【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚

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第38話 石灰石が欲しい

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 粉薬の開発に取り掛かった私は、一番大事な事をきれいさっぱり忘れていた。

 それは予防をするということ。

 風邪の初期症状であれば、粉薬で症状を緩和出来るかもしれないが、重篤になれば薬の効果は望めない。
 この世界は生活魔法である程度は清潔に保てても、手洗いやうがいをこまめにする習慣はない。
 当時の私が軽くカルチャーショックを受けたのは言うまでもない。

 まだ八歳だった私は、食事の前や土いじりをした後、必ず生活魔法で清潔にしていた。
 不思議な顔で私の行動を見ていた両親に、衛生面について説明をすると、両親も弟も真似をするようになった。
 おかげで、家族は病気一つ掛かることなく健康そのもの。
 そんな経緯があったにも関わらず、予防について今の今まですっかり忘れていた。

「…石けん、作った方がいいかな。生活魔法が使えない人だっているだろうし、従来の石けんは泡立ちが良くなかったし、香りも良くなかったもんね。材料になる雑草は沢山あるけど……問題は石灰石か」

 一人で悶々と悩んでいても何も解決しない。
 私は早速父に相談するため、執務室に向かった。




 執務室に着いた私は、ドアをノックして告げる。

「お父さま。ミリアーナです。入ってもよろしいでしょうか」

「入りなさい」

 扉の向こうから入室の許可が下りて、室内に入る。

「ミリー。どうした?」

 書類の手を止めて優しい眼差しを向ける父に、私は一瞬躊躇してしまった。
 机の上には書類が山のように積み上がっているのを見たから。

「……お仕事お疲れ様です。…相談したいことがありまして…」

 書類の山をチラチラ見ながら、父の顔色を窺う。

「相談?分かった。聞こう。ウィリアム。茶を頼む」

「かしこまりました」

 ウィリアムが退室すると、ソファに移動して改めて問いかける。

「それで、ミリー。相談とは?」

「……石けんを作りたいのですが、材料に石灰石が必要でして…」

 相談というよりお願いになってしまって、言いづらい。

「石灰石…?ふむ。アルベルトなら詳しいかもしれないな。…それにしても、石けんか。ミリーはなぜ、石けんを作りたいんだ?石けんなら既にあるだろう?」

 確かにこの世界にも石けんはあるのだが、泡立ちは良くないし、香りも良くない。
 私は石けんを改良したいと考えていた。

「そうなのですが…。従来品に改良を加えたいと考えています」

「……改良?」

「はい。従来品は泡立ちも香りも良くありません。ですので、もっと良くしたいのです。それにハーブを使ってこの領地ならではの石けんを商品にすれば、需要はあるかと。価格は抑えて販売してほしいです。石けんを販売する目的は、病気の予防のためですから」

「…それは、ミリーが言っていた衛生面のことか?…確かにこまめに手を清潔にし出して、病気らしい病気はしていないな…。分かった。石灰石だったな。用意しておこう」

「ありがとうございます!」



 ウィリアムがお茶を運んで来た時には、相談という名のお願いは終わりを迎え二人は談笑を交わしていた。
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