7 / 57
7 妃仲間と愚痴ってみた
しおりを挟む
夏妃の殿舎は、煌びやかな装飾でいっぱいだった。
高級で有名な銘柄の品々が、きちんと整えられて並んでいる。夏妃自身もまた、上質そうな華やかな衣装を身につけていた。
「今日はお招きありがとうございます。夏妃はお召し物も素敵ですね」
「そうー? ありがとう。こないだは、お疲れ様。青妃とまた会えて嬉しいわ」
夏妃は茶菓子を運んできた侍女に、部屋の外へ出ているように言いつけた。ここは、合わせた方がいいだろうか。私も伴ってきた菖蒲に、同じように外で待っているようお願いした。
そんな私の菖蒲に対する話し方を見て、夏妃が不思議そうに言った。
「青妃は、随分と腰が低いのね。東龍国の公主様がわざわざ嫁いできたんだから、もっと堂々としてるものかと思ったのに」
やはり、妃らしい態度は上手くできていなかったらしい。といっても、朱琳のように振る舞うことは性格上できそうにない。今がいっぱいいっぱいだった私は、小さく苦笑いするしかできなかった。
「ま、いいや。いやー、こないだのアレ、酷かったよね。もぉ愚痴りたくて愚痴りたくて。あの場で誰かに聞かれても調子悪いし、来てくれてありがとう」
まだ会ったばかりだというのに、愚痴を聞いてしまって大丈夫なのだろうか。何か罠だったりしないか。警戒もしたが、国王と貴妃やこの後宮内の情報を詳しく聞ける絶好の機会を逃すわけにはいかない。
「由貴妃という方は、あの、控えめそうな方でしたね。噂からもっと派手な女性を想像していたので、意外でした」
「噂?」
「あ、えと、国王陛下の御寵愛が深いと……」
この発言は、大丈夫だったろうか。
後宮は、妃たちが『王の寵愛』を取り合う戦場だ。自分は今はその寵愛が欲しいなどとは思わなかったが、夏妃の気持ち次第では不快にさせてしまうかもしれない。
『妃として』考えるべきことは、同じ処で暮らしていても侍女とはだいぶ違うのだと思い知らされてきた。
夏妃は、私の心配したようなことには特に触れず、別のところへ食いついた。
「控え目? あのブスが?」
「え、あああの、ちょっと」
明け透けな物言いに、さすがに戸惑う。由貴妃は他の妃たちとは容姿も明らかに違っていたが、それでも国王に一番に愛されているというのだから、他の魅力がきっとあるのだろうと思っていた。
「あのブスの着ていた着物、色合いこそ控えめだけど、めちゃくちゃ高級品よ。それに装飾品も、私も見たことのないような珍しい宝石を使っていたわ。あれはね、そういう女なのよ」
夏妃の勢いに圧倒される。
「そういう女?」
「顔は後宮に似つかわしくないブスだけど、自分が一番じゃなきゃ気の済まない気位の高い女ってこと。貴女も気をつけた方がいいわ」
「はぁ」
「ね、青妃。その指輪見せて。青い綺麗なの」
「これですか?」
私は東龍国の王族の証である例の指輪をはめた手を、夏妃に向けて差し出した。
「これって、何ていう石なの? この国では、流通してないみたい」
「これは、碧玉と言って、東龍国の一部でのみ採れる石なのです。希少なため国内でも市場には流通はしておらず、王族のみが持てる宝玉となっています」
「へぇ~。綺麗ね」
夏妃はまじまじと指輪を眺めた後、ありがとうと小さく言って、私の手を下ろした。
「あの、国王陛下は、どんな御方なのでしょうか? その、私は、先日の会でお顔を拝見したのが初めてでして」
「え?」
夏妃が、目を見開いて聞き返した。
何か、おかしなことを言ってしまったのだろうか?
