君に触れられるのは俺だけだった

かれは

文字の大きさ
14 / 27
2章 ラブコメ?

14.すれ違う鼓動

しおりを挟む
「……また、壁、通り抜けた」

蓮がソファに腰を落とし、ぐしゃぐしゃと髪をかき乱す。

「ごめん、悠真。今日の買い出しも……途中で体が半透明になって、変な目で見られてさ」

「別に気にすんなよ。怪談話っぽくなって面白かったし」

「……そういうとこ、だよ」

「え?」

「悠真ってさ。なんでも受け入れて、笑って流すの、得意だよな」

「……蓮?」

「俺のことも……本気で心配してないだろ」

「は? 何言って──」

「だって、俺が急にまた消えたとしても、お前……『そういうこともあるか』って笑ってそうだもん」

その瞬間、胸に鋭い棘が刺さったようだった。

「お前……ふざけんなよ。それ、本気で言ってんのか?」

「じゃあ、ちゃんと怒ってよ。ちゃんと、心配してよ……! 俺が消えるかもって怖いのに、お前だけいつも冷静でさ……!」

「俺だって怖ぇよ!」

怒鳴った声が、部屋に響いた。

「お前がいなくなったら……何も感じなくなるくらいには、今、俺はお前にどっぷりだよ」

「じゃあ、どうして──!」

「お前に怖がらせたくねぇからだよ! 俺が不安になったら、お前がもっと不安になるだろ!」

沈黙。

言葉の温度が、ようやくぶつかり合った瞬間だった。

「……ごめん」

蓮が、ぽつりとつぶやいた。

「俺が勝手に、拗ねてただけかも。お前の気持ち、ちゃんと聞く前に……」

「……こっちこそ、悪かった」

それ以上、言葉はなかった。

蓮はそのまま、自室に戻っていった。

ドアの閉まる音が、いつもより遠くに感じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。 最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。 俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 じれじれラブコメディー。 4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。 (挿絵byリリーブルー)

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

先輩、可愛がってください

ゆもたに
BL
棒アイスを頬張ってる先輩を見て、「あー……ち◯ぽぶち込みてぇ」とつい言ってしまった天然な後輩の話

青は藍より出でて藍より青し

フジキフジコ
BL
ヤクザの跡取りの高校生とその同級生の話。高校生からはじまり40代になるまで続きます。 【青は藍より出でて藍より青し】本編。高校時代。 【番外編/白い花の家・月を抱く】葉月と綾瀬が出会った頃の話。 【番外編/Tomorrow is another day ・Sweet little devil】綾瀬と高谷の高校時代の短いエピソード。 【朱に交われば赤くなる】本編「青は藍~」の続き。 【狭き門より入れ】本編「朱に交われば~」の続き。7年後のお話になります。 【番外編/BLEED】篤郎の事情 【三代目の結婚】本編「狭き門~」の続き。綾瀬の結婚問題。 【番外編/刺青】高谷×綾瀬のいちゃいちゃ 【瑠璃も玻璃も照らせば光る】本編「三代目の結婚」の続き。主役は篤郎です。エピローグに高谷×綾瀬のいちゃ。 【番外編/古傷】高谷×綾瀬のいちゃいちゃ 【番梅花は蕾めるに香あり 】本編「瑠璃も玻璃~」の続き。高谷と男子高校生の話。 【天に在らば比翼の鳥】本編の完結編。 他シリーズ『チェリークール』の【番外編】「東京ミスティ」「東京ミスティ2」「微笑みの行方」に綾瀬と高谷が出ています。

処理中です...