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第66話 思わぬ伏兵
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結局お姉様にこってり絞られた俺とテオドール。
そうこうしているうちに招待客が次々と到着したので、とりあえずは許してもらえたが、さきほどから「余計なことはするな!」というお姉様の無言の圧がすごい。
今日この誕生会に招かれたのは、シャルロット王女とその取り巻きのご令嬢3人。そしてオーバンと騎士団長の息子・セルジュだった。
「叔父様、これはいったいどういうことですか?」
あっという間にたくさんのプレゼントに囲まれたテオドールは困惑した表情だ。
「テオドール、これはジュール叔父様と私からのサプライズよ。今日は盛大なパーティにしましょう。学園のお友達に一緒にお祝いしてもらえて、あなたもうれしいでしょう?」
否定を許さないシャンタルお姉様の問いかけに、テオドールは頷くしかなかったようだ。
「はい……。私のために、ありがとうございます。シャンタル様、ジュール叔父様……」
なんかちょっとテオドールの唇が引きつっているような気もするが、そこは見なかったことにしておこう。
そして相変わらず、シャルロット王女とその取り巻きのご令嬢は不可思議な動きをしていた。
令嬢たちもシャルロット王女自身も、なぜかテオドールを遠巻きに眺めるだけで、最初に挨拶を交わした後はテオドールに近づこうとしない。
「こ、ここが、テオドール様とジュール卿の暮らす場所……、ここでお二人は常に愛を……、くっ、息が苦しいですわ」
「うろたえてはいけません。我々は計画を完遂しなければならないのですっ!」
「すべては殿下のご指示通りに……」
「ええ、すべては……」
美しく着飾ったご令嬢たちは、羽の扇子で口元を隠し、なにやら囁き合っている。
俺はすっかりパーティの主役と化してしまったシャンタルお姉様になりかわり、テーブルの配置やら、提供される食べ物の補充などの裏方に回っていた。
――オーバンからテオドールを連れてくるように言われた時刻まで、あと1時間ほど。
「ジュール様、乾杯の準備ができました」
「ありがとう、それじゃ……」
エマに言われて、俺は招待客たちを一か所に集めるために、部屋の中央に向かおうとした……、のだが、
「お兄様っ!!」
後ろから、突然大きな物体が覆いかぶさってきた。
「うわあっ、ぎゃああ、な、なに?」
後ろから抱き着いてきたのは、なんとあのセルジュ・オスマン。
「ジュールお兄様っ!」
「ヒッ!!」
今度は前から力任せに抱き着かれ、俺は息が止まりそうになる。
一体俺が何をしたっ!? セルジュの腕はまるで獲物を絞め殺す大蛇のように巻き付いて、俺から離れようとしない!
「おい、セルジュ、いい加減離れろよ。俺の叔父様が苦しがってるだろ!」
いろいろとツッコミたいところはやまやまだが、とりあえずオーバンが助け舟を出してくれた。
「なんだよ……、俺が精いっぱいの愛情を示してるってのに」
さすがは騎士団長の息子。背も高ければ、力も並外れて強い。ようやく解放された俺は、肩で息をしていた。
「で……、なに、セルジュ君……、俺に何か用?」
俺は目の前に立つ、オレンジ色の髪をうらめしく見上げた。
セルジュは慌てて片膝をついた体勢になると、恭しく俺の手をとった。
「俺……、私はあなたの忠実なしもべです。どうか、これからはジュールお兄様と呼ばせてください」
紅潮した頬で微笑まれ、俺はおおいに混乱する。
「は!? なに? おにい、さま……? なんで??」
「セルジュのやつ、つい今しがたシャンタルさんに一目ぼれしたんだってさ。ったく、セルジュの年上好きにはあきれるよ。
で、さっそく弟のアンタに取り入ろうって魂胆なワケ!」
「ち、ちがうっ、オーバン。俺は純粋にジュールお兄様をっ……!」
「ああ、そういうこと……」
俺はため息をつく。
ちなみに、シャンタルお姉様に恋した男が、弟の俺にとりなしてもらおうとしてすりよってくるということは、学園時代から日常茶飯事。
それにしても、こんな年下まで惹きつけてしまうとは、シャンタルお姉様の魅力はとどまるところをしらないということか……。
「セルジュ君。お姉様は婚約中だよ。君の気持はわかるけど、残念ながら……」
「そう言わずに! お兄様っ、俺はなんでもしますっ! だからシャンタル様と一度だけ、一度だけでいいのでデートの約束をっ!!」
勝気そうな瞳に涙をためてセルジュがすがりついてくる。うーん、罪作りなお姉様め!