「青妃、貴女は東龍国王の娘だと言ったわよね? 後宮へ来てどれくらい経つの?」
「え、は、はい……一ヶ月弱になります」
「まだ、王の渡りはないの? 東龍国からわざわざ入ったのに?」
またしても彼女の勢いに圧倒されてしまう。
それほど、おかしなことなのだろうか。普通は、隣国の公主が嫁いできたなら、もっと早く訪れたりするものなのだろうか。
私はこれまで、公主様の侍女として下働きをしてきてはいたが、妃としてどう扱われるべきなのかなど、そのあたりの機微は持ち合わせてないことを痛感した。
「東龍国から、というのはそれほど重要なことなのでしょうか?」
「あら、何にも知らないで嫁がされたお姫様なのね。いいわ、教えてあげる」
夏妃が語ったのは、次のようなことだった。
ここ朋央国は、この大陸にあるいくつかの国の交易の要所である。ここを中心として見ると、北に強大な国力を誇る玄冥国、東に私の出身である東龍国、西に西麟国という位置付けだ。ここ朋央国は玄冥国の属国であるが、東龍国と西麟国はまだ玄冥国には降ってはいない。そして東と西の二国は敵対している関係にある。これら二国は、玄冥国との国境はそれぞれ自然で阻まれているため、ここ朋央国が玄関口となって、三国の貿易を助ける役目を果たしている。
ここまでは、さすがに私でも知っている情報だった。
朋央国は、敵対している東西の二国間の間で中立を保つことで、国家間の均衡に多大な貢献をしている。経済的にどちらかが有利不利など起きないよう、玄冥国との関係も含めてうまく調整して平和を保ち、繁栄してきた国であった。
「凄い、どうしてそんなにお詳しいんですか?」
「貴女も公主だったなら、そのくらい知ってなさいな。って意地悪は置いといて、私の実家はね、この国の筆頭の商家だから。はっきり言ってうちのおかげでこの国は成り立ってるようなもんよ」
「だから、服や装飾品などお詳しいんですね」
「うん? まーね。で、さっき言った通り、この国にとって、東龍国は大事なお客様でもあるわけ。商売上、というのもあるけど、政治的にも、朋央は東か西どちからに偏ることは許されないはずよ。そこから受け入れた妃を一ヶ月も放っておくなんて、と思ったのよ」
そういうもの、なのだろうか。とはいえ、それに関しては私からはどうすることもできないのではないだろうか。「来て下さい」と妃の側からお願いするなど、ありえないことだ。
「まぁさ、奴の御渡りなんて個人的にはなくていいんだけど。ぶっちゃけキモいだけだし」
二人きりとはいえ、夏妃は声を落として顔をしかめながら言った。この間から思っていたが、かなり自分の気持ちに正直な人なようだ。本来、妃が王様に対してこのようなことを言うなどあってはならないことだが、もしかしたら実家の立場が強いということも関係しているのかもしれない。
彼女の言う通り、御渡りがあるということは、つまり、服を脱いで身体を重ねるということだ。
私個人の感覚だけで言えば、そりゃあ御免被りたいことこの上ない。しかし、東龍国という立場を背負っているのならば、むしろ来て貰わないと困る、というところだろう。
改めて、朱琳を恨めしく思った。
だが、彼女もこの葛藤を抱いていたのかと思うと、あまり責める気にはなれなかった。今自分が考えたことは、嫌がる彼女にこの役目を無理やりさせようとすることだったからだ。
そのあたりまで話したところで、夏妃の侍女が終わりの時間を知らせにやってきた。
