不足だというのに、与えられる刺激が体を興奮させて浅い息になる。


 何も考えられない、くらくらする。


 いつの間にか恐怖も不安も快感に上書きされ、酸素不足の頭はふわふわと酔うようで気持ちがいい。
力の入らない腕をヨロヨロと吾妻の首の後ろに回して引き寄せるように力なく抱きしめると、微笑むような息が吾妻からフッと漏れて髪をすくように頭を撫でられた。
まるで「よくできました」と言われているような優しい手つきで、心地よかった。


 覆いかぶさられたままだが、吾妻は少し体を浮かせて体重をかけて押さえ込むような体勢をやめた。
甘い余韻の残る唇を離して、お互いの混じり合った唾液が糸を引いて名残惜しんだ。


 あまり新鮮とは言えない濁った空気が一気に流れ込んできて、肺を満たす。
はぁはぁ、と胸を上下させていると生理的な涙が滲んだ視界で吾妻と目があった。
さっき、冷たく見下ろしていたような目ではなかったことにホッとしたが、微笑んでいる瞳の奥が猛禽類のそれを思わせ、ゾクッとした。


 「良仁、愛してる」


 「あっ、あーーーーっ!!?」


 吾妻の言葉を合図に、尻を串刺しにするように一気に肉棒で貫かれ、背中が弓なりにビクンッ、と跳ねた。


 「よ、しひとのなか、あったかい…っ、すげ、絡みついてくる…っ」


 「はっ、ぁ…あッ、ン…あず、まぁ…ゆ、ゆっくり…ゆっくり、して…っ」


 「ごめ、ムリだわ…っ、腰とまんねえ…っ!良仁!良仁…っ」


 激しく体を揺さぶるようにピストンされ、ぬちゃぬちゃと車の中に音が響く。
肉壁をえぐるようにこすられるたびに、圧迫感とは別の痛みと痺れるような快感に目の前がチカチカして、声にならない声が恥じらいもなく漏れた。
興奮するような声で吾妻はオレの名前を繰り返しながら腰を激しく打ち付けた。


 「あっ、あっあっーーーー…!!」


 「くっ……!」


 存在感の増した吾妻の雄がドクンドクンと生々しく波打つように動いて、吾妻とオレの腰が隙間なくピッタリとくっついた。
お腹がじわりじわりと温かくなって、吾妻の荒い息が上から聞こえた。
吾妻の腹をべったりと汚していた白濁を指ですくうように絡めて、愛おしそうに眺めてから吾妻はペロリと舐めた。
うっとりと恍惚した表情を浮かべる吾妻を最後に、疲れきった体は耐えきれなくなり闇に吸い込まれるように意識を手放し、泥のように眠りに落ちた。



✳✳✳✳✳✳


 あれから何時間経っただろう。
いや、何日経ったのだろうかと言った方が正しいのかもしれない。
汚れきったオレの元愛車から見える景色が明るくなったり、暗くなったりしていたからきっと日付は何度か変わっているんだと思う。
そんなことはもう数えるのも、考えるのも止めてしまったからわからない。
吾妻が気にしてないなら、オレも気にする必要はないし、吾妻がここにいるんだから、オレもここにいるのが当然なんだから。


 「良仁、水飲もっか。口開けて」


 「うん」


 オレは吾妻に言われるままに口を開ける。吾妻はペットボトルを開けて、水を口に含むとオレの顎に手を添えて口移しで与えてくれる。ゴクッと音を鳴らして、カラカラになっている喉を潤す。
甘美なまでの冷たい感触が喉を通ると、割れそうなほど痛んでいた頭が少し和らいだ気がする。


 「吾妻、もう少しちょうだい」


 「…いーよ」


 オレがねだると、吾妻は微笑んでまた水を飲ませてくれる。
吾妻は優しい。
欲しいもの欲しいと言えたらちゃんとくれるし、えらいと褒めてくれるし、抱きしめてくれるし、愛してくれる。
オレは吾妻がいないと何もできないどうしようもない奴なのに、吾妻は文句も言わずに一緒に居てくれるんだから本当にすごく優しいのだ。


