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第三章 学園国家グラドレイ
閑話 騎士団創設
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「ただいまなのじゃー!」
「えっ? 王女様?」
王都にある辺境伯宅に着くと、王女は王城に帰ることなく、そのまま辺境伯宅の扉をあけた。編入手続きをすれば、国王にバレるというのに、出来れば会いたくないようだ。もちろん、イリス第三王妃も。
今回、ラース宅に居候したことで、どれほどラース達が優しくて、カルラ達家族を大切にしているかが分かった。その大切な家族を傷つけて、平然としている父親が、許せなかったからだ。それに、王城で魔法や魔力纏の修業は出来ない。王女は、うるさい貴族の相手をするのが仕事だと、阿呆国王に言われているからだ。
そして、ここには先生がいる。その先生とは、シュバルツである。彼は、属性纏を修得するまでに至った、王国最強と言っても、過言ではない騎士である。本人は謙遜していたが、ラースからは既に、お墨付きをもらっていた。ボムと組み手をして平気なら、十分強者である、と。
その実力者に習い、実力をつけて冒険をする。これが、王女含むモフリスト共の、新たな目標であった。もちろんラース達にくっついて。そのために、モフリスト共も修業を始めていた。巨デブの熊さんは、一生モフリスト共から、逃げられないのだった。
「王女殿下やイリス第三王妃も、しばらくお世話になるそうよ。仕度をお願いできるかしら?」
ローズが、執事を始め使用人に声を掛けた。彼らは、仕事をするため動き出したが、執事がローズの下へ行き報告をした。
「現在、旦那様はお出迎え出来ません。領地にて、帝国兵が集結し始めているようです。その対応をしているため、書斎にこもられております」
「帝国兵が……? 何故?」
「現在の情報では、詳しく分かりませんが、もしかしたら旦那様も向かわれるかもしれません」
「そう……。では、後ほど詳しく聞きます。まずは、案内をお願いね」
「畏まりました」
そして、案内されるモフリスト共。それと、子熊の群れ。だが、使用人で驚いている者はいない。むしろ、羨ましがっている者が続出していた。自分だけのモフモフ。それを夢見る者は、何も行動派貴族夫人だけではないのだった。
「それにしても、大会の最後の大っきい子も可愛かったわね。モフモフのしがいが、ありそうだったわ。熊さんが、ヤキモチをやいてしまうと思って、出してって言えなかったけど、また会いたいわ」
ローズは、閣下のことも狙っていた。
「でも、熊さんはラースが大好き。ラースも、熊さんが大好き。ヤキモチは仕方がないよ?」
カトレア達は、プルーム様の力で、喧嘩の一部始終を盗み聞きしていた。そして、勝手に感動して大号泣した。だが、だからこそ二人の絆の深さが理解できたし、お互いがかけがえのない存在なのだと理解できた。カトレア自身も、ボムにヤキモチを妬くことがあったため、十分理解できた。
「カトレアは、熊さんにヤキモチを妬いていたのか?」
王女は、カトレアの気持ちを知っていた。それも、早い時期から。もちろん、一番早く気づいたのは、モフリスト筆頭であり、カトレアの母親であるローズだった。ある意味で安心した。モフモフするだけの無能ではないことが、証明されたからだ。
「うん。熊さんだけじゃなく、子熊達にも優しくしてるのに、何で? って何度も思ったよ。ソモルン達にもね。でも、今回優しくされた。とても嬉しかったよ」
女の子らしい、可愛い笑顔で笑うカトレアに、王女含む、見ている者全員が幸せを感じた。そして、再び見たいと思い、そのために絶対にラースの下へ行くことを決意した。
「ではシュバルツは、お留守番なのか?」
王女の発言に、驚くシュバルツ。
「王女の護衛……解任ですか……?」
「そうではなく、その実力に装備じゃと、配置換えになりそうじゃと思ってな。その場合、グリフォンの場所には行けないじゃろ?」
「あっ! ズルいですよ!」
最初は、堅すぎた話し方も、共に修羅場をくぐり、旅をし生活してきただけあって、大分砕けてきた。王女も嬉しそうだった。もちろん、配置換え対策は、ラースに考えてもらっていた。
