うたた寝日和

佐野川ゆず

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大瀬仁菜子

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頭が重い。あれから何とか見れる程には寝癖を直せたけれども顔はどう頑張っても直す事なんて出来ない。まあ、もともとそんなに人に自慢出来るような顔では無いので、こればかりはどうしようも無い所だ……。あ、何だか自分で言っていて空しくなって来た……。
そんな事を思いながら洗面所で目の下に出来たクマを何とかならないかなぁ、と必死で隠してみる。けれどもやはり無理なようだ。目の下のクマどころか、瞼だって腫れぼったい。ほんとーに学校に行くの憂鬱だな……。そんな事を思いながら私は洗面所を後にした。

予鈴が鳴るギリギリの時間に学校の昇降口で上履きへと履き替えていると、朝練が終わった涼ちゃんに偶然出くわした。彼は私をちらりと横目で見ると、そのまま何事もなかったように私の横を通り過ぎた。

「涼ちゃん!」

思わず涼ちゃんの事を呼び止めてしまう。すると彼は面倒そうに立ち止まると、私を見た。

「何?」
「えっと、昨日は迷惑かけてごめんね」
「迷惑ならずっと掛けられ続けているから大丈夫」

それだけ言うと彼はまた歩みを進めた。怒っているのかな?凄く機嫌が悪い気がする。そんな事を思いながら私も涼ちゃんの後に続いて階段を昇る。

「ねえ、仁菜子こそ大丈夫なの?」
「何が?」
「酷い顔してる」

彼の後を小走りで付いて行っていると、そんな事を言われるから、やっぱり凄く酷い顔をしているんだって思った。でも、今更どうする事も出来ない。大丈夫じゃないけれど、どうしようもない。

「大丈夫」
「そう、ならいいけど」

階段を昇りきり、一年生の教室が入っているフロアまで着くと、涼ちゃんは「じゃあね」と言いながら4組の教室まで歩いて行った。そんな彼の後ろ姿を見つめている時だった。背後から女の人の声が聞こえる。

「大瀬さん。チャイム鳴るよ」
「あ、瀬野川先生!」
「早く教室入んなきゃ」
「はい!」

瀬野川先生の言葉で遅刻ぎりぎりだった事を思い出し、急いで教室内へと走り込んだ。

瀬野川奏先生。今年の春から私の通う北川高等学校に新任の先生として赴任して来た。優しくて、可愛くて、男子だけではなく女子からの人気も高い。本当に近所の優しいお姉さんという感じが人気があるという理由。私も類に漏れず、瀬野川先生の事が好きだ。

「……と、いう事で、圭日は大事なお話しがあります……」

担任の先生の言う内容をぼーっとした頭で聞きながら先日見かけた圭ちゃんの彼女の事を思い出した。背は私とあまり変わらないくらいで、そうそう、髪型とかは瀬野川先生くらいで……。と、そこで私の頭の中にぼわーっと浮かんで来たその姿を、教室の隅に立っている瀬野川先生へと向けてみる。

似てる。圭ちゃんと一緒に歩いていた人に凄く似ているのだ。まさか先生が圭ちゃんの彼女……なんて事は無いよね?急に胸の真ん中辺りに浮かんだ嫌な予感を拭うように頭を一回横に振ると、改めて瀬野川先生を見る。

やっぱり似ている気がする。そういえば先生は圭ちゃんと同じ歳で、しかもこの北川高校の卒業生だという話を聞いた。まさか……ね。

もう一度頭を振ると、担任の先生の言葉に集中するかのように前を向いた。
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