車と共鳴

かれは

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車と共鳴

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その日も僕たちはいつものように4人で集まり、テニスを楽しんだ。

温泉にでも行こうか。

4人で一台の車に乗り込み、走り出した。

辺りはもうかなり暗くなっていた。

すると突然、友人の1人が音楽をかけ始めた。

それはかなり不気味な音楽で、僕は思わず。

何だよそれ、こわっ。

と言った。

これ面白いだろ。呪いの音楽だって。

みんな笑っていた。

僕はそういうのが得意ではなかったので、かなり怖く感じた。

通っている道がかなり人気のない場所だったので特に怖く感じた。

しばらく車を走らせると周りが明るくなってきた。

ようやく人のいる場所に出てきたようだった。

友達はその音楽をあいかわらず大音量で流していた。

しばらく走ると、少し前方に自転車に乗った人がいるのが見えた。

彼らは窓を開け大音量でその音楽をかけたままその自転車の横を通り過ぎた。

目的地に到着しました。

ナビがそう言ったが、ついた場所は当初僕が聞いていた場所とは違っていた。

あれ、ここじゃなくない。

あれ、ここも温泉あるよね。

いや、ここはもうやってないよ。

あら、目的地と違う場所に設定してたわ。

友人は単純にナビに間違った場所を設定していたようだった。

ただ間違えただけだったのに僕はその音楽のせいで少し怖かった。

改めて目的地に向けて出発する。

相変わらず音楽はかけたまま。

そろそろこの音楽変えない?

僕は友人に言った。

なんで。

いや。ずっと同じじゃさ、飽きるじゃん。

怖いの?

いや、そういうわけでは。

まあ、そうか。そろそろ変えようか。

彼はそう言って。

音楽を変えようとした。

しばらくして、まだ音楽は変わらない。

あれ、おかしいな。

どうしたの?

なんか止まらないんだけど。

変えようとしてんだけどさ。

えっ、こわっ。

他の友人2人もソワソワし始めた。

一回止まろうよ。

そういうと、道の脇に車を停めた。

誰一人、車も通らない真っ暗な道。

その音楽だけが車から漏れる。

音量を下げようにも下げられない。

おいおい、やばいって。

どうなってんの。

全員が焦る。

音量を下げようとしても、下がらない。

その時、急にその音楽のリズムが変わった。

なんだ。

明らかに先ほどまでと違うリズムになった。

同じリズムを繰り返していた、音楽が変わった。

冷や汗が吹き出す。

トントン。

その時車の窓を叩く音がした。

しかし外を見ても誰もいない。

車出そう。

友人の一人が言った。

そうだな。

車を走らせる。

トントン、トントン。

走らせているのに車の窓からは音が聞こえる。

なんだよ。

その時、音楽がまた変わり僕らが見たものは。

並走する自転車、それも一台じゃない。

両隣を囲むように無数の自転車が。

60キロ近く出ている車の横を並走している。

それは老人のような見た目をしていて笑顔で窓を叩いている。

何だよ。

これ。

何でだよ。とまれ。とまれ。

音楽をかけていた友人が自分の携帯を思い切り叩きつけた。

ぷつっ。

やっと、音が止まった。

その瞬間僕たちが見ていたものは消滅した。

まるで何もなかったかのように。

外を見れば、そこは目的地の駐車場で。

4人はしばらくの間、車から降りることができず呆然としていた。




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