【完結】究極のざまぁのために、俺を捨てた男の息子を育てています!

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第47話 交換条件

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「じゃあ、君は、シャルロット王女に近寄ってくる男を、一人残らず誘惑してたってこと?」

 テーブルの上には、さきほど注文したホットチョコレートが湯気を立てている。

 それには手を付けようとせず、オーバンはムッとした表情でそっぽを向いた。


「悪いかよっ! そもそも、本気でシャルロットが好きなら、俺に誘われたくらいでフラフラついてこないっつーの! つまりは俺は、シャルロットに近づく男を選別してやっているんだ!」

「でも、なんで、君が……、そんなこと……」

 俺の言葉に、オーバンは、話にならない、とばかりに深い溜め息をついた。

「さっきからなんか勘違いしてるみたいだから教えてあげるけどさ、俺、オーバン・ノアイユは、もともとシャルロット殿下の婚約者、なんだよっ! そんなことも知らずに、テオドールと結婚させる、とかなんとか言ってたのかよっ、アンタはっ!」

「こ、婚約者っ!!!!」


 なんてこった。そもそも根本から俺は間違いを犯していたようだ。

 テオドールをシャルロット王女と結婚させるつもりでいたが、こんなに美しい婚約者がすでにいたとは! 俺としたことが、ノーマークだった。

 だがしかし、よく考えれば御年15歳になる王女に婚約者がいないはずはない。そこまで考えが及ばず、テオドールを王女と結婚させようと息巻いていたお姉様と俺。そういえば、お姉様も俺も、昔から考えなしなところがあった。


「シャルロットは見てくれはまあまあだが、中身は変態のクソ女だ! シャルロットの中身も知らずに、見た目だけで寄ってくる男を、幼馴染の俺が追い払ってやっているだけだ! まったく、ありがたく思ってほしいくらいだ!」

 フンっと、オーバンはふんぞり返る。

 そんな姿を見て、俺はすこし可笑しくなった。


「オーバン君は、本当にシャルロット殿下のことが好きなんだね!」

 途端に、ゆでダコみたいに真っ赤になるオーバン。


「はあっ!? はあっ!? はあーーーーっ!!?? ありえないんですけど! アンタ、何言ってんの? 誰が、あんな変態女……っ!」

「でも、シャルロット殿下のことがそんなに好きなら、なんでそんな回りくどいことしてるんだ? 君は、婚約者、なんでしょう? だったら、正々堂々と……」

 オーバンは、悔しそうに唇を曲げた。


「……シャルロットは俺のことなんて、全然好きじゃねーんだよっ!」

「へ!?」

「小さい頃からずっと一緒にいたんだ。俺だって、それくらいのことはわかる。子供の頃は……、それなりに仲が良かったんだ。でも、13歳のときに、シャルロットは読んだ本の影響かなんだか知らないけど、急におかしくなったんだ」

「おかしく……?」

「俺を急に呼び出して『私のことはもういいから、好きな人がいたらその人のところにいっていいのよ。私は応援しているから』とかなんとか、俺には好きな人なんてほかにいないっていうのに……。それから、俺が一人でシャルロットのところを尋ねていくと『セルジュは? なんで一緒にいないの?』ってそればっかり。あのころ、シャルロットはセルジュのことが好きだったんだ。多分……」

「セルジュ君って、この前一緒にいた子だよね」

「ああ、アイツも幼馴染でいつもつるんでいたから、シャルロットもそれで好きになったんだと思う。シャルロットは背が高くて、強い騎士みたいな男がタイプなんだ。俺はチビだし、こんな見てくれだから、シャルロットは俺のことなんて全然目に入ってない!」

 唇をとがらせるオーバンに、俺はキュンとなってしまう。

 好きな王女を思うあまり、王女に近づく男を自ら誘惑して遠ざけようとする幼馴染。なんとも、むず痒く、思わず応援したくなってしまう。



「で、シャルロットの好みを具現化したようなテオドールが学園に入学してきたら、やっぱりシャルロットはテオドールが気に入ったみたいで、俺がテオドールを連れてくるとめちゃくちゃ喜ぶんだ。それで……、俺は、テオドールを……」


 俺は納得した。だから、オーバンはテオドールにつきまとっていたのか。なんだか切ない……。


「でも、オーバン君はそれでいいの? オーバン君の気持ちは、ちゃんとシャルロット王女に伝えたの? もしかしたらシャルロット王女も……」

「ありえないって! アイツは今、テオドールに夢中なんだ」


 ーーシャルロット王女が、テオドールに夢中!!


 だが、これ以上なく嬉しい話のはずなのに、俺の心の中にはなにか灰色のもやもやした霧がかかったみたいになった。




「テオドール。アイツは、すごいやつだよ。アイツだけなんだ、俺が誘惑しても見向きもしなかったのって。だから……、アイツは見込みがあると思う!」

 オーバンは両手を組んでその上に顎を乗せた。


「オーバン君は本当にそれでいいの? だって、君が本当の婚約者だよ」

 俺の言葉に、オーバンは皮肉げに笑った。

「だって、好きな女には誰よりも幸せになってもらいたいだろ。だから、俺、テオドールだったらいいかなって思ってるんだ。テオドールなら、シャルロットを幸せにできるかもって!」

「オーバン君っ!!!!」

 俺はオーバンの手を握りしめていた。


「君はっ、なんて素敵な子なんだ! 誰がなんと言おうと、君は男の中の男だよっ!」

「だからさ、俺が協力してやるよ! ジュール叔父様!」

 オーバンは、俺の手の上に、さらに自分に手を重ねてきた。


「へ!?」

「アンタ言ってたよな。テオドールをシャルロットと結婚させる予定だって。俺も、テオドールが相手なら文句はない。だから、婚約者の俺が一肌脱いでやろうってわけ!」

「オーバン君っ!」

 なんていい子なんだっ!
 いじめの主犯格だと疑った俺が悪かった!!

  
 でも、俺の感動は、オーバンの提案ですべてぶち壊しになる。


「ただ、条件がある」

「……条件!?」


「そりゃそうでしょ。俺がただで婚約者をテオドールにくれてやると思うか? 叔父様、交換条件といこうよ」


 にやりと笑うその顔は、やはり悪巧みが大変得意そうで……、


「交換、条件……」

 またもや嫌な予感……。


「テオドールが無事、シャルロットと結婚したら、アンタは俺と結婚するんだ。いいよね!?」



 ーーいや、全然良くないんですけどっ!!??




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