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第60話 オーバンの計画
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「おいっ、ほら、早く紅茶飲んで」
あわててオーバンが、俺に綺麗なハンカチを手渡してきた。
「あっ、ありがとう……」
紅茶を飲み干すと、なんとか俺は落ち着いた。
「大丈夫か?」
「あの……、今、なんて?」
俺はオーバンの美しいハンカチが汚れないように気を使いつつ、口元をぬぐった。
ーーこれは後で洗って返そう。
「だーかーら! シャルロットとテオドールをキスさせるって言ったんだ!
アイツら、最近二人でこそこそと仲がいいわりに、そういう方面では全然進展してないみたいだからさ、
俺たちがお膳立てしてやろうってわけ。ね、名案だろ?」
オーバンがふんぞり返る。
「へえ、シャルロット殿下とテオって、仲がいいんだ……」
またもや、俺の胸に広がる訳の分からないモヤっとした感情。
「そうだよ。あのテオドールのヤツ、どうやら、変態女たちの言語を正確に理解しているらしい。おれなんかまったく話が通じないってのに、テオドールとならシャルロットはずっと喋ってられるみたいだ。テオドールも、もちろんまんざらじゃないみたいだぜ! 最近じゃ自分から積極的にシャルロットに話しにいってるしな! やっぱりアイツはスゴイヤツだ! 俺が見込んだ男なだけあるな!」
「自分から、積極的に……」
やっぱり、テオドールもシャルロット王女のことが好き、なのだろうか?
俺はあの縦ロールの金髪に、青い目の美少女を思い起こしていた。テオドールが横に立つと、誰もが目を奪われるような、絵にかいたような夢のカップルができあがる……。
まさにそれは、舞台で見た美しい姫君と、美貌の騎士そのもの……!!
だがそんな完璧な二人の想像に、俺の心は墨を落としたみたいに黒く濁っていった。
「もうすぐテオドールの誕生日だろ? ジュール! あんたがテオドールの誕生会を主催して、シャルロットたちみんなを招待するんだ。去年は、テオドールのヤツ、かたくなに俺たちのことを拒んだからな!」
「え、去年って? 去年の誕生日も、オーバン君はテオドールに声をかけてくれたの?」
オーバンはカップを片手に、眉根を寄せた。
確か去年のテオドールの15歳の誕生日は、お姉様と俺とテオドールの3人だけという、なんとも寂しい誕生会だった。
「もちろん、しつこく何度も誘ったよ! 俺のとっておきの可愛い表情で、『テオドールのお誕生日を僕にもお祝いさせて!』ってね。ところが、ヤツときたら『叔父様がお祝いしてくださるので、他の方は結構です』とか、すまし顔で言いやがって、ったく、今思い出しても腹が立つっ! あ、ちなみにシャルロットのとりまきも何人か誘ってたらしいけど、全員撃沈だったな。贈り物すら受け取らなかったらしいし……」
「へえ、そんなことがあったんだ……」
ーーきっと、テオドールはうちの屋敷には、お友達を招きたくなかったのだ。意外に恥ずかしがり屋なのか、それとも……、自分の今の複雑な状況を学園の友人に知られたくなかったのか‥…。
俺はきっと後者なのだと思った。
「テオドールの誕生会で、シャルロットとテオドールを二人きりにして、キスさせるんだ。さすがに、キスくらいすれば、あの二人も当然、そういう意味で意識しだすだろ!」
「でもさ、オーバン君、二人っきりにしたところで、必ずキスするとも限らないんじゃないかな?」
相手はなんと言っても王女様だ。テオドールだって、好意を持っているからと言って強引な手段には出られないだろう。
「それはまあ、俺に考えがあるから大丈夫だ。絶対うまくいくって! だから、ジュール、誕生会のセッティングを頼むよ! テオドールに気づかれる前に、みんなに招待状を出しておいてくれ。これがリストだから」
そう言ってオーバンは、白い封筒を俺に差し出した。
「勝手にお友達を招いたりして、テオドールは嫌がらないかな? それに王女様をうちにお招きするなんて恐れ多いよ!」
「愛しのジュール叔父様からのサプライズプレゼントだって言えば、テオドールだって嫌な顔はできないだろ! あと、シャルロットのことなら心配無用だ。テオドールとあんたが暮らしている場所に行けるなんてチャンス、あいつがみすみす逃すはずはない。招待さえすれば、あとは這ってでも来るから大丈夫だ」
ーーそんなものだろうか?
俺は首をひねる。
半ば押し切られる形で、俺はオーバンにテオドールの誕生会を開くことを約束させられ、その場はお開きとなった。
オーバンは俺のために、食べきれなかったお菓子を包んで持たせてくれた。
ーー意外に気遣いもできるいい子なんだよなあ……。
「オーバン君、このハンカチ、洗って返すからね!」
「水臭いな、持っていてくれて構わないよ、ジュール。じゃあ、また近いうちに逢おう。手紙を出すからね」
チュッと頬にキスをされる。こういうところは、たしかに秘密の婚約者っぽい。いや、全然違うんだけど……。
「うん、またね、オーバン君……」
俺は上機嫌で去っていくオーバンの背中を見送る。
ーーそんなこんなで、テオドールの誕生会開催まであと一ヶ月半!!