「冗談じゃ。母様の名の下に、新たな騎士団を創るそうなのじゃ。その騎士団長に、指名するそうじゃ。母様達は、【熊さん親衛隊】を名乗るそうじゃ。そして、子熊達は【子熊騎士団】を結成するそうじゃ。その騎士団長が、シュバルツじゃ。ちなみに、副団長はエルザじゃ。カトレアとガルも、入団予定じゃ。妾は、王女だから保留なのじゃ。仲間はずれなのじゃ」
この意味の分からない案は、モフリスト共のゴリ押しであったが、実力を示していたため、誰も文句を言えないことは、既に分かっていた。武術大会の結果が、王都中に広まっていたためだ。そして、貴族や一部商人は、何とか子熊を入手出来ないかを画策していた。
今、世界は空前の子熊フィーバーだった。そして、武力を示した子熊達による騎士団に、属性纏を修得した上に、【宝剣】に匹敵するであろう武器を持った、王国最強の騎士が団長を務める。王国としては、周辺諸国……特に帝国への対抗戦力として、重要な切り札になるだろう。そして、国外に流出するぐらいなら、騎士団を創設して国に仕えてもらった方が良いと考えた。
だが、ラースは知っていた。それは、叶わないのだと。名前が【熊さん親衛隊】である。国に帰属する気など、微塵もないことを証明していた。そして、何処までもついて来る気だということも、同時に証明していた。
ちなみに、【宝剣】とはダンジョンや遺跡でしか、入手出来ないアーティファクトである。通常の魔剣を遥かに越え、普段聖剣と呼ばれる物は、だいたいが【宝剣】であった。
「ラースが、騎士団長就任の暁には、ぬいぐるみゴーレムの騎乗バージョンを贈ると、言っておったぞ……も、もちろんエルザにもじゃ」
話の最中、すごい勢いで近付いてきたエルザに、急いで答える王女。実際、エルザの分は悩んでいたから、何とかなるだろうと思ってのことだった。
そして、彼女らモフリスト共の、モフモフ愛は尽きない。修業の合間に、熊さん含めたモフモフ愛を語ることが、モフリスト共の習慣になっていた。さらにシュバルツは、師としての素晴らしさを語っていた。ちなみにこの修業には、賢い系真面貴族達の使用人も参加していた。
当然そこには、ラース達が会ったこともない、公爵家や侯爵家も含まれる。だが、ボムでも恐怖するモフリスト共の洗脳によって、次々とモフ堕ちしていったのだった。そして、ラース達の師匠であるプルーム様の教えは、密度が重要だということ。シュバルツやカトレア達も、当然スパルタ教育により、実力を向上させた。その教育方針は、継承されていく。つまり、シュバルツ先生の修業はスパルタだった。
最初はなめていた、初見の使用人達も驚愕し、逃げ出す程だった。ちなみに、逃げた者は追わない。出世は出来ず、閑職に就くか辞職かである。理由は、一応エリート採用で、契約した者達であり、実力も上がらず金食い虫だったため、ふるいも兼ねていたからだ。
そのような数日を過ごした後、やっと書斎から出てきた辺境伯。今までは、食事も仮眠も全て書斎で取っていたため、会うことがなかった。
「あなた、お疲れ様です。向かわれますか?」
「いや……。五千近い兵が集結したのだが、全て消えたそうだ。雷の音が鳴った後、光とともに消えたと、報告があった。帝国の罠かと思い確認すると、敵兵がいた場所には、湖のような物ができ、数人の死体を残し全て消えていたそうだ。そして確認が終わると、地面が戻ったという。いったい何が?」
「まぁ、また助けてくれたのね」
「またとは?」
「ラース君に決まっていますわ。そんなことができ、この時期そこにいそうなのは、彼らしかいませんわ。私達の領地も、守ってくれたのね。それに、カトレアも。カトレアを傷つけた方には、しっかりと消えてもらわなければね。ふっふっふっ♪」
問題が片付いた側から、新たな問題が起こったことに気づく辺境伯だった。だが、一番の問題は、怒りに燃える妻だったことは、言うまでもないだろう。そして後日ギンが、ラースの下から帰ってきた。そのギンから阿呆貴族共が、大蛇の群れのド真ん中に落とされ、罰を喰らったことを聞いた。おかげでローズの怒りは、やっと鎮まるのだった。
ところ変わり、とある島。
「ふっざけるなぁー!」
世界中に響きそうな怒声が飛んだ。この声の主は、自身が預けていた金銀財宝の全てを、失ったことを知り、怒り狂っていた。その場には、他の被害者達もおり、同様に怒り狂っていた。そしてその宝とは、ダンジョン攻略により得た宝だったため、彼らの努力の結晶とも言えた。
そして、失った理由は、【聖獣・ファフニール】の討伐。ファフニールの称号にあった、『宝を守る者』というのは、聖獣の宝を預かる金庫番だということだ。その阿呆の金庫番は、踏まなくていい熊の尾を踏んでしまったため、討伐されてしまった。ついでに、討伐報酬代わりに、財宝を全て奪われてしまった。ちなみに、ファフニールの宝は、一つもなかった。強いて言うなら命だろう。
この場合の聖獣は、ボムのお使いの目的地である、聖獣の聖地である島。そこにいる聖獣のことを指す。そのプライドの塊であり、タマに性格が悪いと言わせる聖獣達が、ついに討伐の事実に気づいた。
そして、盗んだ犯人を探し始めるのだが、引きこもりの聖獣は、誰が探しに行くかを、お互いに押しつけ合っていた。さらに、ここの聖獣は基本的に嫌われているため、大陸にいる者に協力を求めることも出来ない。
その不毛の討論を重ねていたとき、神獣である【煉獄鳥・ガルーダ】が現れた。さらに、聖獣達の誇りである【世界樹】の樹液を、寄こせと言ってきた。宝を失い、正常な判断が出来なかった一部の者達が、ガルーダに楯突き、攻撃を開始した。
結果は見えていた。引きこもりの聖獣達では、擦りもせず全員撃退され、堂々と持ち去られてしまった。一度ならずも二度までも、プライドを傷つけられた聖獣達は、反乱を起こすことに決めたのだった。
「我らの誇りを奪い、誇りを傷つけた者を、許してなるものか! 我ら聖獣がいるからこそ、世界が平和になっているのだ。寝てばかりいる、引きこもりの神獣に、我らが制裁を与えようぞ! そして、我らの宝を奪った者にも。さらに、我らに協力しなかった者達も同様である。諸君、我ととも行こうではないか!」
「「「おぉーーー!」」」
島中に轟く、鬨の声。
だが、彼らは知らない。【獅子王・リオリクス】に同じように思われ、聖獣を制裁するための者が、送られていることを。そして、その実力は既に、準神獣級であること。さらに、聖獣達の財宝所持者だということを。
彼らがその事実を知ったとき、どうするのか分からないが、ボムのお使いは、新たな因縁を交えることになるのだった。
「えっ? 王女様?」
王都にある辺境伯宅に着くと、王女は王城に帰ることなく、そのまま辺境伯宅の扉をあけた。編入手続きをすれば、国王にバレるというのに、出来れば会いたくないようだ。もちろん、イリス第三王妃も。
今回、ラース宅に居候したことで、どれほどラース達が優しくて、カルラ達家族を大切にしているかが分かった。その大切な家族を傷つけて、平然としている父親が、許せなかったからだ。それに、王城で魔法や魔力纏の修業は出来ない。王女は、うるさい貴族の相手をするのが仕事だと、阿呆国王に言われているからだ。
そして、ここには先生がいる。その先生とは、シュバルツである。彼は、属性纏を修得するまでに至った、王国最強と言っても、過言ではない騎士である。本人は謙遜していたが、ラースからは既に、お墨付きをもらっていた。ボムと組み手をして平気なら、十分強者である、と。
その実力者に習い、実力をつけて冒険をする。これが、王女含むモフリスト共の、新たな目標であった。もちろんラース達にくっついて。そのために、モフリスト共も修業を始めていた。巨デブの熊さんは、一生モフリスト共から、逃げられないのだった。
「王女殿下やイリス第三王妃も、しばらくお世話になるそうよ。仕度をお願いできるかしら?」
ローズが、執事を始め使用人に声を掛けた。彼らは、仕事をするため動き出したが、執事がローズの下へ行き報告をした。
「現在、旦那様はお出迎え出来ません。領地にて、帝国兵が集結し始めているようです。その対応をしているため、書斎にこもられております」
「帝国兵が……? 何故?」
「現在の情報では、詳しく分かりませんが、もしかしたら旦那様も向かわれるかもしれません」
「そう……。では、後ほど詳しく聞きます。まずは、案内をお願いね」
「畏まりました」
そして、案内されるモフリスト共。それと、子熊の群れ。だが、使用人で驚いている者はいない。むしろ、羨ましがっている者が続出していた。自分だけのモフモフ。それを夢見る者は、何も行動派貴族夫人だけではないのだった。