肝心の阿銅羅教のことについて聞きそびれた、と気付いたのは登龍殿へ帰ってからだった。
高級で有名な銘柄の品々が、きちんと整えられて並んでいる。夏妃自身もまた、上質そうな華やかな衣装を身につけていた。
「今日はお招きありがとうございます。夏妃はお召し物も素敵ですね」
「そうー? ありがとう。こないだは、お疲れ様。青妃とまた会えて嬉しいわ」
夏妃は茶菓子を運んできた侍女に、部屋の外へ出ているように言いつけた。ここは、合わせた方がいいだろうか。私も伴ってきた菖蒲に、同じように外で待っているようお願いした。
そんな私の菖蒲に対する話し方を見て、夏妃が不思議そうに言った。
「青妃は、随分と腰が低いのね。東龍国の公主様がわざわざ嫁いできたんだから、もっと堂々としてるものかと思ったのに」
やはり、妃らしい態度は上手くできていなかったらしい。といっても、朱琳のように振る舞うことは性格上できそうにない。今がいっぱいいっぱいだった私は、小さく苦笑いするしかできなかった。
「ま、いいや。いやー、こないだのアレ、酷かったよね。もぉ愚痴りたくて愚痴りたくて。あの場で誰かに聞かれても調子悪いし、来てくれてありがとう」
まだ会ったばかりだというのに、愚痴を聞いてしまって大丈夫なのだろうか。何か罠だったりしないか。警戒もしたが、国王と貴妃やこの後宮内の情報を詳しく聞ける絶好の機会を逃すわけにはいかない。
「由貴妃という方は、あの、控えめそうな方でしたね。噂からもっと派手な女性を想像していたので、意外でした」
「噂?」
「あ、えと、国王陛下の御寵愛が深いと……」
この発言は、大丈夫だったろうか。
後宮は、妃たちが『王の寵愛』を取り合う戦場だ。自分は今はその寵愛が欲しいなどとは思わなかったが、夏妃の気持ち次第では不快にさせてしまうかもしれない。
『妃として』考えるべきことは、同じ処で暮らしていても侍女とはだいぶ違うのだと思い知らされてきた。
夏妃は、私の心配したようなことには特に触れず、別のところへ食いついた。
「控え目? あのブスが?」
「え、あああの、ちょっと」
明け透けな物言いに、さすがに戸惑う。由貴妃は他の妃たちとは容姿も明らかに違っていたが、それでも国王に一番に愛されているというのだから、他の魅力がきっとあるのだろうと思っていた。
「あのブスの着ていた着物、色合いこそ控えめだけど、めちゃくちゃ高級品よ。それに装飾品も、私も見たことのないような珍しい宝石を使っていたわ。あれはね、そういう女なのよ」
夏妃の勢いに圧倒される。
「そういう女?」
「顔は後宮に似つかわしくないブスだけど、自分が一番じゃなきゃ気の済まない気位の高い女ってこと。貴女も気をつけた方がいいわ」
「はぁ」
「ね、青妃。その指輪見せて。青い綺麗なの」
「これですか?」
私は東龍国の王族の証である例の指輪をはめた手を、夏妃に向けて差し出した。
「これって、何ていう石なの? この国では、流通してないみたい」
「これは、碧玉と言って、東龍国の一部でのみ採れる石なのです。希少なため国内でも市場には流通はしておらず、王族のみが持てる宝玉となっています」
「へぇ~。綺麗ね」
夏妃はまじまじと指輪を眺めた後、ありがとうと小さく言って、私の手を下ろした。
「あの、国王陛下は、どんな御方なのでしょうか? その、私は、先日の会でお顔を拝見したのが初めてでして」
「え?」
夏妃が、目を見開いて聞き返した。
何か、おかしなことを言ってしまったのだろうか?
