転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第二章

第95話 アルファイド王国の冒険者ギルド 解体場にて

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 時折すれ違う亜人を横目にしながら大通りを歩いて行くと、アレースさんが教えてくれた冒険者ギルドにたどり着いた。

 三階建ての石造りの冒険者ギルドを初めて目にしたヒデさんが、口をポカンと開けて上を見上げて呟いた。

「ほぇ~。サーレーンの冒険者ギルドより随分と大きいなぁ。さすが王都」

 ヒデさんの呟きに、私もエストロッジ国の王都で似たような気持ちを抱いたなと苦笑を漏らす。

「王都は人が集まるからね。それじゃあ、さっさと買い取りを済ませてくるから、ちょっと待ってて」

「あ、僕もついて行くよ。サーレーンの冒険者ギルドより大きいし、ギルド内がどうなっているのか見てみたい」

 そう目を輝かせて答えたヒデさんに、私は姉のような気持ちで柔らかく目を細めて頷いた。
 以前より顔つきが男らしくなったとはいえ、まだ十代半ばの彼の瞳は好奇心に溢れている。
 私は受付で解体場の場所を尋ねた後、ヒデさんについて来るよう促した。







「わぁ――!広―い!」

 目を輝かせて子供のように歓声をあげてはしゃぐヒデさんを横目に、その声に気がついて振り返った大柄な男性の下へ歩いて行く。
 男性の頭は見事なアフロヘアをしており、その立派な顎髭もアフロだった。
 毛量の多さに目を見開いて足を止める。
 あまりの毛の多さに男性の顔立ちが分からず、表情が読めなかったのだ。
 困惑顔で立ち尽くしていると、中華包丁のように大きな包丁をテーブルに置いた男性が口を開いた。

「……買い取りか?」

 心地良いバリトンヴォイスに一瞬耳を奪われかけたが、私はすぐに返事をする。

「あ、はい。この子が狩ってきた魔物の買い取りをお願いしたいのですが、かまいませんか?」

 腕に抱えたブロンに視線を向けて再び男性を見上げた。
 アフロヘアの男性は私とブロンを交互に見た後、短く答える。

「従魔か。かまわん。そこに出してくれ」

 テーブルを指差して告げられた私は、言われるままにテーブルに魔物を置いていく。
 最初は無表情だった男性の顔が、テーブルに積まれていく大量の魔物を見てその瞳を大きくさせていった。

「ちょ!なんだ!この量は!?」

 男性が驚くのも無理はない。
 テーブルからはみ出すほど積み上げられた大量の魔物は、全てブロンが狩ったものだ。
 大量の魔物の中には、銀級や金級に匹敵するほどの魔物もある。
 鑑定のスキルによると、それらの肉質等級は『A5』らしく、脂肪の入り方や肉の締まりときめなどでランクが決まるようだ。
 頻繫に鑑定のスキルを使用するようになりスキルの熟練度が上がるに従って、今では事細かな情報が簡単に手に入るようになった。
 いやぁ~、鑑定のスキルを持っていて本当に良かった。
 鑑定のスキルがなかったら、極上の魔物肉に気がつかないまま売りに出していたかもしれない。
 当然、それらの肉は解体のみをお願いするつもり。

 極上の魔物肉に涎を垂らしていると、アフロヘアの男性が興奮気味に口を開く。

「おいおいおい。……こいつは討伐難易度の高い魔物じゃねぇか。あっちの魔物もだ。……信じられん」

 目を大きく見開き魔物を凝視していた男性だったが、突然ハッと我に返り私とブロンに視線を向けてきた。
 視線を向けられて、つい後先考えずに大量の魔物を出してしまったことに気づく。
 だけど、出してしまった以上今更引っ込めるわけにはいかない。
 背中を大量の汗が流れる。
 口の端を引きつらせながら、私は無理に笑顔を作って尋ねた。

「えっと……量が多過ぎましたね。あの、この半分でもかまいません。買い取りをお願い出来ますか?」

 そう尋ねられた男性は腕を組んでふんと鼻を鳴らすと、心外だと言わんばかりに答えた。

「俺はここで二十年近く解体をしてきた。魔物の氾濫があった時、大量の魔物を解体したこともある。問題は量じゃねぇ。あんな高額な魔物を扱うのが久しぶりなだけってことだ。……まぁ、そうだな。解体に七日、いや、五日くれ。報酬はその時に渡す。それでかまわないか?」

 アフロヘアの男性が引き受けてくれたことに安堵して、ホッと胸を撫で下ろす。
 特にお金に困っているわけでもないし、ご先祖様が守った王都を見て回るつもりでいたので、私としては時間に余裕が出来たのはありがたい。
 私は、皆に視線を向けて尋ねた。

「解体に五日かかるんだって。その間、王都観光しない?」

「うん!観光したい!」

 真っ先に反応したのはヒデさんだった。
 ブロンもメイスも私の判断に任せると言ってくれた。


 明日からの五日間、王都を満喫しようと胸を弾ませた。
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