あわててオーバンが、俺に綺麗なハンカチを手渡してきた。
「あっ、ありがとう……」
紅茶を飲み干すと、なんとか俺は落ち着いた。
「大丈夫か?」
「あの……、今、なんて?」
俺はオーバンの美しいハンカチが汚れないように気を使いつつ、口元をぬぐった。
ーーこれは後で洗って返そう。
「だーかーら! シャルロットとテオドールをキスさせるって言ったんだ!
アイツら、最近二人でこそこそと仲がいいわりに、そういう方面では全然進展してないみたいだからさ、
俺たちがお膳立てしてやろうってわけ。ね、名案だろ?」
オーバンがふんぞり返る。
「へえ、シャルロット殿下とテオって、仲がいいんだ……」
またもや、俺の胸に広がる訳の分からないモヤっとした感情。
「そうだよ。あのテオドールのヤツ、どうやら、変態女たちの言語を正確に理解しているらしい。おれなんかまったく話が通じないってのに、テオドールとならシャルロットはずっと喋ってられるみたいだ。テオドールも、もちろんまんざらじゃないみたいだぜ! 最近じゃ自分から積極的にシャルロットに話しにいってるしな! やっぱりアイツはスゴイヤツだ! 俺が見込んだ男なだけあるな!」
「自分から、積極的に……」
やっぱり、テオドールもシャルロット王女のことが好き、なのだろうか?
俺はあの縦ロールの金髪に、青い目の美少女を思い起こしていた。テオドールが横に立つと、誰もが目を奪われるような、絵にかいたような夢のカップルができあがる……。
まさにそれは、舞台で見た美しい姫君と、美貌の騎士そのもの……!!
だがそんな完璧な二人の想像に、俺の心は墨を落としたみたいに黒く濁っていった。
「もうすぐテオドールの誕生日だろ? ジュール! あんたがテオドールの誕生会を主催して、シャルロットたちみんなを招待するんだ。去年は、テオドールのヤツ、かたくなに俺たちのことを拒んだからな!」
「え、去年って? 去年の誕生日も、オーバン君はテオドールに声をかけてくれたの?」
オーバンはカップを片手に、眉根を寄せた。
確か去年のテオドールの15歳の誕生日は、お姉様と俺とテオドールの3人だけという、なんとも寂しい誕生会だった。
「もちろん、しつこく何度も誘ったよ! 俺のとっておきの可愛い表情で、『テオドールのお誕生日を僕にもお祝いさせて!』ってね。ところが、ヤツときたら『叔父様がお祝いしてくださるので、他の方は結構です』とか、すまし顔で言いやがって、ったく、今思い出しても腹が立つっ! あ、ちなみにシャルロットのとりまきも何人か誘ってたらしいけど、全員撃沈だったな。贈り物すら受け取らなかったらしいし……」
「へえ、そんなことがあったんだ……」
ーーきっと、テオドールはうちの屋敷には、お友達を招きたくなかったのだ。意外に恥ずかしがり屋なのか、それとも……、自分の今の複雑な状況を学園の友人に知られたくなかったのか‥…。
俺はきっと後者なのだと思った。
「テオドールの誕生会で、シャルロットとテオドールを二人きりにして、キスさせるんだ。さすがに、キスくらいすれば、あの二人も当然、そういう意味で意識しだすだろ!」
「でもさ、オーバン君、二人っきりにしたところで、必ずキスするとも限らないんじゃないかな?」
相手はなんと言っても王女様だ。テオドールだって、好意を持っているからと言って強引な手段には出られないだろう。
「それはまあ、俺に考えがあるから大丈夫だ。絶対うまくいくって! だから、ジュール、誕生会のセッティングを頼むよ! テオドールに気づかれる前に、みんなに招待状を出しておいてくれ。これがリストだから」
そう言ってオーバンは、白い封筒を俺に差し出した。
「勝手にお友達を招いたりして、テオドールは嫌がらないかな? それに王女様をうちにお招きするなんて恐れ多いよ!」
「愛しのジュール叔父様からのサプライズプレゼントだって言えば、テオドールだって嫌な顔はできないだろ! あと、シャルロットのことなら心配無用だ。テオドールとあんたが暮らしている場所に行けるなんてチャンス、あいつがみすみす逃すはずはない。招待さえすれば、あとは這ってでも来るから大丈夫だ」
ーーそんなものだろうか?
俺は首をひねる。
半ば押し切られる形で、俺はオーバンにテオドールの誕生会を開くことを約束させられ、その場はお開きとなった。
オーバンは俺のために、食べきれなかったお菓子を包んで持たせてくれた。
ーー意外に気遣いもできるいい子なんだよなあ……。
「オーバン君、このハンカチ、洗って返すからね!」
「水臭いな、持っていてくれて構わないよ、ジュール。じゃあ、また近いうちに逢おう。手紙を出すからね」
チュッと頬にキスをされる。こういうところは、たしかに秘密の婚約者っぽい。いや、全然違うんだけど……。
「うん、またね、オーバン君……」
俺は上機嫌で去っていくオーバンの背中を見送る。
ーーそんなこんなで、テオドールの誕生会開催まであと一ヶ月半!!
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