冷たい貴方とそんな夢を見た

かれは

文字の大きさ
6 / 9

2部3

しおりを挟む
「あなたは?」

「いいから、とにかくついてきて。」

青年はそういうと走り出した。

そこには誰もいなかった。

この青年の仲間が引きつけてくれているのだろうか。

そしてひたすらに走った。

その青年はふたりの方を時々振り向きながらも走り続けた。そしてどれくらい走っただろうか。

青年が立ち止まった。

目の前には民家の塀があるだけ。



青年はその壁に手をかざした。

するとその壁がガガガッと音を立てて奥に倒れた。

青年はそこに入っていく。

「こっちこっち。」

呆然とする2人に手招きした。

「行こう。」

けいはそう言うと青年に続いた。

(大丈夫だよね。)

ひみも後に続く。

そこに一歩踏み入れた瞬間眩しい光に包まれるのが分かった。

ぼやけていた視界が徐々に晴れていき、ひみはあたりを見渡した。

そこはとても広かった。

目の前には古く小さな家。

そして目の前には川が流れている。

確かに民家の塀の中のはずだったが。

振り返るとあったはずの壁は無くなっていた。

けいも驚いた顔をしている。

「ねぇ、これって。」

「さっきここ壁だったよな。」

「無くなってる。」

「やっぱりそうだよな。」

青年はふたりの混乱を他所に話しかけてきた。

「無事でよかったです。怪我はしてないですか?」

「あ、うん。大丈夫だよね。」

「うん。大丈夫。」

「私はエンと言います。あなた方は?」

「ぼくはけい。そんでこいつはひみっていいます。助けてくれてありがとう。」

珍しくけいが先に口を開いた。

「どうも、ひみです。」

ひみも頭を下げる。

(いつもなら逆なんだが、まぁいいか。)

「けいさんと、ひみさんですか。ところでなんであんなところにそんな格好でいたんですか?」

「それがわたしたちもいまいち状況が掴めてなくて。気づいたらそこにいたっていうか。」



エンは首を傾げた。

「何も覚えてないということでしょうか。元々住んでいたところも?」

「それが、私たちあの周辺に住んでいたはずなんです。今日の今日まで、なのに急に世界が変わってしまったっていうか。おかしいですよね。分かってるんですけど。本当なんです。」

「なるほど。あなた達は少なくとも表側の人間であると。」

エンは考え込んだ。

「つまり、あなた方はなんらかの理由で時を超えてしまったと。」

「もしそうだとして、ありえるんですか?」

「わかりません。ですが、あなた方は今日の今日まで、争いの無い世界にいたんですよね?」

「そうです。なのに。」

「わかりました。私の仲間に何かわかるものがあるかもしれませんので、聞いてみますね。」

「ありがとうございます。」

ひみとけいは頭を下げた。

「お疲れでしょう。食事でもどうですか?」

「ありがたいです。」

真っ先にけいが応えた。

そしてひみとけいは小さな家の中に案内された。

木造のとても雰囲気の良い小さな家。

カフェのようだった。

ふたりは椅子に腰掛け。

出された水を飲んだ。

生き返ったような気になった。

「ぷはっ。」

「大変だったでしょう。ここにいれば安心ですので。しばらくはここで休むと良い。」

「ちょっと質問しても良いですか?」

けいが口を開いた。

「はい。どうぞ。」

「僕たちは、民家の塀があるところから入りましたよね。だけど振り返ったらその塀もなくて、こんなに広い空間があって。かなり混乱してるんですけど。」

「無理ないでしょう。ここはあるはずのない場所ですから。私が作り上げた場所。私と私の認めたものしかくることのできない場所です。私は空間を造り出せるのです。この場所に仲間と身を寄せている。今は出払っていますが、数人の仲間とここにいます。他の仲間達も私の作った別の空間にいます。」

「なんかちょっと理解するのに時間がかかりそうだな。」

けいは頭をかいた。

「なら、わたしからも。」

「どうぞ。」

「さっき言ってた、表側の人間ってどういうことですか?」

「そうでしたね。その説明をしなければ何も分かりませんね。この世界にはあなた達の知る人間と。わたしたち、神から何かしらの力を与えられた人間がいます。私たちは人間となんら変わりはありません。昔は区別なく共に生きていました。しかし、次第にわたしたちは、表の人間達から気味悪がられるようになり、災いを呼ぶと言われ、約200年前からわたしたちは住処を追われるようになりました。」

「200年前って。じゃあわたしたちは。わたしたちの生きてた世界はどこにいったの?」

「この世界はあなたの知る世界とは全く異なるものかもしれないということです。そのほとんどが未知ということになるでしょう。」

けいもかなり混乱している。

「元の世界に戻れるのかな。」

けいはつぶやいた。

「私たちにも分かりませんが、そのために協力しましょう。あなた方の生きていた世界はさぞかし美しいものなのでしょう。」

、、

「いや、そうでもないかもしれないです。だけど。私たちも協力できることなら何でもします。」

「それはありがたいです。どうぞよろしく。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫に愛想が尽きたので離婚します

しゃーりん
恋愛
次期侯爵のエステルは、3年前に結婚した夫マークとの離婚を決意した。 マークは優しいがお人好しで、度々エステルを困らせたが我慢の限界となった。 このままマークがそばに居れば侯爵家が馬鹿にされる。 夫を捨ててスッキリしたお話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

離婚した彼女は死ぬことにした

はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

処理中です...