「でもね、セルジュ君……」
「ジュールお兄様っ、愛してますっ! どうか俺を見捨てないで!」
セルジュが俺の指先をぐっと握りしめたその時……、
「おい、セルジュ、俺の目の前で叔父様に愛の告白とは、いい度胸だな……」
テオドールの低く響く美声とともに、セルジュの頭の上に乾杯に使うはずだったジュースがぶちまけられた。
「テオ!!」
「ジュールお兄様、とはなんだ? お前はいつの間に、叔父様をそんなに気安く呼べるほど偉くなったんだ?
……俺だってまだそんな風に呼ばせてもらったことがないのに!!」
「きゃああああああ、テオドール様の怒涛の嫉妬キターーーーー!!!!」
「セルジュ様、ファイトですわー!」
「ついにセルジュ様まで虜にするジュール卿の底なしの魅力! 爆発的破壊力ですわっ!!!!」
とたんに騒がしくなる外野。
セルジュはオレンジ色の髪からしたたり落ちるフレッシュジュースを指で払いのけると、ふらりと立ち上がった。
「うるせー、テオドール。俺は本気なんだ。なりふりなんて、構ってられるかっ!」
「なんだとっ!? まさか、お前まで……」
テオドールの顔色が変わる。
「上等じゃねーか、テオドール。今、ここで勝負、つけよーぜ」
テーブルに並べられたジュースの入ったコップを手に取ったセルジュは、にやりと笑った。
「受けて立ってやる!!」
――そして、壮絶なジュース掛け合い合戦がはじまってしまったのだった!!!!
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結局お姉様にこってり絞られた俺とテオドール。
そうこうしているうちに招待客が次々と到着したので、とりあえずは許してもらえたが、さきほどから「余計なことはするな!」というお姉様の無言の圧がすごい。
今日この誕生会に招かれたのは、シャルロット王女とその取り巻きのご令嬢3人。そしてオーバンと騎士団長の息子・セルジュだった。
「叔父様、これはいったいどういうことですか?」
あっという間にたくさんのプレゼントに囲まれたテオドールは困惑した表情だ。
「テオドール、これはジュール叔父様と私からのサプライズよ。今日は盛大なパーティにしましょう。学園のお友達に一緒にお祝いしてもらえて、あなたもうれしいでしょう?」
否定を許さないシャンタルお姉様の問いかけに、テオドールは頷くしかなかったようだ。
「はい……。私のために、ありがとうございます。シャンタル様、ジュール叔父様……」
なんかちょっとテオドールの唇が引きつっているような気もするが、そこは見なかったことにしておこう。
そして相変わらず、シャルロット王女とその取り巻きのご令嬢は不可思議な動きをしていた。
令嬢たちもシャルロット王女自身も、なぜかテオドールを遠巻きに眺めるだけで、最初に挨拶を交わした後はテオドールに近づこうとしない。
「こ、ここが、テオドール様とジュール卿の暮らす場所……、ここでお二人は常に愛を……、くっ、息が苦しいですわ」
「うろたえてはいけません。我々は計画を完遂しなければならないのですっ!」
「すべては殿下のご指示通りに……」
「ええ、すべては……」
美しく着飾ったご令嬢たちは、羽の扇子で口元を隠し、なにやら囁き合っている。
俺はすっかりパーティの主役と化してしまったシャンタルお姉様になりかわり、テーブルの配置やら、提供される食べ物の補充などの裏方に回っていた。
――オーバンからテオドールを連れてくるように言われた時刻まで、あと1時間ほど。
「ジュール様、乾杯の準備ができました」
「ありがとう、それじゃ……」
エマに言われて、俺は招待客たちを一か所に集めるために、部屋の中央に向かおうとした……、のだが、
「お兄様っ!!」
後ろから、突然大きな物体が覆いかぶさってきた。
「うわあっ、ぎゃああ、な、なに?」
後ろから抱き着いてきたのは、なんとあのセルジュ・オスマン。
「ジュールお兄様っ!」
「ヒッ!!」
今度は前から力任せに抱き着かれ、俺は息が止まりそうになる。
一体俺が何をしたっ!? セルジュの腕はまるで獲物を絞め殺す大蛇のように巻き付いて、俺から離れようとしない!
