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第二章
第68話 エストロッジ国最後の街 サーレーン
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魔物担当となったブロンを先頭に街道を歩いていると、前を歩いていたブロンが振り返って告げた。
『おねえちゃん、ニンゲンの匂いがする』
「人間の匂い?」
私は鼻をヒクヒクとさせて匂いを嗅ぐが、それらしい匂いはしない、というかそもそも人間の匂いなんて分からない。
周囲を見渡しても人の姿は疎か気配すら感じない。
何かトラブルでも起きたのかと身構えるが、私の疑問に答えたのはメイスだった。
『どうやら街が近いようだ。人間の匂いが濃くなってきた』
街が近いの?
良かった。ラノベで付き物の展開になるかと焦ってしまった。
「街かぁ。だったら宿のご主人が言っていた、この国最後の街サーレーンかな?」
『そうだろう。ユーリ、街に入るならそいつをしっかりと監視しておけ。悪目立ちしたくはないだろう?』
メイスに釘を刺されて先頭を歩くブロンを見遣る。
ご機嫌な様子で尻尾をパタパタと振るブロンを眺めていると、とてもあの大きなフェンリルだとは誰も想像出来ないだろう。
今はころころのフォルムの愛らしい子犬の姿をしているが、ブロンは紛れもなくあのフェンリルだ。
私はブロンを呼び止めて念を押しておくことにした。
「ちょっと止まってブロン。話しがあるの」
呼び止められたブロンは足を止めて振り返ると、その場に座って首を傾げた。
『なぁに?おねえちゃん』
「あのね、これから向かう場所なんだけど、人間が住む街なの。だから、街を出るまではその姿で過ごしてもらうことになるのだけど、大人しく出来るかな?」
『うん!ぼく、おとなしくできるよ!』
尻尾をパタパタと振って元気に返事をするブロンが可愛い。
思わずブロンを腕に抱えて頭を撫でる。
「そっかそっか。ブロンはいい子だねぇ」
頬を緩ませてブロンを撫でていたら、メイスがため息を吐きながら会話に割り込んできた。
『ユーリ、冒険者ギルドでそいつの従魔登録をしておくことを忘れるなよ』
あっ、そうだった。
従魔登録をしていないと魔物と間違われて殺されてしまうかもしれない。
ハッとその事を思い出した私は、ブロンを地面に下ろして亜空間から水色の細長い紐を取り出す。
この細長いリボンのような紐はお母様の持ち物の一つで、私のために用意してくれた物だった。
今は男の子の姿で冒険者をしているから、リボンを使用する機会はない。
このまま眠らせておくのは勿体ないと考えた私は、ブロンに付けようと決めた。
水色のリボンをブロンに見せて告げる。
「ブロン。街に入る前にこのリボンを付けてね。そうじゃないと、魔物と間違われて殺されちゃうかもしれないから。このリボンはね、お母様が私のために用意してくれた物なの。ブロンに付けてもらうと嬉しいな」
私の話しを聞いたブロンは、その場でくるくると回って全身で喜びを表す。
『わーい!おねえちゃんのリボン、ぼくつける~!』
喜びを全身で表すブロンが可愛くて口元が緩む。
「ふふ。喜んでもらえて良かった。じゃあ、リボンを付けるからじっとしててね」
そう告げて首にリボンを付けようとして手を止める。
このままリボンを首に付けたら、元の大きさに戻った時首を絞めちゃうんじゃない?
それじゃあ、足首に巻き付ける?
いや、どちらも結果的に絞めることに変わりはない。
「……むむ。このままだと締め付けちゃう。どうしよう……」
『はぁ……。付与魔法があるだろう。もう忘れたのか』
メイスの呆れた声に、私は顔を赤らめて付与魔法をリボンに施す。
すっかり忘れていたとは言え、そこまで呆れなくてもいいじゃん。
恥ずかしさで耳まで赤く染めながら、付与魔法を施したリボンをブロンの足首に巻き付ける。
恥ずかしさを誤魔化すようにブロンの頭を撫でて笑みを浮かべると、パタパタと尻尾を振るブロンを見て口を開いた。
「うん!上出来!ブロン、元の大きさに戻ってもリボンが外れることはないから安心して。これで魔物と間違われなくて済むわ」
お母様の瞳と同じ水色のリボンを、同じ瞳のブロンの足首に巻き付けて満足気に頷く。
何だか不思議な気分だけど、こうして再びブロンに使用してもらえるのは嬉しい。
うんうんと満足気に頷く私に、メイスが不貞腐れたように言う。
『そいつばかり甘やかして俺は放置か。俺にもリボンを付けろ』
「え?でも、メイスは綺麗な耳飾りを付けているじゃない」
『そう言うことじゃない。……はぁ。もう良い』
諦めたようにため息を吐いたメイスはそう零すと口を閉ざした。
お揃いが良かったのかな?
