【完結】究極のざまぁのために、俺を捨てた男の息子を育てています!

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第56話 我が愛しの婚約者

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「呪いの中でも淫紋は、持ち主の感情によって、その性質すら変えるといわれている……」

 ーー全くの初耳だ。


「マリユスが刻んだその淫紋は、まだそのすべての全容を現してはいない。お前のその下腹部に書かれた紋様に込められた呪文は、マリユスが設定したほんの一部分にすぎない。なぜなら、その真の呪文は、お前の心に刻まれているからだ……」

 エリオットは話しながら、俺の全身を手際よく清めていく。

 すでに三回中に出された俺は、疲労困憊で、ベッドの上でエリオットにされるがままだった。

「心に……?」

 エリオットはその見た目から想像できないほどの情熱的なセックスで、俺を翻弄した。これまで苦手な先輩だったはずのエリオットとの熱い情交に、まだ俺の心が追いついていない。


「だからジュール、お前が俺とのセックスで、自分のすべてをさらけ出すことができたその時……、きっとその淫紋の秘密は明らかになる!」

「すべてを、さらけ出す……」


 ーー全く、意味がわからない。

 ぽかんとした表情の俺にシャツを着せかけたエリオットは、俺のおでこにキスを落とした。

「また、三週間後に。今度はもっと早く訪ねてくるといい。いろいろ試さなくてはいけないことがあるからな」

「はい……」

 俺は、さきほどの行為のあとなどもう微塵も感じさせない、すっきりと衣服を整えたエリオットを見上げる。

「先輩、今日のこれで……、少しはなにか、わかったんでしょうか?」

 俺の言葉に、エリオットはにやりと笑った。

「もちろん、かなりの情報を得ることができた。だが、まだ解呪までには程遠い。これからもしっかりと俺の元に通うように」


「……わかりました」


 こうして、俺の淫紋を解呪するための「呪いの研究」という名の、俺とエリオットの関係は始まったのだった。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「やあ、我が愛しの婚約者殿! 結界まで張って、理事長室で一体何をしていたのかな?」


 理事長室を出た途端、

 激しいデジャブに、俺は思わず後ずさった。


「オーバン君っ……」

「嫌だなあ、俺達は将来を誓い合った仲じゃないか。そんな他人行儀な言い方はやめてくれよ。もちろん、俺のことは呼び捨てで構わないよ、ジュール」 


 ーーいや、俺は君と将来を誓い合った覚えなど、まったくない!!


 俺はオーバンの手をむんずと掴むと、人目につかない廊下のはじまで引っ張っていった。


「……ははっ、オーバン君は相変わらず冗談がキツイな。で、なんで今ここにいるの?」

 ひきつった俺の質問に、オーバンは露骨に傷ついた表情になった。


「ひどいよ、ジュール! せっかく相思相愛になったっていうのに、俺からの連絡は全部無視! 明日にでも屋敷に乗り込んでいこうと思っていたところに、さっき学園の裏にダンデス家の馬車が止まっているのを見つけたんだ! もしかしてと思ってここに来たら、やっと愛しい婚約者に会えたってわけだよ!」

 オーバンは俺に近寄ると、俺の手を取った。

「ちょ、ちょっと待って! いろいろっ、いろいろ考えを整理するからっ!」


 俺はやんわりとオーバンの手を振りほどいた。


「まずは、オーバン君からの連絡って何のこと? 俺は、特に覚えがないんだけど」

 俺の言葉に、オーバンはチッと舌打ちした。


「やっぱりテオドールのやつか……。意外に陰湿なところもあるんだな……」

「なに? テオドールがどうかしたの?」


「いや、こっちの話。俺から手紙をジュールに送ったつもりだったんだけど、届いてなかったみたいだね。俺のこと無視してるのかと思って、心配してたんだ!」

 オーバンは小首をかしげる。彼の内面を知らないものにとっては、とても蠱惑的な表情に見えたことだろう。


「そうなんだ。俺、別宅にいるから手紙とかよく届かないって言われるんだよね。でも、もしオーバン君から手紙が届いたら、もちろんちゃんと返事するよ」

「ありがとう、ジュール、愛してるよ!」

 ぎゅっと両手を握られる。


「いやっ、だから、愛してるとかそういうのは……っ」

 手を離そうとブンブンと振るが、相変わらずの強い力で離れない。しかも、さきほどのエリオットとの行為で地味にあちこちがだるくて力が入らない。


 オーバンはそんな俺に構わず、またその美しい顔を近づけてきた。


「学園じゃ、人目が多くて話したいことも話せない。なにしろ、今もずっと監視がついてるんだ」

 こそこそとオーバンは早口で話した。


「えっ? 監視? どういうこと?」

「しっ、振り返らないで! いいか? 証拠を見せてやるよ」

 言うがはやいか、オーバンは俺に抱きつくと、そのまま背伸びして俺の頬に口づけた。


「「「「「ギャーーーーーーーーーー!!!!!!」」」」」


 途端に、あたりから響く絶叫!


「ほら、シャルロットの一味だ。常にどこからともなく俺とその周りを見張ってる。ジュール、最近じゃアンタもその対象にしっかり加わってるから、気をつけたほうがいいよ。なんでも、シャルロットの最推し!とか言ってたからな」

 オーバンは俺に抱きついたまま、耳元で囁いた。


「さい、おし……?」


「あいつら特有の変態の言語だ! とにかく、アンタも監視対象なんだ。あいつらは変態なだけじゃなく、魔力も一流の連中だからどこで何を聞かれるかわかったもんじゃない。今はさっきのキスで全員混乱しているから大丈夫だ。……今のうちに確認しておく、シャルロットとテオドールを結婚をさせるという意思にかわりはないな?」

 意志の強いエメラルドグリーンの瞳が、俺をとらえた。

「も、もちろんだよっ!」

「俺にいいアイデアがある。近いうちに、手紙を出すからちゃんと読んで、言われたとおりに返事を書いて! いいか? 変態女だが、仮にもあの女は一国の王女だ。あらゆるところから邪魔が入る可能性がある。念には念を入れた行動をするんだ! これは国の極秘プロジェクトにも匹敵する計画だ。あと、俺とアンタの婚約のことももちろん内密に!」

「わかってるよ、っていうか、そもそも君と俺は婚約なんか……っ!」

「しっ、またややこしいのが近づいてきた!」

 オーバンが俺の口に人差し指を押し付けた。



「俺の叔父様に軽々しく触れるとは……、いい度胸だな、オーバン!」


「テオ!!」


 またもや、デジャブ(再)。



 振り返ると、剣術部の青い騎士服が今日もまぶしいテオドールが仁王立ちしていた。

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