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第二章
第120話 新たな生活に胸を弾ませて
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さらさらと流れる漆黒の髪と綺麗な琥珀色の瞳はメイスと同じ色をしていた。
しかし、その容貌は恐ろしいほどに整い過ぎており、メイスを思わせる要素は色以外見当たらない。
すらっと伸びた長身の体は、十歳の私が見上げると首が痛くなるほどに高い。
キリアンさんも美形な方だったが、目の前の男性は生来の気品というものが備わっているせいなのか、神々しささえ感じる。
イケメンもここまでくれば極まれり。
形容する言葉が見つからない。
茫然と立ち尽くす私に柔らかく微笑んだ男性は、優雅に片膝をついてしゃがむと目線を合わせて口を開いた。
「改めて挨拶をしよう。俺はメサイアス。出来ればいつも通りメイスと呼んでくれ」
重低音の声は間違えようもない聞き慣れた声だった。
「メ、イス?」
「ああ」
目の前の男性は嬉しそうに笑みを深める。
猫の時は表情が読めずに声色で判断していたが、表情が読めるようになった今はどう反応して良いのか戸惑ってしまう。
イケメン過ぎてこっちが照れちゃうよ。
たぶん、耳まで茹でダコのように真っ赤になっちゃっているんだろうなぁ。
熱くなった顔を見られるのが恥ずかしくて咄嗟に俯く。
視界の端には、私と同じく顔を真っ赤に染めたヒデさんが口をポカンと開けてメイスに見惚れていた。
その空気を破ったのはブロンだった。
『あ、大きいおじちゃん!あそぼう!』
ぶんぶんと尻尾を勢いよく振ったブロンがメイスの胸目掛けて飛び込む。
ブロンを難無く受け止めたメイスは、苦笑を漏らしながら頭を撫でて言った。
「お前は仕方のない奴だ。少しだけ相手をしてやろう。ユーリ、ヒデ、俺はコイツの相手をするから先に休んでてくれ」
それだけ告げると、ブロンを抱えたまま黒煙に包まれてメイスの姿が一瞬にして消えた。
その場に残された私とヒデさんは、メイスが消えた場所を暫し茫然と眺めていた。
それから数分間の沈黙の後、ヒデさんが先に口を開いた。
「……メイスさんが魔王だなんてびっくりしたぁ。猫だから人間の暮らしに疎い部分があるのは仕方ないと思っていたけど、魔族の王様なんて想像もしていなかったよ。でも、あの人間離れした容姿を見せられたら納得するしかないよね」
その意見には私も同意である。
魔王と告げられた時は心底驚いてしまったけど、この数か月メイスと共に旅を続けてきたことで、彼の為人は理解しているつもりだ。
私の中で、魔王=悪という考えが偏見だったのだと気づかされた今、猛烈に反省している。
「そうね。あの美貌は私も初めて見たわ。私の中にあった魔王像が崩れちゃった」
「はは。そうそう、あれだけ魔法に長けて綺麗なのに今までそんな素振りを見せなかったんだから、メイスさん本人が言ったように魔王に拘っていないのだろうね」
笑いながら話すヒデさんの言葉にハッとする。
そう言えばメイス自身、自分は王に据えられただけだとか根無し草だとか言っていたっけ。
それを私は気後れしてしまって距離をとってしまった。
あの時、悲しそうに目を伏せたメイスの表情が忘れられない。
傷つけてしまったかもしれない。
そう思うと申し訳ない気持ちで胸がツキリと痛んだ。
「……さっきはびっくりしちゃったけど、私のあの態度はメイスを傷つけちゃったよね?……どうしたら良いかな?」
今まで行動を共にしてきた仲間からいきなり態度を変えられたとしたら、私なら心の距離を感じて悲しくなるだろう。
だけど、急にいつも通りに振る舞えるのか自信がない。
そんな私の胸の内を察したヒデさんが、顎に手を添えて考える素振りを見せた後、徐に口を開いた。
「う~ん……。メイスさんが言ったように今まで通りで良いんじゃない?変に気を遣われるとかえってギクシャクするだろうし。ただ……あの美貌を前にして普段通りにしろと言われても難しいよねぇ……」
やっぱり結論は普段通りに接するのが無難ってことか。
問題は人間離れしたあの美貌。
普段通りならメイスに猫の姿に戻ってもらうのが一番なんだけど……。
あっ!そうよ!メイスには悪いけど、猫の姿で居てくれるよう頼めば良いじゃない!
