タイムマシンの正しい乗り方

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タイムマシンの正しい乗り方

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ちょうど時計が12時を示すチャイムを鳴らした時のことだった。扉を開け、自分の部屋に入ると、そこには私がいた。もっというならくつろいでいた。

一瞬目を疑ったが、彼女はそのまま私を出迎え、

「私、未来から来たの。」

と一言。少し深呼吸。よし、たぶん落ち着いたと思う。私は

「未来の私は何でここに来たの?どうして同じ年齢なの?」

と彼女にたずねた。たずねたというよりも口早く疑問をぶつけたと言った方が正しいだろう。やっぱり落ち着ききれてなかった。仕方がない。
すると彼女はけだるそうに体を起こしてから答えた。

「この時代に来たのは、忘れ物を取り戻すため。で、姿はタイムマシンの仕様としか
「タイムマシン!」

思わず未来の私の言葉に食いつく。最近私はSFにはまっている、だから目をキラキラさせながら聞いてしまった。

「タイムスリップってどんな感じなの?」

初めてだったからなぁ、と呟いたあとに

「ぐわーんって感じ。凄い揺れる。」

と思っていたのと違う答え。私の質問タイムは続く。

「じゃあ、パラレルワールドってあるの?タイムスリップにはつきものだけど。」

「うーん、未来でもまだよくわかってないみたい。でも、いろんな話があるけど、パラレルワールドはあるって説が強いかな」

結局何もわからず少し残念な気持ちになった。所詮未来でも私は私か。それを察してか彼女は

「じゃあ、今度は私からだね。質問っていうよりクイズを出すよ。」

と言う。嫌な予感がして私は

「勉強とか変なのはやめてね。」

と、素早く先制攻撃を仕掛けた。が、彼女はそんなんじゃないよ、とそれを一蹴。彼女のターンはそのまま続く。

「じゃあ行くよ。未来の時間Aから過去の時間Bにタイムスリップしました。Bから少し過ぎ、時間Cになりました。時間Cから時間Aに戻るにはAかBの時間、どちらにタイムスリップするのが正解でしょうか?」

「Aじゃなくて?」

問題を聞くなり私はそう答える。

「チッチッ、違うんだなぁ。」

腹立つなぁ。

苛立ちを我慢してその理由を聞くと、

「CからAの時間にタイムスリップすると元の世界とは違う世界に行っちゃうかもなんだって。それを防ぐために、タイムマシンにはAとBの時間が記録されてB、Aの順番でしか時間移動が、できないように設定されてるらしいよ。」

私が納得した素振りを見せると彼女は、そろそろ帰るね、と未来の端末の画面を見せながら私に言った。その画面には、小学生の時に書いた夢の作文が、きっと未来の私が諦めたであろう夢が写っていた。どうせならと思い、彼女に私もタイムマシンに乗せてほしいとお願いすると、彼女はそれを予想していたようで、
「仕方ないなぁ、1回だけだよ。」
と、すぐに言ってくれた。12時30分、私はCの時間からBの時間へとタイムスリップをした。超揺れた。

本来の私が部屋に戻る10分前、すなわち11時50分に移動した。この時間がさっきの話でいうBの時間なんだなっと少し理解を深めた。未来の私と挨拶を交わす。

「この時間にタイムスリップしてきてよかった。ありがとう。じゃあね。」

と彼女、私が返事を返すとすぐに行ってしまった。これで彼女は元のAの時間に帰ったのだろう。今は11時52分。

部屋でくつろいでいると、時計から12時を示すチャイムが鳴り、扉が開いた。そして私がこっちを見ていた。にやっとした私は、彼女に言い放つ。

「私、未来から来たの。」

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