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第三章 学園国家グラドレイ
第七十四話 武術大会
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そして、試験会場に入ると、冒険者ギルドのグリードと、試験官がいた。それと、学園長の三人と、回復魔法士だけである。これなら、演技の必要はないかと思ったが、VIP席に誰かがいるようだったため、演技を続けることにした。
「本当にこちらの参加でいいんだな?」
と、何も知らない試験官が、聞いてきた。逆に聞きたい。向こうでいいのかと。それに気づいたのだろう。グリードと学園長の首が、小さく左右に振られていた。
「か……構いません。こ……こちらで、お……お願い……します」
驚愕の表情を浮かべる、グリードと学園長。そして、毛が揺れているボムとソモルン。
「そうか。では、場外と戦闘不能が、勝利条件だ。頑張ってくれ」
そう言って、剣を構える試験官。横には、バイコーンと呼ばれる、二本の角を持ち、黒い体の馬のような魔物がいた。確か、ランクCの魔物である。そのバイコーンが、言うことを聞いているところを見ると、実力者であることが、覗えた。
「お……お願いします。たああぁー!」
と、声をあげて、殴りかかった。それを見て、笑いを堪えるボム達と、未だ呆然のグリード達。
俺の右ストレートは、見事にかわされ、地面に転がされた。次に、剣での追い打ちがあったが、さらに地面を転がることで、かわした。そして、こちらへ駆けてくる試験官の足元に、土魔法で穴を開けて、躓かせた。
「はあはあ」
と、乱れてもいない息を、乱れているように見せ、決着をつけることにした。
「《アースランス》」
コケて倒れている試験官の、鳩尾の真下辺りに、魔法を発動させた。
「ぐふっ!」
悶絶している間に、追い打ちをかけることにした。そして、ちょっと面倒に感じながらも、弱そうに見せることにした。
「ボム。お願い!」
と言うと、試験官を場外へと、投げ出したボム。そして、バイコーンはというと、ソモルンのお馬さんになっていた。はしゃぐソモルンと、微妙に震える、バイコーン。調教師は、今日も大活躍のようだった。
「合格だ。本戦は、頑張ってくれ!」
そう言って、本戦出場者の証明書をもらい、帰ることにした。ちなみに、その時までには、グリード達も元に戻っていたが、ずっと不思議そうにしていた。
そして、家に帰った俺達は、爆笑の声によって、出迎えられた。特に、プルーム様の笑い声が、一番大きかった。
「ラース。何なのだ? アレは……ぷっ!」
と、質問しながら、爆笑していた。そこで、ボムとソモルンにした説明を、爆笑メンバーにもした。すると、少し不満そうにしていた。理由を聞くと……
「リオリクスの弟子が優勝ね……。まさか、負けるなんてことは……ないよな?」
威圧の込められた質問に、俺達は負けてはならないことを、再認識したのだった。
「「もちろんです!」」
「なら、安心じゃな。金もたくさん賭けよう。儲けたら、それで酒を買うとしようぞ。なあ、グローム、ガルーダ。楽しみじゃ」
と、酒飲み達が、はしゃいでいた。話が一段落したとき、俺のところに、またあの娘が来た。
「ありがとう」
と、ガルとともに、頭を下げてお礼をしてきた、カトレア。
「勝手にやってることだから、気にしなくていい」
すると、何か思い出したのだろう。また、話し出した。
「プルーム姉様に頼んだの。そしたら、大会で優勝出来たら、ガルの空飛ぶマントを、作ってくれるって、言ってたよ」
「……本当に、プルーム様が作るのか?」
「ううん。ラースが作るって、言ってた」
「何も聞いてないが……?」
「おかしいな。ラースが言ってたって聞いたよ」
俺は、プルーム様を見た。すると、目をそらされた。それどころか、移動して、カトレアの後ろにいる、ガルの後ろに立った。
「やっぱり、ダメ?」
駄目だと言おうとしたが、ガルとプルーム様のプレッシャーが、辛かったため、言えなかった。