 ぐぅ、と腹の虫が鳴る。
水を飲んだせいでお腹が刺激されたのかもしれない。
お腹を無造作に擦っていると、吾妻はクスッと笑うのでなんだか恥ずかしくてうつむいていると、吾妻は抱きしめて優しくキスをしてくれる。それがとても温かくて、嬉しくて照れるように笑っていると頬で頭をスリスリとしてくれた。


 「おなかすいた?」


 オレがコクリと頷くと「そっか」と、吾妻は言う。
お腹がすいても、吾妻が与えてくれるモノ以外は体に入れちゃだめだから飲み物も、食べ物も、それ以外も吾妻がくれないものは食べたり飲んだりしたらだめだし、自分で勝手に食べたり飲んだりするなんてもってのほかだ。それが恋人なんだって吾妻が言ってたからそれは正しいことなんだ。間違ってることはしちゃだめ。間違ってることをしたら恋人じゃいれなくなる…それだけは嫌だ。


 吾妻は携帯食の包みを開けて、パキッと折るように歯で噛むとそれをオレに運んでくれる。
親鳥が雛鳥に愛情を注ぐように、吾妻はオレに愛情を注いでくれる。
パサパサの味気ない栄養食品だけど、幸せで満たされているから味なんて関係ない。
もぐもぐと咀嚼してから、ゴクッと飲み込むとねっとりと喉に絡みつくように感じて水分が欲しくなる。


 「吾妻、水欲しい」


 「はいはい」


 わがままなオレの言葉にも嫌な顔ひとつしない吾妻は優しい。
オレの恋人が吾妻で良かったと、心底思った。


 幸せな食事の時間が終わって、椅子に背を預けるように天井を向いていると、吾妻が寄り添うようにして抱きしめてくれる。
狭い空間だけど、不思議と窮屈には感じなかった。

 ふいに、飢えるような感覚に襲われる。
幸せで満たされているはずなのに、吾妻のにおいが鼻をかすめるとどうしようもなく欲しくなる。食べたばかりだというのに、お腹がさびしくて仕方ない。


 「良仁?」


 「吾妻…お腹、さびしい」


 「そっかぁ…うーん、どうしようかな」


 「吾妻ぁ…」


 「じゃあ、良仁が勃たせて。勃ったら挿れてあげる」


 「ありがと、吾妻」


オレは吾妻の言葉が嬉しくてお礼を言ってから、吾妻の下半身を覆う衣類を取り払う。
ふにゃりと柔らかいままの吾妻のちんぽをパクリと口に運ぶ。
歯を立てないように舌でゆっくり舐めながら、玉をやわやわと揉む。
すぐに挿れてもらえるように空いた手で自分の尻を指でほぐすのももちろん忘れない。


 「んっ、ふぁ…」


 少し硬くなってきた吾妻のちんぽに嬉しくなりながら、じゅるじゅると溢れてくる唾液を潤滑剤にしてバキュームのように吸いながら顔を上下させる。
吾妻は喉の奥まで飲み込むと喜ぶからちょっと苦しいけど、頑張って一生懸命に顔を動かす。


