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第三章
第146話 冷蔵庫造り
しおりを挟む日照時間は短くなり、昼間でも肌寒く感じるようになってきた。
時折、ルイスさんの手紙と共に領主様から近況報告が届く。
やはり、この街以外にも魔力器官が未発達で、ずっと病状が分からずに床に臥せっている子供が居たようだ。
これで、少しでも同じ病で苦しんでいる子供が減ってくれるのなら私も嬉しい。
ルイスさんはというと、最近では体を鍛えるために剣術を習っているとのことだ。
体を思いっきり動かせるのが嬉しいらしく、毎日が充実して楽しいと書いてあった。
それは何よりだ。
さて、今日はヒデさんと一緒に冷蔵庫造りに挑戦だ。
ヒデさんが言うには、台所があまりにも殺風景過ぎて物足りないらしい。
確かにそうなんだけど、そんな簡単に造れるものなの?
そう尋ねると、ヒデさんはニッコリと笑って答えた。
「スキルがあるから大丈夫。材料さえ揃えば造れる気がするんだ」
なんとも心強い言葉に、私の好奇心に火がついた。
「ホント?だったら私も手伝う!で?何が必要なの?」
私の勢いに押されたのか、ヒデさんの上半身が仰け反る。
「あ~……うん。材料はいくつか見繕ってあるんだ。だけど、肝心の魔石が見つからなくって……」
「魔石?冷蔵庫用なら水属性の魔石ってこと?氷属性なんて聞かないもんね」
そう。この世界には八つの属性があるのだが、そこに氷の属性は入っていない。
たぶんだけど、水属性に一括りにしてあるのだと思う。
事細かに細分化するより、似た性質で纏めておいた方が理解し易いと考えたのか、はたまたただ面倒くさかったのかは知らないけど。
そこへメイスが問いかけてきた。
『レーゾーコとは何だ?』
「冷蔵庫だよ。えぇっとねぇ、食べ物や飲み物を冷やして保管する入れ物って言えば分かるかな?例えばコーラをこのまま亜空間に収納しても生温いままだよね?だけど、こうして冷やして収納しておけば、いつでも冷たいコーラが飲めるでしょう?冷蔵庫があれば、誰でもいつでも冷たいコーラが飲めるってわけ。便利でしょ」
正確に伝わったのか分からないが、その話しを聞いたメイスが興味を示したように琥珀色の瞳を細めた。
『ほぉ……。そんな便利なものがあるとは興味深い。そう言えば、氷属性の魔石が必要だと言っていたな』
そう呟いたメイスは、亜空間からクリスタルのような大きな石の塊を取り出して宙に浮かせると言った。
『これを使え。これは氷竜の魔石だ』
メイスの何気ない一言に、私とヒデさんの声が重なる。
「 「えぇっ!?氷竜!?」 」
氷竜ってことはドラゴンだよね?
ドラゴンは下位の竜種でもかなり強力な魔物だと聞いている。
氷竜というくらいだから、それなりに強いはず。
それを惜しげもなく使えと差し出されても、簡単に受け取って良いものか躊躇ってしまう。
「……氷竜ってそれなりに強い魔物なんじゃないの?私たちが冷蔵庫に使って大丈夫?」
私がそう尋ねると、メイスは何だそんなことかと言って語り始めた。
『問題ない。あいつらは増え過ぎると土地を凍らせてしまって厄介なんだ。だから、時折間引く必要があってな。肉は美味いがそれ以外は使いどころがなくて持て余していたんだ。こんなものでも役に立つのならいくらでも使ってくれ』
いくらでもって……。
どれだけ間引いてきたのか聞かないでおこう。
遠い目をしていると、ヒデさんの興奮に満ちた声が聞こえた。
「メイスさん!いくらでもってことは魔石だけじゃなくて氷竜の遺体もあるんですか?」
『ああ、あるぞ。必要なら出すが……見るか?』
「はい!」
ここでは出せないということで裏庭に移動した私達は、解体済みの氷竜を目の当たりにして言葉を失ってしまった。
「でかっ!解体してこのサイズとかドラゴンって凄いな!」
キラキラと目を輝かせて興奮気味に叫んだのはヒデさん。
それから氷竜の周りを一周して満足そうに頷くと口を開いた。
「この鱗は寒さに強そうだから冷蔵庫の材料として使えそう!メイスさん!こんな素晴らしい素材は中々無いですよ!ありがとうございます!」
『なに、長いこと亜空間に収納したままで使いどころがなかったものだ。まだまだ沢山あるから遠慮なく言ってくれ』
沢山あるのかぁ……。
忘れていたけど、メイスは魔族の王様だ。
氷竜くらい倒すのは容易いのだろう。
目を輝かせて色々とメイスに質問をするヒデさんを眺めながら、やはりメイスは凄いのだなと改めて感心させられたのであった。
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