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第5話 商人アルベルトさん
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試食が始まり、皆で意見を出し合うことになった。
「俺はこのカモミールが気に入った。あと、オレガノ?もいいな」
父は皿の下の紙に書いてある文字を読みながらニコニコと話し、空になったカップに視線を落とす。
ん?ハーブティーのお替りですか?私は黙ってカップに注ぐ。
「私はオレガノ、カモミール、ローズマリー、レモングラスが美味しかったわ」
母よ、それは全部だよね。
気に入っていただけたようで良かった。
「僕は全部美味しかった!」
口の周りに、クッキーの食べかすをつけたまま笑顔で話すマーカスくんに、私も釣られて笑顔になる。
食べかすに気づいた母が、ハンカチでそっと拭う。
マーカスくんもお替りかな、サッとハーブティーをカップに注いだ。
結論を言うと、全て商品化することに決まった。
ドライハーブティーも好評だったので、こちらも商品化決定。
販売は父の伝手を頼るそうだ。
お祖父さまの父の代から懇意にしているそうで、信用が厚いとのことだ。
二日後、その人が屋敷に一人の若い男性を伴いやって来た。
初老の男性は商会長のアルベルトさんといい、国内だけでなく、他国でも名を馳せているやり手の商人らしい。
代々商いを営んでいたが、アルベルトさんの代で大きく成長させたという。
仕事の出来る男といった風情を醸し出している。
父からの情報によると、王族や高位貴族とも付き合いがあると言う。
これは何としてでも、アルベルトさんと懇意になりたいものだ。
「ハーベスト伯爵様、お久しぶりでございます。こちらは孫のライルと申します。本日はお招き頂きありがとうございます」
柔らかい物腰で挨拶をし、隣に控えている若い男性を紹介した。
若い男性は孫のライルさんで、青年というよりまだ少年といった感じか。
おっとりとした優し気な顔立ちは、アルベルトさんに全然似ていない。
一応、貴族家ということもあり、緊張した面持ちでぎこちなく佇んでいる。
商会長のアルベルトさんは五十代と聞いていたのだが、年のわりに体格が良く若々しさを感じる。
眼光は途轍もなく鋭く、商人というより暗殺者のような怖さがあり、私は内心ビビりまくった。
「久しいな、アルベルト。無理を言って申し訳ない。ライルくんも久しぶり、大きくなったな。この子は私の娘のミリアーナだ」
「お忙しい中、お越し頂きありがとうございます。私はミリアーナ・ハーベストと申します。父共々今後とも末永い付き合いになるようお願い申し上げます」
父に紹介された私は、ここぞとばかりに丁寧に挨拶をした。
「 「 「……」 」 」
父、アルベルトさん、ライルさんが驚愕の眼差しで私を見つめている。
(あれ?私、何かおかしな事言った?)
「…伯爵様のお嬢様はとても利発でいらっしゃる。確かまだ八歳だとお伺いしておりましたが…」
(ああ!そっち!?もっと子供らしくすれば良かった!)
「…あ、ああ。そうだな。…それよりいつまでもここで立ち話しも辛いだろう。応接室に案内しよう」
父はアルベルトさんの問いには答えず、応接室へ向かうよう促した。
お父さま、ありがとう!
「俺はこのカモミールが気に入った。あと、オレガノ?もいいな」
父は皿の下の紙に書いてある文字を読みながらニコニコと話し、空になったカップに視線を落とす。
ん?ハーブティーのお替りですか?私は黙ってカップに注ぐ。
「私はオレガノ、カモミール、ローズマリー、レモングラスが美味しかったわ」
母よ、それは全部だよね。
気に入っていただけたようで良かった。
「僕は全部美味しかった!」
口の周りに、クッキーの食べかすをつけたまま笑顔で話すマーカスくんに、私も釣られて笑顔になる。
食べかすに気づいた母が、ハンカチでそっと拭う。
マーカスくんもお替りかな、サッとハーブティーをカップに注いだ。
結論を言うと、全て商品化することに決まった。
ドライハーブティーも好評だったので、こちらも商品化決定。
販売は父の伝手を頼るそうだ。
お祖父さまの父の代から懇意にしているそうで、信用が厚いとのことだ。
二日後、その人が屋敷に一人の若い男性を伴いやって来た。
初老の男性は商会長のアルベルトさんといい、国内だけでなく、他国でも名を馳せているやり手の商人らしい。
代々商いを営んでいたが、アルベルトさんの代で大きく成長させたという。
仕事の出来る男といった風情を醸し出している。
父からの情報によると、王族や高位貴族とも付き合いがあると言う。
これは何としてでも、アルベルトさんと懇意になりたいものだ。
「ハーベスト伯爵様、お久しぶりでございます。こちらは孫のライルと申します。本日はお招き頂きありがとうございます」
柔らかい物腰で挨拶をし、隣に控えている若い男性を紹介した。
若い男性は孫のライルさんで、青年というよりまだ少年といった感じか。
おっとりとした優し気な顔立ちは、アルベルトさんに全然似ていない。
一応、貴族家ということもあり、緊張した面持ちでぎこちなく佇んでいる。
商会長のアルベルトさんは五十代と聞いていたのだが、年のわりに体格が良く若々しさを感じる。
眼光は途轍もなく鋭く、商人というより暗殺者のような怖さがあり、私は内心ビビりまくった。
「久しいな、アルベルト。無理を言って申し訳ない。ライルくんも久しぶり、大きくなったな。この子は私の娘のミリアーナだ」
「お忙しい中、お越し頂きありがとうございます。私はミリアーナ・ハーベストと申します。父共々今後とも末永い付き合いになるようお願い申し上げます」
父に紹介された私は、ここぞとばかりに丁寧に挨拶をした。
「 「 「……」 」 」
父、アルベルトさん、ライルさんが驚愕の眼差しで私を見つめている。
(あれ?私、何かおかしな事言った?)
「…伯爵様のお嬢様はとても利発でいらっしゃる。確かまだ八歳だとお伺いしておりましたが…」
(ああ!そっち!?もっと子供らしくすれば良かった!)
「…あ、ああ。そうだな。…それよりいつまでもここで立ち話しも辛いだろう。応接室に案内しよう」
父はアルベルトさんの問いには答えず、応接室へ向かうよう促した。
お父さま、ありがとう!
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