「……優勝したらな」
「うん。頑張る」
と言って、ガルと作戦会議していた。だが、普通にやれば、負けることはないことを、思い出した。魔術特化型のギンがいて、ランクS相当のガルもいる。負ける要素は、全くない。……はめられた。
「プルーム様、仲いいんですね」
と、聞いてみた。
「可愛い娘達じゃ。特にあの娘は、カルラを妹のように可愛がり、いろいろ話をしてくれ、教えてもくれる。カルラも懐いているぞ」
「まぁ、見てれば分かりますけど、今だけかもしれないじゃないですか。裏切る者もいますよ」
俺は、裏切られ殺された。そのため、今ここにいる。結果だけを見たら、良かったと言えるが、あそこで、火神様達が拾ってくれなかったら、俺はそのまま死んでいた。そして前世でも、病気だと嫌がり、去って行った女もいた。
故に、あまり信じることを出来なかったし、裏切った者を許すことは、到底不可能な話だった。その態度が、王女達に対しても出ているかもしれない。そして、反対に俺の側にいてくれる者を、傷つける者は全力で排除してしまうのだろう。
「お前の話は、聞いている。さぞ、辛かっただろう。だが、新しい人生を始めて、新しい場所に来た。それでも、過去を引きずるのか? いいところだけを持って、転生したのではないのか? 復讐することで、スッキリするならばと思ったから、教国に対しては何も言わなかった。だが、カトレアは関係ないのではないか? あの娘は、何もしておらん。確かに、カルラのことで、阿呆なことをした者もいた。ソイツらは許せん。止められたのに、止めなかった者にも、少しは責任があるな。この場にいる者で該当するのは、イリスだけじゃな。王女は、知らなかったが、謝罪をして信頼を回復しようと、努力しておる。そして、そのことでカトレアや他を巻き込むのは、理不尽ではないか? お前は、お前のスキルで契約している者しか、信じられんのか? それならば、何故ソモルンは信じられる。それに、我もじゃ。これからの人生、楽しくするも、つまらないものにするも、お前次第じゃ。よく考えてみろ」
珍しく、本気で説教されてしまった。説教にしては、優しかったが。そして、その様子を寂しそうに見詰めていた、ボムとソモルン。確かに、理不尽なことをしていた。ソモルンは、テイムしていないのに、心から信じられて、大切な友達だった。
だが、何故? と、尋ねられても、理由は言えないだろう。信じるということは、形がないものだからこそ、難しいことだと思う。そして、決めるのは自分自身である。
「ソモルン、ごめんな。不安にさせて。俺は、ソモルンのことを、疑ったことはないぞ。大好きな友達だからな」
すると、目をウルウルさせて、顔をグリグリしてきた。その姿を見て、少し反省したのだった。
そして、やってきた本戦当日。快晴で、大会日和である。外にある、屋台も大繁盛。そして、俺達はというと、グリードと学園長を交え、作戦会議をしていた。あの後、家に来て説明を求められた。それを踏まえて、打ち合わせをしていた。
「では、プルーム様達はVIP席を用意しました。お金もいただきましたし、イリス第三王妃様方もいますから、言い訳も立つでしょう。続いて、ラースさんの説明には、Sランク冒険者だというのは、伏せます。そして、賭けの方は商業ギルドが、担当します。未払いになったら、世界中に広がり、二度と商売出来ないでしょう」
あとは、俺の演技にかかっているわけだが、不安しかない。決勝まで持ってもらいたい。
「二人は、賭けるんですか?」
「「もちろん!」」
「グリードさんは、リオリクス様の弟子にでしょう?」
と、笑いながら、質問した。すると、顔をしかめていた。
「アイツに賭けるとしたら、青銅貨一枚(十円)だ。アイツは、天狗になってムカつくんだよ。強い従魔と、属性纏が出来たと言って、勝手に卒業するとか言って。リオリクス様は、そのうち頭を下げて、帰って来ると、言って笑ってたが、俺を含む他の弟子達は、帰って来るな! って思ってるよ」