その後、遊びに疲れたブロンを抱えて帰って来たメイスに猫の姿で居てもらえないかと頼んでみた。
『なんだ、そんなことか。お前の傍に居られるなら造作もない』
破壊力ある笑顔で応えたメイスは瞬時に黒煙に包まれると、次の瞬間には黒猫に姿を変えていた。
人間離れしたメイスの笑顔は心臓に悪い。
だけど、その姿ならいつも通りに会話を交わしても問題なさそうだ。
ホッと胸を撫で下ろした私は、ヒデさんと顔を見合わせて頷いた。
カミール領に着いてから色々とあったが、ここから新たな生活が始まるのだと思うと楽しみで仕方がない。
これからの暮らしに胸を弾ませて、私はようやく深い眠りについた。
しかし、その容貌は恐ろしいほどに整い過ぎており、メイスを思わせる要素は色以外見当たらない。
すらっと伸びた長身の体は、十歳の私が見上げると首が痛くなるほどに高い。
キリアンさんも美形な方だったが、目の前の男性は生来の気品というものが備わっているせいなのか、神々しささえ感じる。
イケメンもここまでくれば極まれり。
形容する言葉が見つからない。
茫然と立ち尽くす私に柔らかく微笑んだ男性は、優雅に片膝をついてしゃがむと目線を合わせて口を開いた。
「改めて挨拶をしよう。俺はメサイアス。出来ればいつも通りメイスと呼んでくれ」
重低音の声は間違えようもない聞き慣れた声だった。
「メ、イス?」
「ああ」
目の前の男性は嬉しそうに笑みを深める。
猫の時は表情が読めずに声色で判断していたが、表情が読めるようになった今はどう反応して良いのか戸惑ってしまう。
イケメン過ぎてこっちが照れちゃうよ。
たぶん、耳まで茹でダコのように真っ赤になっちゃっているんだろうなぁ。
熱くなった顔を見られるのが恥ずかしくて咄嗟に俯く。
視界の端には、私と同じく顔を真っ赤に染めたヒデさんが口をポカンと開けてメイスに見惚れていた。
その空気を破ったのはブロンだった。
『あ、大きいおじちゃん!あそぼう!』
ぶんぶんと尻尾を勢いよく振ったブロンがメイスの胸目掛けて飛び込む。
ブロンを難無く受け止めたメイスは、苦笑を漏らしながら頭を撫でて言った。
「お前は仕方のない奴だ。少しだけ相手をしてやろう。ユーリ、ヒデ、俺はコイツの相手をするから先に休んでてくれ」
それだけ告げると、ブロンを抱えたまま黒煙に包まれてメイスの姿が一瞬にして消えた。
その場に残された私とヒデさんは、メイスが消えた場所を暫し茫然と眺めていた。
それから数分間の沈黙の後、ヒデさんが先に口を開いた。
「……メイスさんが魔王だなんてびっくりしたぁ。猫だから人間の暮らしに疎い部分があるのは仕方ないと思っていたけど、魔族の王様なんて想像もしていなかったよ。でも、あの人間離れした容姿を見せられたら納得するしかないよね」
その意見には私も同意である。
魔王と告げられた時は心底驚いてしまったけど、この数か月メイスと共に旅を続けてきたことで、彼の為人は理解しているつもりだ。
私の中で、魔王=悪という考えが偏見だったのだと気づかされた今、猛烈に反省している。
「そうね。あの美貌は私も初めて見たわ。私の中にあった魔王像が崩れちゃった」
「はは。そうそう、あれだけ魔法に長けて綺麗なのに今までそんな素振りを見せなかったんだから、メイスさん本人が言ったように魔王に拘っていないのだろうね」
笑いながら話すヒデさんの言葉にハッとする。
そう言えばメイス自身、自分は王に据えられただけだとか根無し草だとか言っていたっけ。
それを私は気後れしてしまって距離をとってしまった。
あの時、悲しそうに目を伏せたメイスの表情が忘れられない。
傷つけてしまったかもしれない。
そう思うと申し訳ない気持ちで胸がツキリと痛んだ。
「……さっきはびっくりしちゃったけど、私のあの態度はメイスを傷つけちゃったよね?……どうしたら良いかな?」
今まで行動を共にしてきた仲間からいきなり態度を変えられたとしたら、私なら心の距離を感じて悲しくなるだろう。
だけど、急にいつも通りに振る舞えるのか自信がない。
そんな私の胸の内を察したヒデさんが、顎に手を添えて考える素振りを見せた後、徐に口を開いた。
「う~ん……。メイスさんが言ったように今まで通りで良いんじゃない?変に気を遣われるとかえってギクシャクするだろうし。ただ……あの美貌を前にして普段通りにしろと言われても難しいよねぇ……」
やっぱり結論は普段通りに接するのが無難ってことか。
問題は人間離れしたあの美貌。
普段通りならメイスに猫の姿に戻ってもらうのが一番なんだけど……。
あっ!そうよ!メイスには悪いけど、猫の姿で居てくれるよう頼めば良いじゃない!
その後、遊びに疲れたブロンを抱えて帰って来たメイスに猫の姿で居てもらえないかと頼んでみた。
『なんだ、そんなことか。お前の傍に居られるなら造作もない』
破壊力ある笑顔で応えたメイスは瞬時に黒煙に包まれると、次の瞬間には黒猫に姿を変えていた。
人間離れしたメイスの笑顔は心臓に悪い。
だけど、その姿ならいつも通りに会話を交わしても問題なさそうだ。
ホッと胸を撫で下ろした私は、ヒデさんと顔を見合わせて頷いた。
カミール領に着いてから色々とあったが、ここから新たな生活が始まるのだと思うと楽しみで仕方がない。
これからの暮らしに胸を弾ませて、私はようやく深い眠りについた。
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