転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第二章

第96話 『ダリア』

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 解体場を後にした私達は、受付でお勧めの宿を紹介してもらい宿に向かっていた。
 傍らを歩くヒデさんの顔は、王都観光が楽しみなのか緩みまくっている。
 どうやら立ち直ったみたいで私もひと安心である。
 
 宿に向かっている途中、すれ違うケモ耳をちょくちょく目にしてテンションが上がる。
 エストロッジ国では亜人を見かけることがなかったので、ついふわふわの耳と尻尾に目がいってしまう。
 この国は亜人もそれなりに街を歩いているが、比率で言うと獣人が多いように思う。
 やはり、エルフやドワーフは母国から出る者が少ないのかもしれない。
 そんなことを考えながら歩いていると、ヒデさんの弾んだ声が耳に届いた。

「あっ!あの赤い屋根がそうじゃない?受付のお姉さんが言ってた宿」

 その声に顔を上げて、赤い屋根を指差したヒデさんの指を目で追った。
 臙脂えんじに近い屋根。その下には看板らしき板がぶら下がっている。
 看板には『ダリア』と太字で書かれていた。
 受付のお姉さんが紹介してくれた名前と一致している。

「うん。宿の名前が『ダリア』だって言っていたから多分合っていると思う」

 私が答えると、ヒデさんのテンションがますます上がる。

「王都の宿に泊まるのが初めてだからわくわくしてきた!どんな宿かなぁ」

 白壁と臙脂えんじに近い赤い屋根は二階建ての可愛らしい造りをしており、一見したところ普通の家にしか見えない。
 看板が出ていなければ、そのまま素通りしていただろう。
 私達は、扉を開け宿に足を踏み入れた。

 意外にも中は広々としている。
 出入り口に置かれた木彫りの熊は、この宿には似つかわしいほどリアルな上に厳つくて大きい。
 オーナーの趣味なのだろうか。
 その木彫りの熊を見たヒデさんが小さく叫んだ。

「うわっ!」

 叫び声を聞いた女性が慌てて駆け寄って来る。

「いらっしゃいませ。驚かせてしまったようで申し訳ありません。その木彫りの熊はうちの人が趣味で掘ったものでして……。出入り口に置かないように何度も言ったのですが聞き入れてもらえなくて。……本当にすみません」

 女性は眉尻を下げて何度も謝罪の言葉を口にした。

 うちの人ということは、この女性が宿の女将さんなのかな?
 あの木彫りの熊は旦那さんの手作りなのかぁ。
 宿に泊まるお客さんが見たら腰を抜かしちゃうんじゃない?
 腰を抜かさなくても、ヒデさんみたいに驚く人も結構居そうだけど。
 ……まさか、それが狙いだったりして。
 サプライズ的なことが好きな人なのかもしれない。
 私は嫌いじゃないよ。

 何度も謝罪する女性に向かって、私はニッコリと微笑んだ。

「頭を上げてください。それにしても本物みたいに細工が細かいですね。一瞬本物かとびっくりしちゃいましたよ」

 女性は申し訳なさそうに眉尻を下げると、事情を語り始めた。

「……えぇ。うちの人、昔から手先が器用でして。宿屋を開く前は細工師をしておりました。うちの人ったら、あそこに熊の置き物を置いてお客さんの反応を見て楽しむ悪いクセがあるんです。本当に申し訳ございませんでした」

 やっぱりか。
 会ったことは無いけど、きっとお茶目な旦那さんなのだろう。
 色んな意味でここを紹介してくれた受付のお姉さんには感謝だ。

「ふふ。大丈夫ですよ。面白い旦那さんですね」

「そう言ってもらえると助かります。……ところで、お客さんはお若いのに丁寧な言葉遣いをご存知なのですね。あっ、余計な事でしたね。本日はお泊まりですか?」

 咄嗟に口を手で押さえた女性は、すぐに笑みを浮かべると宿泊の確認をしてきた。
 この世界にも個人情報保護法みたいな法律があるのだろうか。
 それとも、経験上詮索しない方が良いと判断したとか?
 どちらにしても、これ以上詮索されないのは助かる。
 私はニッコリと微笑み返すと、女性の問いかけに答えた。

「はい。五日ほど滞在したいのですが、かまいませんか?従魔が居るんですけど泊まれますか?」

 女性は腕に抱えたブロンと左肩に乗っているメイスに視線を向けると、目を輝かせて口を開いた。

「可愛らしい従魔ですね。ええ、もちろんお泊まりになれますよ。従魔は別料金になりますが、よろしいですか?」

「はい。それでお願いします」



 こうして私達は、無事宿を確保することが出来た。
 ちなみに、部屋割りはメイスと私、ヒデさんとブロンで二部屋に分けた。
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