「青妃、貴女は東龍国王の娘だと言ったわよね? 後宮へ来てどれくらい経つの?」
「え、は、はい……一ヶ月弱になります」
「まだ、王の渡りはないの? 東龍国からわざわざ入ったのに?」
またしても彼女の勢いに圧倒されてしまう。
それほど、おかしなことなのだろうか。普通は、隣国の公主が嫁いできたなら、もっと早く訪れたりするものなのだろうか。
私はこれまで、公主様の侍女として下働きをしてきてはいたが、妃としてどう扱われるべきなのかなど、そのあたりの機微は持ち合わせてないことを痛感した。
「東龍国から、というのはそれほど重要なことなのでしょうか?」
「あら、何にも知らないで嫁がされたお姫様なのね。いいわ、教えてあげる」
夏妃が語ったのは、次のようなことだった。
ここ朋央国は、この大陸にあるいくつかの国の交易の要所である。ここを中心として見ると、北に強大な国力を誇る玄冥国、東に私の出身である東龍国、西に西麟国という位置付けだ。ここ朋央国は玄冥国の属国であるが、東龍国と西麟国はまだ玄冥国には降ってはいない。そして東と西の二国は敵対している関係にある。これら二国は、玄冥国との国境はそれぞれ自然で阻まれているため、ここ朋央国が玄関口となって、三国の貿易を助ける役目を果たしている。
ここまでは、さすがに私でも知っている情報だった。
朋央国は、敵対している東西の二国間の間で中立を保つことで、国家間の均衡に多大な貢献をしている。経済的にどちらかが有利不利など起きないよう、玄冥国との関係も含めてうまく調整して平和を保ち、繁栄してきた国であった。
「凄い、どうしてそんなにお詳しいんですか?」
「貴女も公主だったなら、そのくらい知ってなさいな。って意地悪は置いといて、私の実家はね、この国の筆頭の商家だから。はっきり言ってうちのおかげでこの国は成り立ってるようなもんよ」
「だから、服や装飾品などお詳しいんですね」
「うん? まーね。で、さっき言った通り、この国にとって、東龍国は大事なお客様でもあるわけ。商売上、というのもあるけど、政治的にも、朋央は東か西どちからに偏ることは許されないはずよ。そこから受け入れた妃を一ヶ月も放っておくなんて、と思ったのよ」
そういうもの、なのだろうか。とはいえ、それに関しては私からはどうすることもできないのではないだろうか。「来て下さい」と妃の側からお願いするなど、ありえないことだ。
「まぁさ、奴の御渡りなんて個人的にはなくていいんだけど。ぶっちゃけキモいだけだし」
二人きりとはいえ、夏妃は声を落として顔をしかめながら言った。この間から思っていたが、かなり自分の気持ちに正直な人なようだ。本来、妃が王様に対してこのようなことを言うなどあってはならないことだが、もしかしたら実家の立場が強いということも関係しているのかもしれない。
彼女の言う通り、御渡りがあるということは、つまり、服を脱いで身体を重ねるということだ。
私個人の感覚だけで言えば、そりゃあ御免被りたいことこの上ない。しかし、東龍国という立場を背負っているのならば、むしろ来て貰わないと困る、というところだろう。
改めて、朱琳を恨めしく思った。
だが、彼女もこの葛藤を抱いていたのかと思うと、あまり責める気にはなれなかった。今自分が考えたことは、嫌がる彼女にこの役目を無理やりさせようとすることだったからだ。
そのあたりまで話したところで、夏妃の侍女が終わりの時間を知らせにやってきた。
肝心の阿銅羅教のことについて聞きそびれた、と気付いたのは登龍殿へ帰ってからだった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……
皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる
若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ!
数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。
跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。
両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。
――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう!
エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。
彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。
――結婚の約束、しただろう?
昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。
(わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?)
記憶がない。記憶にない。
姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない!
都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。
若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。
後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。
(そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?)
ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。
エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。
だから。
この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し?
弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに?
ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。
婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。
桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。
「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」
「はい、喜んで!」
……えっ? 喜んじゃうの?
※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。
※1ページの文字数は少な目です。
☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」
セルビオとミュリアの出会いの物語。
※10/1から連載し、10/7に完結します。
※1日おきの更新です。
※1ページの文字数は少な目です。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
王子よ、貴方が責任取りなさい
天冨 七緒
恋愛
「聖女の補佐をしてくれないか?」
王子自ら辺境まで訪れ、頭を下げる。
それほど国は、切羽詰まった状況なのだろう。
だけど、私の答えは……
皆さんに知ってほしい。
今代の聖女がどんな人物なのか。
それを知った上で、私の決断は間違いだったのか判断してほしい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる