転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第三章

第173話 魔道具完成

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 新たにポチが仲間に加わり三週間が過ぎた。
 その間に二回ほど領主様の屋敷に呼ばれたが、仕事というより家族として呼ばれることの方が多くて何だかくすぐったい。
 カミール家の皆があまりにも普通に接してくれるので、いつの間にか私も打ち解けていた。

 こっそりと瘴気を浄化しつつ冒険者としての生活を満喫していたある日、満面の笑みを浮かべるヒデさんに呼び止められた。

「ユーリさん、出来たよ」

 リビングでキンキンに冷えたコーラを飲んでいた私は、言葉の意味が分からずに首を捻る。
 私の足元で寝転がっていたブロンも、キョトンとした目を向けて首を傾げていた。

「……何が?」

 すると、弾むように駆け寄ってきたヒデさんが、ポケットから何かを取り出すと私に見せて言った。

「じゃ~ん。魔道具が完成したんだ。これでポチとも会話が出来るはずだよ」

 そう言って見せてくれたのは、加工された綺麗な紫色の魔石だった。
 しかし、取り付けるための部品が見当たらない。
 疑問に思った私は、ヒデさんに尋ねた。

「わぁ、綺麗な色……でも、どうやって付けるの?」

「持ち手の部分に埋め込むつもりだよ。でも、先ずは会話が出来るか確認しなきゃ。ちょっと待って」

 ヒデさんはそう言って壁に立て掛けてあるポチに魔道具を当てると、私に振り返って言った。

「ユーリさん、何でもいいからポチに話かけてみて」

 そんなこと言われても急には思いつかないよ。
 腕を組んでポチに視線を向けると、期待に満ちた感情がポチから発していることに気づく。
 私は苦笑を浮かべながらポチに声をかけた。

「ポチ。私の声が聞こえたら返事をしてくれる?」

 すると、ポチが全身をカタカタと震わせて言葉を発した。

『聞こえるよ。わぁ~い!主さまとお話してるぅ~!』

 その洗練された剣から発せられたのは、愛らしい少女の声だった。

「え!?女の子?」

 鈴を転がしたような愛らしい声に驚いていると、複雑な表情を浮かべたヒデさんがポツリと呟いた。

「……普通、剣と言えば男の人を想像するものだけど……明らかに少女の声だね。想像の斜め上の展開で反応に困ってしまうよ……」

 ホント、それな!
 しょうたさんにポチを渡した神様は一体何を考えてそのようなことをしたのか、全くもって理解に苦しむ。
 ……もしかして、神様は少女趣味があるのだろうか?
 私は頭を振って気持ちを切り替える。

「そ、それよりも会話が出来るようになったのは良かったね。魔道具が正常に作動したってことだよね?」

 頬を引きつらせながらヒデさんに尋ねると、ヒデさんも頬をヒクヒクとさせながら答える。

「う、うん。そう、みたい……」

 そう答えてジッとポチを見つめるヒデさんの瞳は、複雑そうに揺らめいていた。







 その後、持ち手の部分に加工された紫色の魔石を嵌め込まれたポチは、それはもう上機嫌にこれまでのことを聞いてもいないのに話してくれた。

『あのね、ショータ主(あるじ)さまは魔物狩りがとっても得意だったの。解体も「うぇ~」て言いながらやってたよ』

 へぇ……。
 解体までしていたんだ。
 私には無理だな。

 ポチが、なぜショータ主さまと呼ぶようになったかと言うと、しょうたさんと私を主さまと呼んだためだ。
 混同しないようにと主さまの前に名前を付けて呼ぶようになったのだが、私としては主さまと呼ばれるのは好きじゃないし出来れば名前で呼んでほしい。
 私はそう伝えたのだが、ポチは頑なに主さまと呼ぶのを止めようとしなかった。
 根負けした私は主さまと呼ぶことを許したのだが、今度はしょうたさんと私が主なので話がこんがらがってしまい、誰が誰の話をしているのか区別をするために主の前に名前をつけたというわけである。

 ややこしいから主さまではなくて名前で呼んでくれてもいいのに。
 胸の内でそう思いつつ、ポチが嬉しそうに語るのを、苦笑を漏らしながら聞いていた。


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