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異世界
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「帰れるよ!きっと!」
と、千冬くんに言われて私は少しだけ安心していた。
けれども、どこにも帰れる保証はないし、こうして千冬くんが今はいるから悲観的になっていないだけで、本当は今にも泣いてしまいそうな気分だ。
先ほど沢山泣いたので涙は少し乾いているけれど、それでも目の奥が腫れぼったいし、心は全く浮かばない。
「きっとって保証はあるの?私が元の世界に帰れるって」
「多分。それにお父さんは百合婆の事をよく知っているし、百合婆から渡されたアイテムの事にも詳しいんだ。だからそんなに心配しなくても大丈夫だと思うよ」
「千冬くんがそういうなら信じたいのだけれど。でもなんだか心が落ち着かなくて」
「そうだよね。当たり前だよね。別の次元に存在している世界にいるとか…」
「そう。今も夢ならいいなと思ってる。夢を見ていて、目を覚ましたらいつもの日常って」
こうして助けてくれて、私を励ましてくれている千冬くんには申し訳ない態度をしていると思う。早く元気になって、千冬くんを安心させてあげなければいけないと思いつつもどうしても心は悪い方へとばかり考える。
私はスカートのポケットに入っている鍵をぎゅっと握った。
(瑞希は大丈夫だよ。私がついているからね)
「え?」
「どうしたの?」
「ううん。あの…びっくりしないでね。あと、千冬くんをからかうつもりもないから」
「うん。何?」
「私、鍵の声が聞こえるの。あ!気のせいかもしれないけれど」
そのことを私が言うと千冬くんは顎に手を当てて考え込んだ。そして私をみる。
「それってさ、百合婆の声が聞こえてるんだと思う」
「そうなの?っていうか、百合お婆さんって一体何者なの?」
「それは説明しづらいなあ」
説明しづらいってどういう事なんだろう?そんな事を思う。けれども何か難しい事というか大変な事に巻き込まれたのだけはわかる。そして私は元の世界に一応戻れるらしいけれど、それがいつになるのかわからない…そういう事なのかもしれない。
「とりあえずさ。ここで話していても仕方ないから、僕の家に行こう。そこでお父さんに話をすればいいと思う」
「…うん」
千冬くんの言い分はやっぱりわからない。そしてふと思う。このまま彼の言葉を信じて付いて行っても大丈夫なのかということ。けれども千冬くんは悪い人ではなさそうだし、嘘を付いているわけでもなさそうなのだ。
しかも百合お婆さんの心の声が大丈夫って言っていた。
「わかった。じゃあ、千冬くんの家に連れて行って」
「うん。あ、決して怪しいものじゃないからね!」
「え?私、さっき声に出してた?」
「小さな声でぶつぶつと…。やっぱり疑ってるよね。いきなり家に行こうって言われても信じられないよね。じゃあ、これ、見て」
そう言いながら千冬くんはポケットの中をゴソゴソと探ると、私の目の前に鍵を差し出す。
「あ、これ」
「そう。瑞希も同じもの持っていると思うのだけれど」
「うん!百合お婆さんにもらった鍵と一緒」
「実は、僕も違う世界から来たんだ」
「ええ?!」
いきなりの千冬くんのびっくり発言に私は大きな声を出す。
「僕も瑞希と同じように百合婆の店に迷い込んだんだよ。1年ほど前かな?こっちの世界の時間でいうと」
私は隣をゆっくりと歩きながら説明してくれる千冬くんの言葉を聞きながら心臓が早くなっていくのを感じた。
と、千冬くんに言われて私は少しだけ安心していた。
けれども、どこにも帰れる保証はないし、こうして千冬くんが今はいるから悲観的になっていないだけで、本当は今にも泣いてしまいそうな気分だ。
先ほど沢山泣いたので涙は少し乾いているけれど、それでも目の奥が腫れぼったいし、心は全く浮かばない。
「きっとって保証はあるの?私が元の世界に帰れるって」
「多分。それにお父さんは百合婆の事をよく知っているし、百合婆から渡されたアイテムの事にも詳しいんだ。だからそんなに心配しなくても大丈夫だと思うよ」
「千冬くんがそういうなら信じたいのだけれど。でもなんだか心が落ち着かなくて」
「そうだよね。当たり前だよね。別の次元に存在している世界にいるとか…」
「そう。今も夢ならいいなと思ってる。夢を見ていて、目を覚ましたらいつもの日常って」
こうして助けてくれて、私を励ましてくれている千冬くんには申し訳ない態度をしていると思う。早く元気になって、千冬くんを安心させてあげなければいけないと思いつつもどうしても心は悪い方へとばかり考える。
私はスカートのポケットに入っている鍵をぎゅっと握った。
(瑞希は大丈夫だよ。私がついているからね)
「え?」
「どうしたの?」
「ううん。あの…びっくりしないでね。あと、千冬くんをからかうつもりもないから」
「うん。何?」
「私、鍵の声が聞こえるの。あ!気のせいかもしれないけれど」
そのことを私が言うと千冬くんは顎に手を当てて考え込んだ。そして私をみる。
「それってさ、百合婆の声が聞こえてるんだと思う」
「そうなの?っていうか、百合お婆さんって一体何者なの?」
「それは説明しづらいなあ」
説明しづらいってどういう事なんだろう?そんな事を思う。けれども何か難しい事というか大変な事に巻き込まれたのだけはわかる。そして私は元の世界に一応戻れるらしいけれど、それがいつになるのかわからない…そういう事なのかもしれない。
「とりあえずさ。ここで話していても仕方ないから、僕の家に行こう。そこでお父さんに話をすればいいと思う」
「…うん」
千冬くんの言い分はやっぱりわからない。そしてふと思う。このまま彼の言葉を信じて付いて行っても大丈夫なのかということ。けれども千冬くんは悪い人ではなさそうだし、嘘を付いているわけでもなさそうなのだ。
しかも百合お婆さんの心の声が大丈夫って言っていた。
「わかった。じゃあ、千冬くんの家に連れて行って」
「うん。あ、決して怪しいものじゃないからね!」
「え?私、さっき声に出してた?」
「小さな声でぶつぶつと…。やっぱり疑ってるよね。いきなり家に行こうって言われても信じられないよね。じゃあ、これ、見て」
そう言いながら千冬くんはポケットの中をゴソゴソと探ると、私の目の前に鍵を差し出す。
「あ、これ」
「そう。瑞希も同じもの持っていると思うのだけれど」
「うん!百合お婆さんにもらった鍵と一緒」
「実は、僕も違う世界から来たんだ」
「ええ?!」
いきなりの千冬くんのびっくり発言に私は大きな声を出す。
「僕も瑞希と同じように百合婆の店に迷い込んだんだよ。1年ほど前かな?こっちの世界の時間でいうと」
私は隣をゆっくりと歩きながら説明してくれる千冬くんの言葉を聞きながら心臓が早くなっていくのを感じた。
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