転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第三章

第141話 ポーション一本金貨十枚

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 ルイスさんの部屋に向かった時とは違い、応接室に向かう領主様の足取りはゆったりとしている。

 きっと、ルイスさんの病気が完治したことで安心したのだろう。
 前を歩く領主様の後を追っていると、突然領主様が足を止めた。
 急に足を止められて、領主様の背中に顔面をぶつけてしまった。

「ぶっ!」

「おぉ、すまん。応接室に戻る前に例の物について少し話しをしておきたいと思ってな。執務室に向かおう」

 突然のことに首を傾げながら領主様の後を追う。
 執務室に通されてソファに腰を下ろすなり、領主様が口を開いた。

「改めて息子ルイスの命を救ってくれたこと感謝する。息子のあのような笑顔が見られるとは思ってもみなかった。……心から感謝する」

 そう言うなり腰を曲げて深々と頭を下げる。
 その態度からは領主の威厳は感じられず、純粋に息子さんを想う父親という印象を受けた。
 羨ましいという感情が溢れそうになり口を開く。

「感謝の言葉はもういただきました。どうか頭を上げてください。ところで、例の物についてお話しがあるとのことでしたが……」

 早く本題に入ろうと領主様に先を促す。

「おぉ、そうであった。ユーリ殿から譲ってもらったポーションなのだが、これはとても希少なポーションと言ってよいであろう。詳しい内容は聞かぬが、このような不思議な液体を私は見たことがない。きっと、使用したホーリー草も一本や二本ではないのであろう。魔力器官が未発達の子供たちに必ず使うと約束しよう」

 領主様の心強い言葉に私は笑みを浮かべると、領主様が立ち上がって執務机の引き出しから書類を取り出して目の前にスッと差し出すと語り始めた。

「口約束だけではユーリ殿も不安であろう。そこで誓約を書面にしておこうと思う。ルイスにもあとで署名させておく」

 そう言って見せられた書類には、いくつかの文言が書かれてあった。
 たぶんだけど、こういった事案はよくあることなのだろう。
 私は書類に目を通して問題がないことを確認すると、領主様に返事をした。

「お気遣いありがとうございます。僕は問題ありません」

「そうか。では、こちらに署名してもらえるか?」

 領主様に促されて署名をすると、書類を受け取った領主様が後に続いて自身の名前を記入していく。
 それから、もう一枚新しい書類を目の前に置くと説明をし始めた。

「こちらは例の物、ホーリー草入りのポーションの契約書だ。使用用途やポーションの取り扱い方法など、いくつか事前に話し合っておきたい。構わないだろうか?」

 この紙が契約書?
 グローブフォレスト商会で交わした契約書は魔法紙を用いるとヤマモトさんが言っていたけど、この紙も魔法紙で出来た契約書なのだろうか?
 あの時より上質そうな用紙のせいでちっとも気がつかなかった。
 だとしたら、先に署名した用紙も魔法紙だったのかもしれない。
 今更のことながら、魔法紙なのか鑑定するのが恐ろしい。
 なんだかとんでもないことをした気分になって、途端に居心地が悪くなる。

「……はい、構いません」

「ありがとう。先ず、使用用途についてだが――」

 領主様は書類を手に淡々と話しを進めていく。
 領主様にとってはそれが当たり前なのかもしれないが、未成年のルイスさんが魔法紙のことを理解しているとは思えない。
 
 そう言えば、ルイスさんの年齢を聞いていなかったな。
 受け答えはしっかりとしていたし、言葉遣いも丁寧だった。
 見た目は十代前半の少年に見えたけど、もしかしたらもう少し上なのかもしれない。

 そんなことを悶々と考えているうちに、いつの間にか書類は出来上がっていた。

「まあ、ざっとこんなところだろう。ユーリ殿、目を通してもらえるか?」

 そう言って差し出された書類に目を通す。
 使用用途は主に魔力器官が未発達の子供に使うこと。
 平民であれば無償で分け与え、貴族からは報酬を受け取ることとする。
 その際、誓約書を交わし口外しないと誓わせる。
 ポーションの製作者は秘匿とする。
 ポーションの管理・保管は領主様が行い、無くなれば買い取る等々。

 私としては面倒事に巻き込まれなければそれで十分だ。
 納得して頷いた私に、領主様が笑顔で言った。

「では、契約はこれで完了だ。長々とつき合わせて悪かったね。それで報酬なのだが、ポーション一本につき金貨十枚でどうだろうか?」

 金貨十枚!?
 カントーリの冒険者ギルドで買い取ってもらった金額よりも高額な値段を提示されて、私は開いた口が塞がらなかった。
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