どうやら、天狗風阿呆弟子らしい。まぁ俺達は、負けることを、許されない身だ。天狗君には、伸びた鼻をへし折られてもらおう。そして、打ち合わせを終え、舞台へ。開会式をした後、子供の部をやった後、大人の部である。ちなみに、照明の機能はある。故に、決勝以外は今日行い、決勝は明後日行うことになっている。
そして、開会式も終わり、現在はVIP席で、カトレア達の闘いを、観戦していた。王女とカトレアは、魔力纏をしていた。俺が、教えたわけではない。俺の師匠である、大魔王が教えたようだ。満足そうにしていた。
魔力纏が出来る子供は、人族にはほとんどいないため、順当に勝ち上がっていた。王女は召喚獣が、子猫のイエロしかいないため、苦戦を強いられていたが、準決勝まで上がっていた。
カトレアは、ギンがいい仕事をしていた。ガルの口に入り、守りを固めたあと、魔術による爆撃。たまに忘れそうになるが、焔尾という魔獣である。火炎魔術が得意なのは、当然である。さらに、結界も使える。よくよく見てみれば、結構優秀である。
だが、準決勝で王女の相手が、生殺しのネチネチとした攻撃を、繰り返していた。すぐに、勝てるのに、いたぶっているようだった。フランが、身を挺して守っている。
「おい! ラース! いいのか? カルラが涙目だぞ!」
「致命傷を負えば、転移される。だが、それまでとなると、俺の身が持たない」
現在俺は、プルーム様とセレール様の、威圧が外に漏れないように、全力で結界を張っていた。徐々に強くなる威圧と、戦いながら。
「しょうがない。これは、出来れば隠しておきたかったが、『フラン転送』」
すると、フランに接触している、イエロと王女が、VIP席に転移してきた。
――生命魔術《完治》――
――生命魔術《聖水》――
――清潔――
王女の傷を治した後、生命魔術で作った、ポーションを飲ませた。すると、目を覚ました。カルラは、すぐに抱きつき、無事を確かめていた。そこで、やっと気づいたのだろう。負けてしまったことに。
だが、怒りが収まらない、プルーム様とセレール様。当然であろう。魔力纏をしていなかったら、全部が致命傷を負う、攻撃だったからだ。つまり、殺意ある攻撃だったため、ルール違反である。それを、審判も止めず、グリードも止めないのならば、俺にも考えがある。アイツの責任を、師匠に取ってもらおう。もちろん、その師匠は天狗風阿呆弟子である。
「ラース。思いっきりやれ」
「はい」
俺の師匠も、快諾してくれたようだから、恐怖を与えてやろう。だが、その前にカトレアの決勝である。相手は、あのクソ野郎だった。カトレアやギンも、お怒りのようで、早くも臨戦態勢だった。
「さっきのガキみたいに、熊に守ってもらえよ。僕とヴァルーがいれば、余裕よ!」
「あなたは、ルール違反をしている。それに、その子は首輪をしている。入国出来ないはず」
「……何のこと? 勝てば官軍って言葉、知らない? 勝った方が、正しい訳よ。師匠の言葉だぜ。師匠は、代々受け継がれているって、言ってたぜ? お前も、意見を通したかったら、勝手みろよ! ハッハッハッハーッ!」
「阿呆のような笑い方。私の先生なら、糞系ゴミ風阿呆天狗って言いそう」
カトレアの言葉に、キレる寸前の天狗君。だが、うちの巨デブ熊さんも、キレる寸前。理由は、あの天狗君が、リオリクス様が言いそうにない言葉を、あたかも事実かのように、言っていたからだ。さらに、首輪を確認しない審判とグリード。もしかして、アイツもクズだったかな? と、一人考えていると、どうやら始まるようだ。
「始め!」
「《アイスバレット》」
と、氷の礫を出していたが、ギンの結界の前には、無意味である。そして、カトレアは普段は、詠唱しているが、無詠唱が出来る娘である。当然、決勝でのお披露目である。
「ぐふっ!」
相手も、魔力纏をしていたため、ストーカー君のようにはならなかったが、かなりの衝撃だったようだ。股間槍は、大活躍である。だが、それだけではなかった。ガルが口を開けると、中から槍を出した。おそらく、マジックホッペから出したのだろう。未だ、身動き出来ずにいる天狗君に、思いっきり突き出した。
「くっ! ズルいぞ! 審判、ルール違反だ!」
「そうですねー……」
と、考える阿呆審判。だが、無視をするカトレア。横槍を入れられる前に、決着をつけたいようで、ギンもカトレアを《絶界》で守りながら、爆撃魔術を舞台いっぱいに、展開していた。そして、発射される魔術。この魔術ですごい点は、一発も当てていないところ。これでは、致命傷にならず、ルール違反にはならない。ただ、爆風で場外に出しただけ。
「審判、場外」
と、短く伝えるカトレア。
「しょ……勝者、カトレア。優勝は、カトレア」
と、宣言したところで、観客の大歓声が轟いた。そもそも、子供の部で致命傷を与えることは、禁止されている。それに準ずる行為も。それなのに、止めない審判と、武器を出しただけで、ルール違反と訴える阿呆と、認める審判。あり得ない。
「ちょっと、確認してきます」
「俺も行く」
「僕もー」
俺は、一人で行こうと思ったのだが、ボムとソモルンも、一緒に行くようだ。そして、探索魔術でグリードを探す。
「これはこれは、グリードさん。あんた死にたいのか?」
「ちょっ……ちょっと待ってくれ! 何があった?」
「はっ? 寝言でも言ってるつもりか? まず、選手の中に、首輪を隠して着けている者がいた。それに、準決勝での王女への攻撃は、魔力纏をしてなかったら、一発喰らっただけで、致命傷。それを連撃。しかも、いたぶるように、ネチネチと。決着が見えているのに、止めない審判。俺の記憶違いじゃなければ、ルール違反だよな? さらに、熊ゴーレムの口から、武器を出しただけで、ルール違反と訴え、認めようとする審判。お前ら、大会やる気があるわけ? ここ、神殿なんだけど、神にこの不正行為を見せていいと、思ってる? さらに、リオリクス様が、勝てば官軍って、言ったそうじゃないか。代々教えにしてるって? 今すぐ連絡とって、確認するか? その前に、プルーム様とセレール様に、殺されるぞ?」
俺は、怒りの限り捲し立てた。そして、下を向くグリード。
「……本当に知らなかった。今まで、神殿内にはいたが、賓客の相手をしていた。まさか、審判が不正をしていたとは……。それに、リオリクス様はそんなことを、言ってはいない。そう言うってことは、あの阿呆の弟子か。本当にすまない。大人の部では、俺が審判をする。もう二度と、不正行為をしない。そして、その選手は不正行為で、退場させる」
「それはいい。いなくなられたら、困るだろ? 神殿での不正行為だ。神罰が落ちないといいな」
俺達はそう言うと、その場を後にした。カトレアが少し、心配になったからだ。そして、やはり絡まれていた。
「卑怯だぞ! あれは、致命傷の攻撃だった。ルール違反だ! 優勝は、僕だ! さっさと、辞退しろ!」
――幻影魔術《変化》――
ボムも再びの、ボルガニス様になり、天狗君を同時に殴った。ボムは、ボムナックル《本気》を、喰らわせていた。この技は、パーではなく、グーである。始めて見た瞬間だった。普段、殴ることがないボムが、本気の右ストレートだった。
目の前の阿呆が、突然消えたことに驚く、カトレアとガル。そして、一番驚いているギン。一瞬、誰? みたいな顔をしていたが、マントの陰から、手を振るソモルンを見て、納得の表情を浮かべていた。
天狗君は、気絶したようだが、俺達は許す気はない。そして、この神殿は俺が建てた。つまり、お仕置き用の隠し部屋も、造っていた。そこに連れて行き、お仕置きをする予定だ。だが、ヴァルーとか呼ばれていた、魔物をどうするか悩む。仕方がないため、調教師にお願いした。
「契約破棄をして欲しいそうだ。あと、帝国にはこのように、首輪をするのが当たり前で、他にも逃げたい子が、山ほどいるそうだ。こんなこと言ってもいいのか分からんが、助けてあげられないだろうか……」
と、悲しそうに言うボム。何故か、ボムは首輪をはめられていたり、強制的に、契約させられたりしている子を、放っておけないらしい。そして俺は、悲しそうにするボムを、放っておけない。
「今回は、その首輪を解析しよう。術式をキーワードにした《転送門》が、蛇の巣を作ったときに成功したから、もしかしたら、同じ首輪をしている子の、同時召喚が可能になると思う。そしたら、まとめて契約破棄が出来るだろ? それまで、もう少しはめててくれ」
「クゥーン」
と、返事をする狼。また、狼の配下が増えたのだった。
「本当にこちらの参加でいいんだな?」
と、何も知らない試験官が、聞いてきた。逆に聞きたい。向こうでいいのかと。それに気づいたのだろう。グリードと学園長の首が、小さく左右に振られていた。
「か……構いません。こ……こちらで、お……お願い……します」
驚愕の表情を浮かべる、グリードと学園長。そして、毛が揺れているボムとソモルン。
「そうか。では、場外と戦闘不能が、勝利条件だ。頑張ってくれ」
そう言って、剣を構える試験官。横には、バイコーンと呼ばれる、二本の角を持ち、黒い体の馬のような魔物がいた。確か、ランクCの魔物である。そのバイコーンが、言うことを聞いているところを見ると、実力者であることが、覗えた。
「お……お願いします。たああぁー!」
と、声をあげて、殴りかかった。それを見て、笑いを堪えるボム達と、未だ呆然のグリード達。
俺の右ストレートは、見事にかわされ、地面に転がされた。次に、剣での追い打ちがあったが、さらに地面を転がることで、かわした。そして、こちらへ駆けてくる試験官の足元に、土魔法で穴を開けて、躓かせた。
「はあはあ」
と、乱れてもいない息を、乱れているように見せ、決着をつけることにした。
「《アースランス》」
コケて倒れている試験官の、鳩尾の真下辺りに、魔法を発動させた。
「ぐふっ!」
悶絶している間に、追い打ちをかけることにした。そして、ちょっと面倒に感じながらも、弱そうに見せることにした。
「ボム。お願い!」
と言うと、試験官を場外へと、投げ出したボム。そして、バイコーンはというと、ソモルンのお馬さんになっていた。はしゃぐソモルンと、微妙に震える、バイコーン。調教師は、今日も大活躍のようだった。
「合格だ。本戦は、頑張ってくれ!」
そう言って、本戦出場者の証明書をもらい、帰ることにした。ちなみに、その時までには、グリード達も元に戻っていたが、ずっと不思議そうにしていた。
そして、家に帰った俺達は、爆笑の声によって、出迎えられた。特に、プルーム様の笑い声が、一番大きかった。
「ラース。何なのだ? アレは……ぷっ!」
と、質問しながら、爆笑していた。そこで、ボムとソモルンにした説明を、爆笑メンバーにもした。すると、少し不満そうにしていた。理由を聞くと……
「リオリクスの弟子が優勝ね……。まさか、負けるなんてことは……ないよな?」
威圧の込められた質問に、俺達は負けてはならないことを、再認識したのだった。
「「もちろんです!」」
「なら、安心じゃな。金もたくさん賭けよう。儲けたら、それで酒を買うとしようぞ。なあ、グローム、ガルーダ。楽しみじゃ」
と、酒飲み達が、はしゃいでいた。話が一段落したとき、俺のところに、またあの娘が来た。
「ありがとう」
と、ガルとともに、頭を下げてお礼をしてきた、カトレア。
「勝手にやってることだから、気にしなくていい」
すると、何か思い出したのだろう。また、話し出した。
「プルーム姉様に頼んだの。そしたら、大会で優勝出来たら、ガルの空飛ぶマントを、作ってくれるって、言ってたよ」
「……本当に、プルーム様が作るのか?」
「ううん。ラースが作るって、言ってた」
「何も聞いてないが……?」
「おかしいな。ラースが言ってたって聞いたよ」
俺は、プルーム様を見た。すると、目をそらされた。それどころか、移動して、カトレアの後ろにいる、ガルの後ろに立った。
「やっぱり、ダメ?」
駄目だと言おうとしたが、ガルとプルーム様のプレッシャーが、辛かったため、言えなかった。
「……優勝したらな」
「うん。頑張る」
と言って、ガルと作戦会議していた。だが、普通にやれば、負けることはないことを、思い出した。魔術特化型のギンがいて、ランクS相当のガルもいる。負ける要素は、全くない。……はめられた。
「プルーム様、仲いいんですね」
と、聞いてみた。
「可愛い娘達じゃ。特にあの娘は、カルラを妹のように可愛がり、いろいろ話をしてくれ、教えてもくれる。カルラも懐いているぞ」
「まぁ、見てれば分かりますけど、今だけかもしれないじゃないですか。裏切る者もいますよ」
俺は、裏切られ殺された。そのため、今ここにいる。結果だけを見たら、良かったと言えるが、あそこで、火神様達が拾ってくれなかったら、俺はそのまま死んでいた。そして前世でも、病気だと嫌がり、去って行った女もいた。
故に、あまり信じることを出来なかったし、裏切った者を許すことは、到底不可能な話だった。その態度が、王女達に対しても出ているかもしれない。そして、反対に俺の側にいてくれる者を、傷つける者は全力で排除してしまうのだろう。
「お前の話は、聞いている。さぞ、辛かっただろう。だが、新しい人生を始めて、新しい場所に来た。それでも、過去を引きずるのか? いいところだけを持って、転生したのではないのか? 復讐することで、スッキリするならばと思ったから、教国に対しては何も言わなかった。だが、カトレアは関係ないのではないか? あの娘は、何もしておらん。確かに、カルラのことで、阿呆なことをした者もいた。ソイツらは許せん。止められたのに、止めなかった者にも、少しは責任があるな。この場にいる者で該当するのは、イリスだけじゃな。王女は、知らなかったが、謝罪をして信頼を回復しようと、努力しておる。そして、そのことでカトレアや他を巻き込むのは、理不尽ではないか? お前は、お前のスキルで契約している者しか、信じられんのか? それならば、何故ソモルンは信じられる。それに、我もじゃ。これからの人生、楽しくするも、つまらないものにするも、お前次第じゃ。よく考えてみろ」
珍しく、本気で説教されてしまった。説教にしては、優しかったが。そして、その様子を寂しそうに見詰めていた、ボムとソモルン。確かに、理不尽なことをしていた。ソモルンは、テイムしていないのに、心から信じられて、大切な友達だった。
だが、何故? と、尋ねられても、理由は言えないだろう。信じるということは、形がないものだからこそ、難しいことだと思う。そして、決めるのは自分自身である。
「ソモルン、ごめんな。不安にさせて。俺は、ソモルンのことを、疑ったことはないぞ。大好きな友達だからな」
すると、目をウルウルさせて、顔をグリグリしてきた。その姿を見て、少し反省したのだった。
そして、やってきた本戦当日。快晴で、大会日和である。外にある、屋台も大繁盛。そして、俺達はというと、グリードと学園長を交え、作戦会議をしていた。あの後、家に来て説明を求められた。それを踏まえて、打ち合わせをしていた。
「では、プルーム様達はVIP席を用意しました。お金もいただきましたし、イリス第三王妃様方もいますから、言い訳も立つでしょう。続いて、ラースさんの説明には、Sランク冒険者だというのは、伏せます。そして、賭けの方は商業ギルドが、担当します。未払いになったら、世界中に広がり、二度と商売出来ないでしょう」
あとは、俺の演技にかかっているわけだが、不安しかない。決勝まで持ってもらいたい。
「二人は、賭けるんですか?」
「「もちろん!」」
「グリードさんは、リオリクス様の弟子にでしょう?」
と、笑いながら、質問した。すると、顔をしかめていた。
「アイツに賭けるとしたら、青銅貨一枚(十円)だ。アイツは、天狗になってムカつくんだよ。強い従魔と、属性纏が出来たと言って、勝手に卒業するとか言って。リオリクス様は、そのうち頭を下げて、帰って来ると、言って笑ってたが、俺を含む他の弟子達は、帰って来るな! って思ってるよ」
どうやら、天狗風阿呆弟子らしい。まぁ俺達は、負けることを、許されない身だ。天狗君には、伸びた鼻をへし折られてもらおう。そして、打ち合わせを終え、舞台へ。開会式をした後、子供の部をやった後、大人の部である。ちなみに、照明の機能はある。故に、決勝以外は今日行い、決勝は明後日行うことになっている。
