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第三章
第145話 それってチートだよね?
しおりを挟むあれから更に二週間が経過したある日のこと。
先に家に帰っていた私が一階のダイニングでメイスとお茶を飲んでいたところ、バタンと勢いよく扉を開けて頬を上気させたヒデさんが息を整える間もなく満面の笑みで言い放った。
「出来た!ユーリさん、出来たよ!」
何が出来たのか分からずに首を傾げていると、ヒデさんがウエストポーチから一本の瓶を取り出してテーブルに置いた。
……黒っぽい色をしているけど、それは飲めるものなの?
あと、この瓶の形、どこかで見たような……。
疑問が顔に出ていたのか、次の瞬間ヒデさんは興奮気味に告げた。
「コーラだよ。コーラが出来たんだ」
「っ!コーラ!?」
すっかり忘れていた私は、立ち上がった瞬間勢いあまって椅子を倒してしまう。
椅子を倒したことすら気がつかないまま、テーブルに置かれた瓶を凝視する。
私の意思とは関係無しに発動した鑑定のスキルによると、はっきりとコーラと表示されていた。
「コーラだぁ――!」
瓶を持って喜ぶ私に、ヒデさんは満面の笑みを浮かべて口を開いた。
「味見はしたから安心して。ただし、冷えていないから喉ごしの方はいまいちかもしれないけど……」
なるほど。どうりで生温いはずだ。
ビールもそうだけど、コーラもキンキンに冷やした方が美味しいもんね。
「それなら大丈夫。冷やせばいいんでしょ?……これくらいでいいかな?」
全属性持ちの私なら冷やすことくらい朝飯前だ。
瓶を持ったまま全体を冷やしていく。
ひんやりとしてきたところで流していた魔力を止めて、蓋を開けて一口飲む。
あっ、この味はペ〇シじゃない方だ。
飲み慣れた味だからこそ、これがコーラだとすぐに理解した。
「っ!んんっ!このしゅわしゅわ感、懐かしい!コーラだぁ!美味しい!」
私の言葉を聞いてホッと安堵の表情を浮かべたヒデさんは、何やらもじもじと所在無さげに指を動かして私に視線を向けた。
「ホント?良かったぁ。僕、土と風属性しか持ってないから冷やしたくても出来なくて……。あの、ユーリさん。僕も冷えたコーラが飲みたいから、よかったらこれも冷やしてもらえるかな?」
遠慮がちにテーブルに瓶を置いてお願いされた私は、一も二もなく頷いた。
「もちろん。キンキンに冷えたコーラが美味しいに決まってるもん。まっかせて!」
そう言うなり瓶に触れて冷やす。
そこへ、私達のやり取りを眺めていたブロンが前足を私の足にかけておねだりしてきた。
『ぼくも!ぼくもコーラ飲みたい!』
ブロンに呼応するようにメイスも加わってきた。
『俺もそのコーラとやらが飲みたい。黒い見た目は気になるが、何やら甘い匂いがして興味をそそられる』
ブロンもメイスもコーラが気になって仕方がない様子。
「ふふ。飲み慣れないと驚くかもしれないからゆっくり飲んでね。味の好みもあるだろうし最初は少しだけにしておくから、お代わりが欲しかったら言って」
私は二人にそう告げると、亜空間から皿を取り出してコーラを少し注いだ。
二人は皿に鼻を近づけて匂いを確認したあと、何の躊躇いもなくコーラを飲むと目を大きく見開いた。
『っ!むっ!?なんだ、この得も言われぬ喉ごしは!このような感覚は初めてだ!もっとくれ!』
『しゅわしゅわ~。あまくておいしい!もっとちょうだい!』
どうやらお気に召したようだ。
二人はコーラを飲み干してお代わりを催促してきた。
私はあげて良いものかとヒデさんに視線を向けると、ヒデさんはその視線の意味を察して笑顔で告げた。
「心配しなくても大丈夫だよ。材料さえあればいつでも作れるから。それに一度作れたものに関してはメモしなくても絶対に忘れることがないみたい。あとね、ガラス瓶も錬成出来たんだ。今は多く錬成出来ないけど、いつかそれを元に商売を始めたいなって」
そう語るヒデさんの表情は生き生きと輝いている。
この世界で生きる目的が見つかって良かった。
それにしても、コーラだけでなくガラス瓶を錬成なんて凄いな。
ヒデさんにそんな凄い才能があったなんて驚いたよ。
それってチートだよね?
嬉しそうに満面の笑みを浮かべるヒデさんを見て、私は内心その凄さに圧倒されていた。
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