メイスが何を伝えたかったのか分からずに、私はただ首を捻るしかなかった。
『おねえちゃん、ニンゲンの匂いがする』
「人間の匂い?」
私は鼻をヒクヒクとさせて匂いを嗅ぐが、それらしい匂いはしない、というかそもそも人間の匂いなんて分からない。
周囲を見渡しても人の姿は疎か気配すら感じない。
何かトラブルでも起きたのかと身構えるが、私の疑問に答えたのはメイスだった。
『どうやら街が近いようだ。人間の匂いが濃くなってきた』
街が近いの?
良かった。ラノベで付き物の展開になるかと焦ってしまった。
「街かぁ。だったら宿のご主人が言っていた、この国最後の街サーレーンかな?」
『そうだろう。ユーリ、街に入るならそいつをしっかりと監視しておけ。悪目立ちしたくはないだろう?』
メイスに釘を刺されて先頭を歩くブロンを見遣る。
ご機嫌な様子で尻尾をパタパタと振るブロンを眺めていると、とてもあの大きなフェンリルだとは誰も想像出来ないだろう。
今はころころのフォルムの愛らしい子犬の姿をしているが、ブロンは紛れもなくあのフェンリルだ。
私はブロンを呼び止めて念を押しておくことにした。
「ちょっと止まってブロン。話しがあるの」
呼び止められたブロンは足を止めて振り返ると、その場に座って首を傾げた。
『なぁに?おねえちゃん』
「あのね、これから向かう場所なんだけど、人間が住む街なの。だから、街を出るまではその姿で過ごしてもらうことになるのだけど、大人しく出来るかな?」
『うん!ぼく、おとなしくできるよ!』
尻尾をパタパタと振って元気に返事をするブロンが可愛い。
思わずブロンを腕に抱えて頭を撫でる。
「そっかそっか。ブロンはいい子だねぇ」
頬を緩ませてブロンを撫でていたら、メイスがため息を吐きながら会話に割り込んできた。
『ユーリ、冒険者ギルドでそいつの従魔登録をしておくことを忘れるなよ』
あっ、そうだった。
従魔登録をしていないと魔物と間違われて殺されてしまうかもしれない。
ハッとその事を思い出した私は、ブロンを地面に下ろして亜空間から水色の細長い紐を取り出す。
この細長いリボンのような紐はお母様の持ち物の一つで、私のために用意してくれた物だった。
今は男の子の姿で冒険者をしているから、リボンを使用する機会はない。
このまま眠らせておくのは勿体ないと考えた私は、ブロンに付けようと決めた。
水色のリボンをブロンに見せて告げる。
「ブロン。街に入る前にこのリボンを付けてね。そうじゃないと、魔物と間違われて殺されちゃうかもしれないから。このリボンはね、お母様が私のために用意してくれた物なの。ブロンに付けてもらうと嬉しいな」
私の話しを聞いたブロンは、その場でくるくると回って全身で喜びを表す。
『わーい!おねえちゃんのリボン、ぼくつける~!』
喜びを全身で表すブロンが可愛くて口元が緩む。
「ふふ。喜んでもらえて良かった。じゃあ、リボンを付けるからじっとしててね」
そう告げて首にリボンを付けようとして手を止める。
このままリボンを首に付けたら、元の大きさに戻った時首を絞めちゃうんじゃない?
それじゃあ、足首に巻き付ける?
いや、どちらも結果的に絞めることに変わりはない。
「……むむ。このままだと締め付けちゃう。どうしよう……」
『はぁ……。付与魔法があるだろう。もう忘れたのか』
メイスの呆れた声に、私は顔を赤らめて付与魔法をリボンに施す。
すっかり忘れていたとは言え、そこまで呆れなくてもいいじゃん。
恥ずかしさで耳まで赤く染めながら、付与魔法を施したリボンをブロンの足首に巻き付ける。
恥ずかしさを誤魔化すようにブロンの頭を撫でて笑みを浮かべると、パタパタと尻尾を振るブロンを見て口を開いた。
「うん!上出来!ブロン、元の大きさに戻ってもリボンが外れることはないから安心して。これで魔物と間違われなくて済むわ」
お母様の瞳と同じ水色のリボンを、同じ瞳のブロンの足首に巻き付けて満足気に頷く。
何だか不思議な気分だけど、こうして再びブロンに使用してもらえるのは嬉しい。
うんうんと満足気に頷く私に、メイスが不貞腐れたように言う。
『そいつばかり甘やかして俺は放置か。俺にもリボンを付けろ』
「え?でも、メイスは綺麗な耳飾りを付けているじゃない」
『そう言うことじゃない。……はぁ。もう良い』
諦めたようにため息を吐いたメイスはそう零すと口を閉ざした。
お揃いが良かったのかな?
メイスが何を伝えたかったのか分からずに、私はただ首を捻るしかなかった。
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