 「…良仁、挿れていい?良仁の口の中気持ちいいし、良仁のエロい姿見たらすぐ勃っちゃった」


 吾妻の言葉に嬉しくなりながら口を離すと、吾妻は膝をポンポンと叩いた。


 「こっちおいで。背中向けて、自分で挿れられる?」


 「うん、できる」


 吾妻に背を向けるように膝を跨ぐと、右手をついて自分の体重を支えながら、左手でピースをするように孔を広げながらゆっくりと腰を落とす。


 「いい眺めだけど、挿れないのか?」


 吾妻はそう言うとぴったりとくっつくようにしていたちんぽをにゅるにゅると孔の入口に擦りつける。


 「ぁ…、んぅ」


 「まだ?」


 「いれ、挿れるからぁ…っ、待って」


 「えー?そんなこと言って…良仁はこうやってされるの好きだもんな。孔、ヒクヒクしててすっげえエロい」


 「きもち、い…っ、あっ、ま…っ、やぁああッ」


 腰を掴まれて、グッと強引に落とされると深いところまで一気に吾妻のちんぽが挿入されて呆気なく白濁を散らした。


 「…っは、待てなくて挿れちゃったぁ…あれ?良仁、挿入しただけでイったのか」


 「ぁふ…っ、う、うん…オレだけ気持ちよくてごめ…っぁ、あ!?やぁ、そんな…イったばっかで…オレ、あっ、だめっ、はげし…っ、おかしくなっちゃう…っ、ぁ、あっ」


 「だって、良仁エロすぎ…っ、めちゃくちゃ興奮する…っ、動くなって言う方がムリだろ…っ、すっげー…吸い付く。良仁のなかうねってて、気持ちいー…」


 「ぁっ、あ!きもちい、あずまぁ…きもちい!」


 「うん、そうだよ良仁…っ、今誰が良仁を気持ちよくさせてる?」


 「あず、あずまのちんぽ…っ、あずま、あずまぁ…」


 「うん、よくわかっててえらいな。もっと俺の名前呼んで…いっぱいイこうな」


 「あず、あずまっ、あずまっ、あずまぁ~~~っ、」


 吾妻は何故かいつもそうやって執拗なほど確認してくる。吾妻以外がオレに触れるはずもないのに…心配性の吾妻らしいとは思うけど、吾妻の名前を呼ぶたびに嬉しそうに微笑むからオレも嬉しくなって夢中で名前を呼んだ。
オレも吾妻に名前を呼ばれるとお腹のあたりがきゅんってなるから、もしかすると吾妻も単に名前を呼ばれたいのかもしれない…そう思うと、可愛くて愛おしく感じる。


 それから何回も揺さぶられるように奥をこじ開けるように抱かれながら、ギシギシと車の軋む音が響く中、オレは揺れるちんぽから何度も射精した。
もうカピカピでどうしようもないシートに新しい白い染みを作りながら、声にもならない声で喘ぐ。
まるでAVの女みたいな声が出ることがいまだに信じられないが、こんな声でさえ吾妻は聞きたいって言うんだから仕方ない。


 「よし、ひとさぁ…」


 「ぁ、あッ、な、なに…っ」


 「アレ、誰か覚えてる?」 


 快感を貪るように溺れていると、吾妻はフロントガラスに指を指す。
べったりとガラスにへばりつくようにしてこっちを見ているような気持ち悪いものが目に入る。
吾妻はいつも通りの質問をしてきた。
毎回どういうわけか、同じ質問をしてくる。
いつもどういう答えをしているかは忘れたけど、答えは決まっていることなので深く考える必要はなかった。


 「知らな、い…っ、あれ何?気持ちわる…っ、んっんーーーッ、ぁ、はっ、なん、なんで…っ、あず、ま…おっき…はげし、だめっ、またイっちゃ…っ、」


 「…はは、そっか、知らないよなぁ…だよな…くっ、ははっ、やっば…たまんねえ…」


 背中を後ろからグッと押されて、寝バックのように車のダッシュボードに胸を押し当てると、興奮するような吾妻に腰をガンガンと打ち付けられた。
あまりの激しさに意識が飛びそうになる。
肉壁をカリでひっかくように抽挿され、前立腺をぐりゅ、と圧されるたびにとろとろととめどなく精液が垂れ流される。
ずっとイキっぱなしのような痙攣を起こしながら、閉じることのできない口からははしたなく唾液が溢れた。


 滲む視界の中、ガラス越しに気持ちの悪いものと目が合う。
人だったものとは、かろうじてわかる腐った肉。

 吾妻はどうしてオレがこんな醜いものの名前を知っていると思ったんだろう。


 吾妻がいつもより大きく吠えるような声を出して、オレのナカを満たしてくれるように奥で射精した。
あったかいものがお腹いっぱいに広がっていくことに安心するように、オレはゆっくりと闇に溶けていくように目を閉じた。


 おわり

――――――――――――――――――――――――

吾妻×鴨川 監禁調教編でした。
読んでいただき、ありがとうございました!
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感想 2

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みんなの感想(2件)

たかし
2023.01.26 たかし

こういうメリバ系のヤンデレずっと探してました!ありがとうございます🙏🥹

2023.01.26 春花菜

わー!ありがとうございます!メリバ大好き民ですね!?仲間です!見つけてくださりありがとうございます!

解除
転生ストーリー大好物

最高です

2020.06.19 春花菜

ありがとうございます!!!嬉しすぎるお言葉ありがとうございます!!!

解除

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