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第一章
第61話 四つの大国について
しおりを挟む男性の話しによると、この国エストロッジ国を起点として、西にアルファイド王国、東にバイスアーデン国、北にフロスト王国があるそうだ。
中でもアルファイド王国は、今から三百年前に建国したそうで、他の国よりその歴史は長く広大な面積を持つという。
国民は穏やかで、肥沃な大地を持つアルファイド王国は、主に農業が盛んなのだとか。
何でも、建国に貢献した英雄が農業に造詣が深かったらしく、その知識を惜しげもなく与えたそうだ。
その英雄って、メイスが以前話してくれた日本人の転生者のことだろうか。
男性は、興奮気味に英雄がどれだけ凄いかを語るうちにどんどんヒートアップしていく。
バシッと女将さんに後頭部を叩かれて我に返った男性は私に一言謝ると、再び語り出した。
アルファイド王国は、亜人の受け入れを積極的に行っており、優秀な人材を貴賤問わず雇用しているそうだ。
男性の話しを聞いているうちに、私もアルファイド王国に興味を持った。
だって、この国で未だ亜人を見たことがなかったから。
ふと、疑問を男性にぶつけた。
「どうしてこの国には亜人がいないのですか?」
ストレート過ぎる質問に、男性は苦笑交じりに答えた。
「……亜人が居ないわけではない。この国には奴隷制度があってだな、強靭な肉体を持つ亜人は奴隷として働かされている。奴隷制度自体が悪いとは思わない。だが、犯罪者でもない者を奴隷にして働かせるのは、俺はおかしいと思う」
奴隷制度……。
この国にはそんな制度があるのか。
男性が言うように、犯罪者ならまだしも、何の罪もない者が奴隷にされて強制的に働かされるのは納得がいかない。
納得はしていないが、地位も権力も持たない私にはどうしようも出来るはずもなく……。
苦虫を嚙み潰したような表情で話す男性に、私も無意識に頷いていた。
「亜人をこの国で見かけなかった理由が分かりました。知らなかったとは言え、不躾な質問をしてしまいすみませんでした」
「いや、あんたがあんまりにもしっかりとしているから知っていて当然だと思っていた。……俺の方こそすまん」
頭を深々と下げた私に、男性の方も申し訳なさそうに眉尻を下げて頭を下げる。
お互い頭を下げたままだったが、空気を読んだ女将さんが私達の間に割って入ると明るく言った。
「ほらほら、二人共、頭を上げて。あんた、お客さんは明日早いのよ。いつまでも頭を下げていないで説明してあげて」
女将さんに先を話すよう促された男性は、恥ずかしそうに頭を搔きながらちらりと女将さんに尋ねた。
「あ、ああ。すまん。そうだったな。え~と、どこまで話したっけ?」
男性に呆れながらも、女将さんは腰に手をあてて答えた。
「もう、あんたったら……。まだアルファイド王国の話ししかしてないでしょう。アルファイド王国の英雄の話しはもう良いから、残りの国の説明をしてあげて」
「ああ……。アルファイド王国の英雄は本当に素晴らしい。平民の出で――」
女将さんに促されて口を開いた男性だったが、またアルファイド王国の英雄の話しが出た所で女将さんが慌てて話しを遮るように大声で言った。
「その話しはもういいから!」
男性は不服そうだが、女将さんが怖いのか顔色を窺いつつも返事をする。
「……わかった」
二人のやり取りがおかしくて笑いを堪えながら見守っていたら、男性はようやく続きを語り始めた。
男性の話しを要約すると、大国と呼ばれているのは全部で四つとのことだ。
ここエストロッジ国と隣国アルファイド王国、東のバイスアーデン国と北のフロスト国。
エストロッジ国は人族至上主義で、奴隷制度が未だ色濃く残る国の一つらしい。
アルファイド王国は先に話した通りだ。
バイスアーデン国は獣人の国で、エストロッジ国とはあまり関係が良くないそうだ。
ただし、それは国と国の関係が良くないだけで、男性曰く、国民は喧嘩っ早い所はあるけど、裏表がなく大らかな人が多いとのことだった。
もふもふ好きな私にとって、バイスアーデン国も行ってみたい国の一つとなった。
一方、フロスト国についてだが、エストロッジ国と国交がないため、全くと言っていいほど情報が入って来ないのだとか。
唯一知っていることと言えば、エルフ族が国を治めているらしいことくらい。
エルフかぁ……。
一度で良いから見てみたいなぁ。
明日からの冒険に胸を膨らませてベッドに潜り込んだ私は、あっという間に眠りに落ちた。
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