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第12話 根っこの部分
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「……ん……?」
目が覚めると、誰かの背中におぶられていた。自分の意思とは関係なく景色が流れている。
「気が付いたか? 陽平」
「……えっと……今は……?」
「俺と先生がついたタイミングでもう倒れてたって、及川が。悪い、傘置いていけばよかった。あと、陽平おぶって歩けるってことはあのタイミングで俺及川おぶれた。焦って……判断ミスった。……ごめん」
「……まあ、仕方ないよ。恵一は悪くない」
「火事場の馬鹿力って奴かもしれないけど。担架ひとつしかないし、まさか陽平が倒れてるとは思わなかったし」
「それは……ごめん」
彼の背中の向こうを見ると、担架で運ばれている及川さんの姿が確認できる。
よかった、及川さんは無事だったのか……。
ホッと一息つく。空気が冷えているからか、白い息が出てきた。
「すぐに及川の様子を確認するあたり、ほんと、根っこの部分は揺るがないよな、陽平って」
「……及川さんを任されたのは僕だから、最後まできちんと役目を果たさないといけなかった」
「そしてそれを自分の非にするあたりも、陽平らしいなって」
「…………」
目線こそ合わないものの、きっと彼はどこか真実を見つめるような顔をして次の言葉を繋げた。
「……なんだかんださ、『恋ができない』陽平でも、どうしたって女子にも優しくしちゃうんだよなって」
「それは……優しさってよりも……何か他の言葉で言うべきで……別に僕は優しくなんてないし……」
「『僕は優しくなんてない』っていう台詞はな。優しい奴が言うんだよ」
「……それ、根拠ある?」
「俺の親友」
「……なんだよ、それ」
思わずおかしくて、少し言葉尻が緩む。
恵一は、恵一だけはただ一人、僕が「恋をできないこと」を知っている。隠していたけど、気付かれてしまったんだ。中学生のときに。
「それに、告白の振り方ひとつであんなに悩む人間が優しくないわけがないんだよ」
中学の修学旅行のときに、丸一日かけて断り方を考えていたときに、恵一に気づかれたんだ。
「……とにかく、さ。無事でよかった……」
もう完全に暗闇が支配する空気に、彼の心底安心したような呟きが漏れた。
施設に戻ると、僕と及川さんは養護教諭のために用意されている部屋に連れて行かれた。
「よし、じゃあ先に高崎君の方から診るか」
養護の藤田先生はそう言い、椅子に座った僕の真正面にしゃがみ込む。手慣れた手つきで色々と確認している。
「まあ、大丈夫そうだね。ただ、念のため明日病院に行ったほうがいいかな。あとは体冷やさないようにゆっくりお風呂入ったほうがいいね。よし、高崎君はもういいかな。行っていいよ」
「ありがとうございます……」
「次は及川さんの足か……ねんざかなあ」
後ろ耳に藤田先生の声を聞き、僕はこの部屋を後にした。
外に出ると、廊下に恵一が立って待っていた。
「恵一……」
「とりあえず、陽平と一緒に風呂入ってこい、だってさ」
「……そっか」
「及川は大丈夫そう?」
「うん、ねんざかなって、藤田先生は」
「大事にならなくてよかったな」
「……うん」
「陽平は、明日は……?」
「明日は念のため病院に、だって」
「なら」
「僕は明日で帰ることになる……ね」
他の生徒はもう部屋に戻ってゆっくりとしている時間だからか、僕と恵一が歩く廊下はとても静かだ。
「……茜と絵見には俺から話しておく」
「そうしてくれると、助かる」
淡々と交わされる恵一との会話は、一緒に入った大浴場でもそのペースは変わらず、尽きることのない話の種を使い続けていた。
翌朝、皆より少し早く起きた僕は、羽追先生と一緒にタクシーに乗り病院へと向かった。一足早く、僕の宿泊研修は終わりを告げた。
目が覚めると、誰かの背中におぶられていた。自分の意思とは関係なく景色が流れている。
「気が付いたか? 陽平」
「……えっと……今は……?」
「俺と先生がついたタイミングでもう倒れてたって、及川が。悪い、傘置いていけばよかった。あと、陽平おぶって歩けるってことはあのタイミングで俺及川おぶれた。焦って……判断ミスった。……ごめん」
「……まあ、仕方ないよ。恵一は悪くない」
「火事場の馬鹿力って奴かもしれないけど。担架ひとつしかないし、まさか陽平が倒れてるとは思わなかったし」
「それは……ごめん」
彼の背中の向こうを見ると、担架で運ばれている及川さんの姿が確認できる。
よかった、及川さんは無事だったのか……。
ホッと一息つく。空気が冷えているからか、白い息が出てきた。
「すぐに及川の様子を確認するあたり、ほんと、根っこの部分は揺るがないよな、陽平って」
「……及川さんを任されたのは僕だから、最後まできちんと役目を果たさないといけなかった」
「そしてそれを自分の非にするあたりも、陽平らしいなって」
「…………」
目線こそ合わないものの、きっと彼はどこか真実を見つめるような顔をして次の言葉を繋げた。
「……なんだかんださ、『恋ができない』陽平でも、どうしたって女子にも優しくしちゃうんだよなって」
「それは……優しさってよりも……何か他の言葉で言うべきで……別に僕は優しくなんてないし……」
「『僕は優しくなんてない』っていう台詞はな。優しい奴が言うんだよ」
「……それ、根拠ある?」
「俺の親友」
「……なんだよ、それ」
思わずおかしくて、少し言葉尻が緩む。
恵一は、恵一だけはただ一人、僕が「恋をできないこと」を知っている。隠していたけど、気付かれてしまったんだ。中学生のときに。
「それに、告白の振り方ひとつであんなに悩む人間が優しくないわけがないんだよ」
中学の修学旅行のときに、丸一日かけて断り方を考えていたときに、恵一に気づかれたんだ。
「……とにかく、さ。無事でよかった……」
もう完全に暗闇が支配する空気に、彼の心底安心したような呟きが漏れた。
施設に戻ると、僕と及川さんは養護教諭のために用意されている部屋に連れて行かれた。
「よし、じゃあ先に高崎君の方から診るか」
養護の藤田先生はそう言い、椅子に座った僕の真正面にしゃがみ込む。手慣れた手つきで色々と確認している。
「まあ、大丈夫そうだね。ただ、念のため明日病院に行ったほうがいいかな。あとは体冷やさないようにゆっくりお風呂入ったほうがいいね。よし、高崎君はもういいかな。行っていいよ」
「ありがとうございます……」
「次は及川さんの足か……ねんざかなあ」
後ろ耳に藤田先生の声を聞き、僕はこの部屋を後にした。
外に出ると、廊下に恵一が立って待っていた。
「恵一……」
「とりあえず、陽平と一緒に風呂入ってこい、だってさ」
「……そっか」
「及川は大丈夫そう?」
「うん、ねんざかなって、藤田先生は」
「大事にならなくてよかったな」
「……うん」
「陽平は、明日は……?」
「明日は念のため病院に、だって」
「なら」
「僕は明日で帰ることになる……ね」
他の生徒はもう部屋に戻ってゆっくりとしている時間だからか、僕と恵一が歩く廊下はとても静かだ。
「……茜と絵見には俺から話しておく」
「そうしてくれると、助かる」
淡々と交わされる恵一との会話は、一緒に入った大浴場でもそのペースは変わらず、尽きることのない話の種を使い続けていた。
翌朝、皆より少し早く起きた僕は、羽追先生と一緒にタクシーに乗り病院へと向かった。一足早く、僕の宿泊研修は終わりを告げた。
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