転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

文字の大きさ
144 / 180
第三章

第144話 ヒデさんのスキル

しおりを挟む

 領主様のお屋敷に呼ばれてから二週間が経った。

 あれから時折ルイスさんから手紙が届くようになり、その手紙によるとゆっくりとではあるが屋敷内を歩けるまでに回復したのだとか。
 ずっと部屋に籠ってばかりいたから歩けるだけで嬉しいみたい。
 文面からも、ルイスさんがどれだけ嬉しいのかが伝わってきて笑顔になる。
 もっと体力がつけば外で走り回れるようになる日も近いかもね。

 最初に届いた手紙の筆圧も、弱々しいものからしっかりとしたものに変わっていった。
 その様子から体調が良好なのは見てとれた。
 もう完治したと判断しても大丈夫だろう。
 本当に良かった。

 あ、そうそう。
 これは手紙で知ったのだけど、ルイスさんの年齢は十五歳なんだって。
 十代前半だと思っていたから驚いちゃった。

 裏庭で猫の額ほどの畑で作業をしていると、背後からヒデさんに声をかけられた。

「ユーリさん。ルイスさんから手紙が届いたよ」

「ありがとう」

 作業の手を止めて立ち上がる。
 軍手を外して手紙を受け取り、宛名を確認する。
 達筆な字は、ここ数度に渡る手紙のやり取りで見慣れたルイスさんのものだった。
 十五歳にしてこれだけ綺麗な文字が書けるなんて驚きだ。

「休憩するからヒデさんも一緒にどう?」

「うん、ありがとう」

 眺めの良い場所にテーブルと椅子を亜空間から取り出しながらヒデさんに声をかけると、ヒデさんが嬉しそうに返事をする。
 すると、ヒデさんの足元からブロンが顔を覗かせて、青い瞳をキラキラと輝かせて言った。

『おねえちゃん、ぼくも~』

 この街に来てからというもの別々に行動をすることが多かったため、久しぶりにブロンの毛並みを堪能出来るのはこの上なく嬉しい。

「はいはい。今用意するからちょっと待ってね」

 もふもふしたいのを我慢してお茶を用意していく。
 ついでに領主様から頂いたホージ茶入りのクッキーもテーブルに置き、皆が席に着くのを確認すると口を開いた。

「お待たせ。それじゃあ、いただこうか」

 その言葉を合図に、各々がお茶に口をつける。
 一口お茶を飲んだヒデさんが、ポツリと呟いた。

「ふぅ……お茶って向こうじゃあまり飲まなかったんだけど、このホージ茶は苦味がないからいくらでもいけるよ」

 元の世界には様々な種類の飲み物が豊富にあった。
 ヒデさんくらいの年頃であれば、お茶よりも炭酸飲料の方を好んで飲んでいたに違いない。
 
「そうなんだ。向こうでは何を飲んでたの?」

「コーラとか砂糖たっぷりのコーヒーかな」

 ヒデさんは甘党なのかな?

「コーラかぁ……。そういえば、こっちには炭酸飲料ってあるのかな?あのしゅわしゅわっとした喉ごしが堪らないんだよねぇ」

 こっちの世界にもビールに似た飲み物はあるが、それ以外の飲み物を私は知らない。
 確か、向こうでは炭酸水を手作り出来たはずだけど、クエン酸と重曹が必要だったはず。
 でも、クエン酸は何とかなるとして重曹は?
 ムムッと眉根を寄せて考え込んだ私に、ヒデさんが口を開いた。

「そう言えば、ばあちゃんが重曹とクエン酸で炭酸水を作ってたっけ。あっ!僕のスキルで何とかなるかも」

 ヒデさんの言葉に私は思い出す。
 彼には生産系のスキルがあったことを。

「え?出来るの?」

 期待を込めて見つめると、ヒデさんは自信なさそうに答えた。

「……今すぐには無理だけど……出来そうな気がする。先ず、スキルのレベルを上げないといけないから少し時間がかかるけど……いいかな?」

 そうか。スキルもレベルを上げなければそれ以上の事は出来ないんだっけ。
 私にはそういったスキルが無いから羨ましいよ。

「もちろんだよ!楽しみにしてるね!」

 私に期待を寄せられたヒデさんは「が、頑張るよ」と自信なさげに応えてくれた。

 しかし、その翌日から精力的にあちこちに出掛けるヒデさんの表情は、どこか生き生きと輝いて見えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

魔王と噂されていますが、ただ好きなものに囲まれて生活しているだけです。

ソラリアル
ファンタジー
※本作は改題・改稿をして場所を移動しました。 現在は 『従魔と異世界スローライフのはずが、魔王と噂されていく日々』 として連載中です。2026.1.31 どうして、魔獣と呼ばれる存在は悪者扱いされてしまうんだろう。 あんなに癒しをくれる、優しい子たちなのに。 そんな思いを抱いていた俺は、ある日突然、命を落とした――はずだった。 だけど、目を開けるとそこには女神さまがいて、俺は転生を勧められる。 そして与えられた力は、【嫌われ者とされる子たちを助けられる力】。 異世界で目覚めた俺は、頼りになる魔獣たちに囲まれて穏やかな暮らしを始めた。 畑を耕し、一緒にごはんを食べて、笑い合う日々。 ……なのに、人々の噂はこうだ。 「森に魔王がいる」 「強大な魔物を従えている」 「街を襲う準備をしている」 ――なんでそうなるの? 俺はただ、みんなと平和に暮らしたいだけなのに。 これは、嫌われ者と呼ばれるもふもふな魔獣たちと過ごす、 のんびり?ドタバタ?異世界スローライフの物語。 ■小説家になろう、カクヨムでも同時連載中です■

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

処理中です...