そして、開会式も終わり、現在はVIP席で、カトレア達の闘いを、観戦していた。王女とカトレアは、魔力纏をしていた。俺が、教えたわけではない。俺の師匠である、大魔王が教えたようだ。満足そうにしていた。
魔力纏が出来る子供は、人族にはほとんどいないため、順当に勝ち上がっていた。王女は召喚獣が、子猫のイエロしかいないため、苦戦を強いられていたが、準決勝まで上がっていた。
カトレアは、ギンがいい仕事をしていた。ガルの口に入り、守りを固めたあと、魔術による爆撃。たまに忘れそうになるが、焔尾という魔獣である。火炎魔術が得意なのは、当然である。さらに、結界も使える。よくよく見てみれば、結構優秀である。
だが、準決勝で王女の相手が、生殺しのネチネチとした攻撃を、繰り返していた。すぐに、勝てるのに、いたぶっているようだった。フランが、身を挺して守っている。
「おい! ラース! いいのか? カルラが涙目だぞ!」
「致命傷を負えば、転移される。だが、それまでとなると、俺の身が持たない」
現在俺は、プルーム様とセレール様の、威圧が外に漏れないように、全力で結界を張っていた。徐々に強くなる威圧と、戦いながら。
「しょうがない。これは、出来れば隠しておきたかったが、『フラン転送』」
すると、フランに接触している、イエロと王女が、VIP席に転移してきた。
――生命魔術《完治》――
――生命魔術《聖水》――
――清潔――
王女の傷を治した後、生命魔術で作った、ポーションを飲ませた。すると、目を覚ました。カルラは、すぐに抱きつき、無事を確かめていた。そこで、やっと気づいたのだろう。負けてしまったことに。
だが、怒りが収まらない、プルーム様とセレール様。当然であろう。魔力纏をしていなかったら、全部が致命傷を負う、攻撃だったからだ。つまり、殺意ある攻撃だったため、ルール違反である。それを、審判も止めず、グリードも止めないのならば、俺にも考えがある。アイツの責任を、師匠に取ってもらおう。もちろん、その師匠は天狗風阿呆弟子である。
「ラース。思いっきりやれ」
「はい」
俺の師匠も、快諾してくれたようだから、恐怖を与えてやろう。だが、その前にカトレアの決勝である。相手は、あのクソ野郎だった。カトレアやギンも、お怒りのようで、早くも臨戦態勢だった。
「さっきのガキみたいに、熊に守ってもらえよ。僕とヴァルーがいれば、余裕よ!」
「あなたは、ルール違反をしている。それに、その子は首輪をしている。入国出来ないはず」
「……何のこと? 勝てば官軍って言葉、知らない? 勝った方が、正しい訳よ。師匠の言葉だぜ。師匠は、代々受け継がれているって、言ってたぜ? お前も、意見を通したかったら、勝手みろよ! ハッハッハッハーッ!」
「阿呆のような笑い方。私の先生なら、糞系ゴミ風阿呆天狗って言いそう」
カトレアの言葉に、キレる寸前の天狗君。だが、うちの巨デブ熊さんも、キレる寸前。理由は、あの天狗君が、リオリクス様が言いそうにない言葉を、あたかも事実かのように、言っていたからだ。さらに、首輪を確認しない審判とグリード。もしかして、アイツもクズだったかな? と、一人考えていると、どうやら始まるようだ。
「始め!」
「《アイスバレット》」
と、氷の礫を出していたが、ギンの結界の前には、無意味である。そして、カトレアは普段は、詠唱しているが、無詠唱が出来る娘である。当然、決勝でのお披露目である。
「ぐふっ!」
相手も、魔力纏をしていたため、ストーカー君のようにはならなかったが、かなりの衝撃だったようだ。股間槍は、大活躍である。だが、それだけではなかった。ガルが口を開けると、中から槍を出した。おそらく、マジックホッペから出したのだろう。未だ、身動き出来ずにいる天狗君に、思いっきり突き出した。
「くっ! ズルいぞ! 審判、ルール違反だ!」
「そうですねー……」
と、考える阿呆審判。だが、無視をするカトレア。横槍を入れられる前に、決着をつけたいようで、ギンもカトレアを《絶界》で守りながら、爆撃魔術を舞台いっぱいに、展開していた。そして、発射される魔術。この魔術ですごい点は、一発も当てていないところ。これでは、致命傷にならず、ルール違反にはならない。ただ、爆風で場外に出しただけ。
