11 / 15
小坂圭
しおりを挟む
仁菜子と涼が去っていった玄関前で俺と奏は暫く無言のまま立ち尽くしていた。いきなりの事過ぎて頭が付いて行かなかった。けれども、少し時間が立つと、頭の中がはっきりとして来る。そして、奏が俺の顔を見ながら小さく、そして申し訳なさそうに問いかけた。
「圭くん。大瀬さんの気持ち……知ってたの?」
俺は何も言わなかった。そうだ、知っていたのだ。仁菜子が小さな頃からずっと俺に向けていた感情を。そして、それは、涼に向けられているものと違う事を。けれども、まだ仁菜子は小さい。世間を知らない。言うならば生まれて始めて見たものを親と思いこんでしまう雛鳥のような感覚で俺の事を好きだと思っているのではないかと思っていた。
彼女はこれから広い世界を知って、いろんな出会いを経験する。その中で自分が本当に一緒に居たいと思う奴に出会うだろう。そうであって欲しい。俺の事なんていつの日かそんな事もあったな……と、思い出となって欲しい。
そして、弟の涼の事を思った。涼は小さな頃から仁菜子の事が好きだ。またこいつも小さな閉鎖された世界の中で好きだとかそんな事を言って……、本当に幼なじみっていうものは少しだけやっかいだ。
「圭くん。大瀬さんに何か言ってあげたの?」
「ううん。言ってない。その前に仁菜子にそう言った事を言われた事も無い」
「そうなんだ……」
「あと、涼はずっと仁菜子の事が好きだから」
「ああ、それはずっと思ってた。だから余計に私の事が嫌いのかな……って」
奏が遠くを見ながらそう呟いた。奏はやっぱり涼の事を良く見ていると思う。まだ数回しか会った事のない弟の事を見抜いてしまうなんて。涼はなかなかやっかいな性格をしているから、それを見抜くのはかなりの難易度だと思うのだけれども。
「大瀬さん。大丈夫かな?」
「多分。涼が居るし……。しかも、俺が行っても何も出来ないよ」
「そうかな?」
「うん。俺は仁菜子をきっと傷つける事しか言ってやれない。誰よりも可愛くて大切な妹の事、傷つけたくない」
そう言いながら笑うと、奏が俺を見て言った。少しだけ淋しそうに。
「圭くんも、大瀬さんの事、大好きだよね。ちょっと妬ける」
「そう見える?でも、俺は奏が一番好きだよ」
「そんなにはっきり言われるとちょっと恥ずかしいのだけれど……」
「あ、俺もさっき言ってて恥ずかしかった」
俺と奏はそう言いながら笑うと、二人が消えて行った住宅街の街灯を見た。きらきらと輝いていて幻想的なそれはまるで今起こった出来事を夢のように感じさせた。
「どうする?これから?」
「ああ、とりあえず、やっぱり二人、探しに行こうか?」
「うん。心配だし……」
俺は一度家に入り、簡単に事情を説圭すると、涼と仁菜子の後を奏と一緒に追って行った。
「圭くん。大瀬さんの気持ち……知ってたの?」
俺は何も言わなかった。そうだ、知っていたのだ。仁菜子が小さな頃からずっと俺に向けていた感情を。そして、それは、涼に向けられているものと違う事を。けれども、まだ仁菜子は小さい。世間を知らない。言うならば生まれて始めて見たものを親と思いこんでしまう雛鳥のような感覚で俺の事を好きだと思っているのではないかと思っていた。
彼女はこれから広い世界を知って、いろんな出会いを経験する。その中で自分が本当に一緒に居たいと思う奴に出会うだろう。そうであって欲しい。俺の事なんていつの日かそんな事もあったな……と、思い出となって欲しい。
そして、弟の涼の事を思った。涼は小さな頃から仁菜子の事が好きだ。またこいつも小さな閉鎖された世界の中で好きだとかそんな事を言って……、本当に幼なじみっていうものは少しだけやっかいだ。
「圭くん。大瀬さんに何か言ってあげたの?」
「ううん。言ってない。その前に仁菜子にそう言った事を言われた事も無い」
「そうなんだ……」
「あと、涼はずっと仁菜子の事が好きだから」
「ああ、それはずっと思ってた。だから余計に私の事が嫌いのかな……って」
奏が遠くを見ながらそう呟いた。奏はやっぱり涼の事を良く見ていると思う。まだ数回しか会った事のない弟の事を見抜いてしまうなんて。涼はなかなかやっかいな性格をしているから、それを見抜くのはかなりの難易度だと思うのだけれども。
「大瀬さん。大丈夫かな?」
「多分。涼が居るし……。しかも、俺が行っても何も出来ないよ」
「そうかな?」
「うん。俺は仁菜子をきっと傷つける事しか言ってやれない。誰よりも可愛くて大切な妹の事、傷つけたくない」
そう言いながら笑うと、奏が俺を見て言った。少しだけ淋しそうに。
「圭くんも、大瀬さんの事、大好きだよね。ちょっと妬ける」
「そう見える?でも、俺は奏が一番好きだよ」
「そんなにはっきり言われるとちょっと恥ずかしいのだけれど……」
「あ、俺もさっき言ってて恥ずかしかった」
俺と奏はそう言いながら笑うと、二人が消えて行った住宅街の街灯を見た。きらきらと輝いていて幻想的なそれはまるで今起こった出来事を夢のように感じさせた。
「どうする?これから?」
「ああ、とりあえず、やっぱり二人、探しに行こうか?」
「うん。心配だし……」
俺は一度家に入り、簡単に事情を説圭すると、涼と仁菜子の後を奏と一緒に追って行った。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】少年の懺悔、少女の願い
干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。
そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい――
なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。
後悔しても、もう遅いのだ。
※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。
※長編のスピンオフですが、単体で読めます。
「妹の方が可愛い」と不倫夫に捨てられた私。どうぞ借金まみれの実家ごと引き取って。私が肩代わりしていた負債、すべてお二人に引き継いでおきました
唯崎りいち
恋愛
「お前より妹の方が可愛い」
不倫した夫は私を追い出し、略奪した妹と笑った。
どうぞ、その「可愛い妹」と地獄までお幸せに。
私が肩代わりしていた実家と店の多額の借金、すべてお二人に引き継いでおきましたから。
「財布」を失った元夫と、逃げ場を失った妹。
身の丈に合わない贅沢を望んだ寄生虫たちの、惨めな末路を特等席で眺めさせていただきます。
【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください
楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。
ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。
ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……!
「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」
「エリサ、愛してる!」
ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
【完結】小さなマリーは僕の物
miniko
恋愛
マリーは小柄で胸元も寂しい自分の容姿にコンプレックスを抱いていた。
彼女の子供の頃からの婚約者は、容姿端麗、性格も良く、とても大事にしてくれる完璧な人。
しかし、周囲からの圧力もあり、自分は彼に不釣り合いだと感じて、婚約解消を目指す。
※マリー視点とアラン視点、同じ内容を交互に書く予定です。(最終話はマリー視点のみ)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる