君に触れられるのは俺だけだった

かれは

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24.乗っ取られたのは俺の体でした

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午後の陽が差し込む居間。
悠真がリビングのソファでくつろぎながら、スマホでカフェスイーツのレシピを検索していると――

「ねーねー!蓮くん!身体ちょっとだけ貸してー!」

「は? ……やだ」

即答した蓮の声は低く冷ややかだったが、ノノは怯まない。

「だってさー、蓮くんの身体めっちゃ動けるんでしょ? 憑依してピョンって跳ねたり、回ったりしてみたいの~!」

「……お前それ、ただの遊びだろ」

「だーいじょーぶ!すぐ返すから♡ ねっ、ちょっとだけ!ちょびっと!」

「……ちょびっと?」

「ちょびっと♡」

悠真が視線を上げたときには、もう遅かった。

蓮の身体が、ぐにゃっと動きを止めたかと思えば――

「……きゃああ! この身体ほんとに動けるぅ~! わああ、すごーい、手がちゃんと動くっ!」

蓮の顔をした誰かが、部屋の真ん中で軽やかにスピンした。

「……」

悠真は一度、そっとスマホを伏せた。

「ノノ?」

「はーいっ♡ いま、蓮くんのなかにいまーす!」

満面の笑顔でウィンク。

その横では、幽体化した本体・蓮がふよふよと浮いている。

「悠真、マジで……俺じゃねぇからな。これは違うからな。変な目で見んなよ」

「うん、見たくなくても見える。すごい顔してるよ、お前……いや、ノノ?」

ノノin蓮は悠真の目の前でポーズをキメる。

「どう? 蓮くんのイケメンフェイスでこの可愛さ! 最強じゃない!?」

「やめろ。俺の顔でそんな動きすんな……マジで」

「じゃーん♪ 悠真くんに~、ちゅっ♡」

「やめろぉぉぉ!!!!」

蓮(幽体)が本気で慌てて突っ込むも、物理干渉はできず。
悠真は片手で顔を覆いながら、叫ぶように言った。

「誰か俺の彼氏を返してくれ……!!」


「ちょ、やばいこれ楽しい~~っ! ちょっとだけ外出てみていい?」

ノノ in 蓮、ドアノブに手をかける。

「やめろっ! 俺の体だぞ!? 勝手に外出んな、絶対ダメ!!」

幽体の蓮が、ものすごい形相で止めようとするが――当然すり抜ける。

「ノノ! 外はマジで危ないって! それに、身体の調子狂うかもしれないし!」

悠真が真顔で割って入った。

「それに、蓮が……蓮じゃなくなるの、見たくない」

その一言に、ノノの動きがピタッと止まった。

「……あ、ごめん」

瞬間、ふっと力が抜けるように蓮の体からノノが抜け落ち、ぺたんと床に座り込むような格好になった。

蓮はすぐさま身体に戻り、肩で息をしていた。

「……マジで、やめろ。全力で引いた」

「うう、ごめんなさいぃぃ……ちょっと楽しくなっちゃって……」

ノノがぽろぽろ涙をこぼしながら、蓮に手を合わせて謝る。

「幽霊でも、やっちゃいけないことってあるんだね……。なんか、ごめんね、蓮くん」

「……俺も。ちょっと言いすぎた」

蓮が小さく溜息を吐いて、頭をぽりぽり掻く。

「今度動きたい時は、ちゃんと悠真に相談してからな。なんか方法考えてくれるかもだし」

「えっ、ほんとに?」

「まあ……今日よりマシなら……」

「わーん蓮くんやさしい~!!」

ノノが蓮に抱きつこうとするが、すり抜けて床にズデンと転がった。

悠真はその様子を見ながら、ソファに深く腰を沈め、ひとこと。

「今日は……つかれた」
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