「審判、場外」
と、短く伝えるカトレア。
「しょ……勝者、カトレア。優勝は、カトレア」
と、宣言したところで、観客の大歓声が轟いた。そもそも、子供の部で致命傷を与えることは、禁止されている。それに準ずる行為も。それなのに、止めない審判と、武器を出しただけで、ルール違反と訴える阿呆と、認める審判。あり得ない。
「ちょっと、確認してきます」
「俺も行く」
「僕もー」
俺は、一人で行こうと思ったのだが、ボムとソモルンも、一緒に行くようだ。そして、探索魔術でグリードを探す。
「これはこれは、グリードさん。あんた死にたいのか?」
「ちょっ……ちょっと待ってくれ! 何があった?」
「はっ? 寝言でも言ってるつもりか? まず、選手の中に、首輪を隠して着けている者がいた。それに、準決勝での王女への攻撃は、魔力纏をしてなかったら、一発喰らっただけで、致命傷。それを連撃。しかも、いたぶるように、ネチネチと。決着が見えているのに、止めない審判。俺の記憶違いじゃなければ、ルール違反だよな? さらに、熊ゴーレムの口から、武器を出しただけで、ルール違反と訴え、認めようとする審判。お前ら、大会やる気があるわけ? ここ、神殿なんだけど、神にこの不正行為を見せていいと、思ってる? さらに、リオリクス様が、勝てば官軍って、言ったそうじゃないか。代々教えにしてるって? 今すぐ連絡とって、確認するか? その前に、プルーム様とセレール様に、殺されるぞ?」
俺は、怒りの限り捲し立てた。そして、下を向くグリード。
「……本当に知らなかった。今まで、神殿内にはいたが、賓客の相手をしていた。まさか、審判が不正をしていたとは……。それに、リオリクス様はそんなことを、言ってはいない。そう言うってことは、あの阿呆の弟子か。本当にすまない。大人の部では、俺が審判をする。もう二度と、不正行為をしない。そして、その選手は不正行為で、退場させる」
「それはいい。いなくなられたら、困るだろ? 神殿での不正行為だ。神罰が落ちないといいな」
俺達はそう言うと、その場を後にした。カトレアが少し、心配になったからだ。そして、やはり絡まれていた。
「卑怯だぞ! あれは、致命傷の攻撃だった。ルール違反だ! 優勝は、僕だ! さっさと、辞退しろ!」
――幻影魔術《変化》――
ボムも再びの、ボルガニス様になり、天狗君を同時に殴った。ボムは、ボムナックル《本気》を、喰らわせていた。この技は、パーではなく、グーである。始めて見た瞬間だった。普段、殴ることがないボムが、本気の右ストレートだった。
目の前の阿呆が、突然消えたことに驚く、カトレアとガル。そして、一番驚いているギン。一瞬、誰? みたいな顔をしていたが、マントの陰から、手を振るソモルンを見て、納得の表情を浮かべていた。
天狗君は、気絶したようだが、俺達は許す気はない。そして、この神殿は俺が建てた。つまり、お仕置き用の隠し部屋も、造っていた。そこに連れて行き、お仕置きをする予定だ。だが、ヴァルーとか呼ばれていた、魔物をどうするか悩む。仕方がないため、調教師にお願いした。
「契約破棄をして欲しいそうだ。あと、帝国にはこのように、首輪をするのが当たり前で、他にも逃げたい子が、山ほどいるそうだ。こんなこと言ってもいいのか分からんが、助けてあげられないだろうか……」
と、悲しそうに言うボム。何故か、ボムは首輪をはめられていたり、強制的に、契約させられたりしている子を、放っておけないらしい。そして俺は、悲しそうにするボムを、放っておけない。
「今回は、その首輪を解析しよう。術式をキーワードにした《転送門》が、蛇の巣を作ったときに成功したから、もしかしたら、同じ首輪をしている子の、同時召喚が可能になると思う。そしたら、まとめて契約破棄が出来るだろ? それまで、もう少しはめててくれ」
「クゥーン」
と、返事をする狼。また、狼の配下が増えたのだった。
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