「それにしても、大会の最後の大っきい子も可愛かったわね。モフモフのしがいが、ありそうだったわ。熊さんが、ヤキモチをやいてしまうと思って、出してって言えなかったけど、また会いたいわ」
ローズは、閣下のことも狙っていた。
「でも、熊さんはラースが大好き。ラースも、熊さんが大好き。ヤキモチは仕方がないよ?」
カトレア達は、プルーム様の力で、喧嘩の一部始終を盗み聞きしていた。そして、勝手に感動して大号泣した。だが、だからこそ二人の絆の深さが理解できたし、お互いがかけがえのない存在なのだと理解できた。カトレア自身も、ボムにヤキモチを妬くことがあったため、十分理解できた。
「カトレアは、熊さんにヤキモチを妬いていたのか?」
王女は、カトレアの気持ちを知っていた。それも、早い時期から。もちろん、一番早く気づいたのは、モフリスト筆頭であり、カトレアの母親であるローズだった。ある意味で安心した。モフモフするだけの無能ではないことが、証明されたからだ。
「うん。熊さんだけじゃなく、子熊達にも優しくしてるのに、何で? って何度も思ったよ。ソモルン達にもね。でも、今回優しくされた。とても嬉しかったよ」
女の子らしい、可愛い笑顔で笑うカトレアに、王女含む、見ている者全員が幸せを感じた。そして、再び見たいと思い、そのために絶対にラースの下へ行くことを決意した。
「ではシュバルツは、お留守番なのか?」
王女の発言に、驚くシュバルツ。
「王女の護衛……解任ですか……?」
「そうではなく、その実力に装備じゃと、配置換えになりそうじゃと思ってな。その場合、グリフォンの場所には行けないじゃろ?」
「あっ! ズルいですよ!」
最初は、堅すぎた話し方も、共に修羅場をくぐり、旅をし生活してきただけあって、大分砕けてきた。王女も嬉しそうだった。もちろん、配置換え対策は、ラースに考えてもらっていた。
「冗談じゃ。母様の名の下に、新たな騎士団を創るそうなのじゃ。その騎士団長に、指名するそうじゃ。母様達は、【熊さん親衛隊】を名乗るそうじゃ。そして、子熊達は【子熊騎士団】を結成するそうじゃ。その騎士団長が、シュバルツじゃ。ちなみに、副団長はエルザじゃ。カトレアとガルも、入団予定じゃ。妾は、王女だから保留なのじゃ。仲間はずれなのじゃ」
この意味の分からない案は、モフリスト共のゴリ押しであったが、実力を示していたため、誰も文句を言えないことは、既に分かっていた。武術大会の結果が、王都中に広まっていたためだ。そして、貴族や一部商人は、何とか子熊を入手出来ないかを画策していた。
今、世界は空前の子熊フィーバーだった。そして、武力を示した子熊達による騎士団に、属性纏を修得した上に、【宝剣】に匹敵するであろう武器を持った、王国最強の騎士が団長を務める。王国としては、周辺諸国……特に帝国への対抗戦力として、重要な切り札になるだろう。そして、国外に流出するぐらいなら、騎士団を創設して国に仕えてもらった方が良いと考えた。
だが、ラースは知っていた。それは、叶わないのだと。名前が【熊さん親衛隊】である。国に帰属する気など、微塵もないことを証明していた。そして、何処までもついて来る気だということも、同時に証明していた。
ちなみに、【宝剣】とはダンジョンや遺跡でしか、入手出来ないアーティファクトである。通常の魔剣を遥かに越え、普段聖剣と呼ばれる物は、だいたいが【宝剣】であった。
「ラースが、騎士団長就任の暁には、ぬいぐるみゴーレムの騎乗バージョンを贈ると、言っておったぞ……も、もちろんエルザにもじゃ」
話の最中、すごい勢いで近付いてきたエルザに、急いで答える王女。実際、エルザの分は悩んでいたから、何とかなるだろうと思ってのことだった。
そして、彼女らモフリスト共の、モフモフ愛は尽きない。修業の合間に、熊さん含めたモフモフ愛を語ることが、モフリスト共の習慣になっていた。さらにシュバルツは、師としての素晴らしさを語っていた。ちなみにこの修業には、賢い系真面貴族達の使用人も参加していた。
当然そこには、ラース達が会ったこともない、公爵家や侯爵家も含まれる。だが、ボムでも恐怖するモフリスト共の洗脳によって、次々とモフ堕ちしていったのだった。そして、ラース達の師匠であるプルーム様の教えは、密度が重要だということ。シュバルツやカトレア達も、当然スパルタ教育により、実力を向上させた。その教育方針は、継承されていく。つまり、シュバルツ先生の修業はスパルタだった。
最初はなめていた、初見の使用人達も驚愕し、逃げ出す程だった。ちなみに、逃げた者は追わない。出世は出来ず、閑職に就くか辞職かである。理由は、一応エリート採用で、契約した者達であり、実力も上がらず金食い虫だったため、ふるいも兼ねていたからだ。
そのような数日を過ごした後、やっと書斎から出てきた辺境伯。今までは、食事も仮眠も全て書斎で取っていたため、会うことがなかった。
「あなた、お疲れ様です。向かわれますか?」
「いや……。五千近い兵が集結したのだが、全て消えたそうだ。雷の音が鳴った後、光とともに消えたと、報告があった。帝国の罠かと思い確認すると、敵兵がいた場所には、湖のような物ができ、数人の死体を残し全て消えていたそうだ。そして確認が終わると、地面が戻ったという。いったい何が?」
「まぁ、また助けてくれたのね」
「またとは?」
「ラース君に決まっていますわ。そんなことができ、この時期そこにいそうなのは、彼らしかいませんわ。私達の領地も、守ってくれたのね。それに、カトレアも。カトレアを傷つけた方には、しっかりと消えてもらわなければね。ふっふっふっ♪」
問題が片付いた側から、新たな問題が起こったことに気づく辺境伯だった。だが、一番の問題は、怒りに燃える妻だったことは、言うまでもないだろう。そして後日ギンが、ラースの下から帰ってきた。そのギンから阿呆貴族共が、大蛇の群れのド真ん中に落とされ、罰を喰らったことを聞いた。おかげでローズの怒りは、やっと鎮まるのだった。
ところ変わり、とある島。
「ふっざけるなぁー!」
世界中に響きそうな怒声が飛んだ。この声の主は、自身が預けていた金銀財宝の全てを、失ったことを知り、怒り狂っていた。その場には、他の被害者達もおり、同様に怒り狂っていた。そしてその宝とは、ダンジョン攻略により得た宝だったため、彼らの努力の結晶とも言えた。
そして、失った理由は、【聖獣・ファフニール】の討伐。ファフニールの称号にあった、『宝を守る者』というのは、聖獣の宝を預かる金庫番だということだ。その阿呆の金庫番は、踏まなくていい熊の尾を踏んでしまったため、討伐されてしまった。ついでに、討伐報酬代わりに、財宝を全て奪われてしまった。ちなみに、ファフニールの宝は、一つもなかった。強いて言うなら命だろう。
この場合の聖獣は、ボムのお使いの目的地である、聖獣の聖地である島。そこにいる聖獣のことを指す。そのプライドの塊であり、タマに性格が悪いと言わせる聖獣達が、ついに討伐の事実に気づいた。
そして、盗んだ犯人を探し始めるのだが、引きこもりの聖獣は、誰が探しに行くかを、お互いに押しつけ合っていた。さらに、ここの聖獣は基本的に嫌われているため、大陸にいる者に協力を求めることも出来ない。
その不毛の討論を重ねていたとき、神獣である【煉獄鳥・ガルーダ】が現れた。さらに、聖獣達の誇りである【世界樹】の樹液を、寄こせと言ってきた。宝を失い、正常な判断が出来なかった一部の者達が、ガルーダに楯突き、攻撃を開始した。
結果は見えていた。引きこもりの聖獣達では、擦りもせず全員撃退され、堂々と持ち去られてしまった。一度ならずも二度までも、プライドを傷つけられた聖獣達は、反乱を起こすことに決めたのだった。
「我らの誇りを奪い、誇りを傷つけた者を、許してなるものか! 我ら聖獣がいるからこそ、世界が平和になっているのだ。寝てばかりいる、引きこもりの神獣に、我らが制裁を与えようぞ! そして、我らの宝を奪った者にも。さらに、我らに協力しなかった者達も同様である。諸君、我ととも行こうではないか!」
「「「おぉーーー!」」」
島中に轟く、鬨の声。
だが、彼らは知らない。【獅子王・リオリクス】に同じように思われ、聖獣を制裁するための者が、送られていることを。そして、その実力は既に、準神獣級であること。さらに、聖獣達の財宝所持者だということを。
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