「おい、セルジュ、いい加減離れろよ。俺の叔父様が苦しがってるだろ!」
いろいろとツッコミたいところはやまやまだが、とりあえずオーバンが助け舟を出してくれた。
「なんだよ……、俺が精いっぱいの愛情を示してるってのに」
さすがは騎士団長の息子。背も高ければ、力も並外れて強い。ようやく解放された俺は、肩で息をしていた。
「で……、なに、セルジュ君……、俺に何か用?」
俺は目の前に立つ、オレンジ色の髪をうらめしく見上げた。
セルジュは慌てて片膝をついた体勢になると、恭しく俺の手をとった。
「俺……、私はあなたの忠実なしもべです。どうか、これからはジュールお兄様と呼ばせてください」
紅潮した頬で微笑まれ、俺はおおいに混乱する。
「は!? なに? おにい、さま……? なんで??」
「セルジュのやつ、つい今しがたシャンタルさんに一目ぼれしたんだってさ。ったく、セルジュの年上好きにはあきれるよ。
で、さっそく弟のアンタに取り入ろうって魂胆なワケ!」
「ち、ちがうっ、オーバン。俺は純粋にジュールお兄様をっ……!」
「ああ、そういうこと……」
俺はため息をつく。
ちなみに、シャンタルお姉様に恋した男が、弟の俺にとりなしてもらおうとしてすりよってくるということは、学園時代から日常茶飯事。
それにしても、こんな年下まで惹きつけてしまうとは、シャンタルお姉様の魅力はとどまるところをしらないということか……。
「セルジュ君。お姉様は婚約中だよ。君の気持はわかるけど、残念ながら……」
「そう言わずに! お兄様っ、俺はなんでもしますっ! だからシャンタル様と一度だけ、一度だけでいいのでデートの約束をっ!!」
勝気そうな瞳に涙をためてセルジュがすがりついてくる。うーん、罪作りなお姉様め!
「でもね、セルジュ君……」
「ジュールお兄様っ、愛してますっ! どうか俺を見捨てないで!」
セルジュが俺の指先をぐっと握りしめたその時……、
「おい、セルジュ、俺の目の前で叔父様に愛の告白とは、いい度胸だな……」
テオドールの低く響く美声とともに、セルジュの頭の上に乾杯に使うはずだったジュースがぶちまけられた。
「テオ!!」
「ジュールお兄様、とはなんだ? お前はいつの間に、叔父様をそんなに気安く呼べるほど偉くなったんだ?
……俺だってまだそんな風に呼ばせてもらったことがないのに!!」
「きゃああああああ、テオドール様の怒涛の嫉妬キターーーーー!!!!」
「セルジュ様、ファイトですわー!」
「ついにセルジュ様まで虜にするジュール卿の底なしの魅力! 爆発的破壊力ですわっ!!!!」
とたんに騒がしくなる外野。
セルジュはオレンジ色の髪からしたたり落ちるフレッシュジュースを指で払いのけると、ふらりと立ち上がった。
「うるせー、テオドール。俺は本気なんだ。なりふりなんて、構ってられるかっ!」
「なんだとっ!? まさか、お前まで……」
テオドールの顔色が変わる。
「上等じゃねーか、テオドール。今、ここで勝負、つけよーぜ」
テーブルに並べられたジュースの入ったコップを手に取ったセルジュは、にやりと笑った。
「受けて立ってやる!!」
――そして、壮絶なジュース掛け合い合戦がはじまってしまったのだった!!!!
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