暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一

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第二章 冒険、始めます

幕間十三 プチ旅行 前編

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 前回の内容を多少修正しました。
 流れは変わっていないので、再度読まなくても大丈夫だと思います。


 ◆ ◆ ◆


 テオと商会担当者たちを引き連れ、ルークのいる中庭に向かう。
 中庭では子虎を抱きしめる女性陣と、親虎と寝転ぶルークがいた。ルークの顎の下にはいつも通りイムレの姿があり、なんともほのぼのとした空間である。

「ルーク、ちょっと出かけない?」

『……どこにだ?』

「ここから西に行ったところにある宿場町かな」

『えーーーっ』

「おやつの材料があるらしいよ」

『──さっさと行くぞっ』

 イムレを抱きしめて渋っていたルークは、おやつの材料が手に入ると聞いて即座に立ち上がった。

「ディル? 何しに行くの?」

「買い物です」

「ママとは行かないの?」

「ご、後日にゆっくり行きたいんです。今日は下見です」

「そうなのね。ママは楽しみにしてていいのね?」

「もちろんですっ」

「そう。じゃあ良い子で気をつけていってらっしゃい」

「はーい」

「ん?」

「はい、いってきます」

 きっと監視役の精霊をつけられるんだろうなぁ。
 ルークに存在を聞こうにも、おやつで買収されている可能性もある。

『なんぞ?』

「買収されてる?」

『……ん?』

「監視いるよね?」

『いないわけないだろ』

「だよねぇ」

「なぁ、俺も行ったほうがいいのか?」

「あぁ……どっちでも良いよ。商会設立はまだ先だし。でも巨大化したルークの背中で移動するから、思い出づくりにはなるかも」

「それは行くに決まってるだろっ」

「本当ね。私たちも行きたいわ」

 ということで、デッドマン号を出して全員で出かけることに。
 この全員には虎の親子も含まれる。
 特に子虎たちがお留守番を断固拒否したのだ。

「ナァァァァッ」

 特に親虎の背中から落下した一体の子虎に懐かれており、ルークと親虎が止めないと四六時中張り付いてくる。
 可愛くて仕方がないのだが、親虎に窘められて側を離れるときの悲しそうな表情や、しょんぼりしている態度や鳴き声が見ていて辛い。
 しかも女の子だから余計にね。

「じゃあそちらでも馬車を出してもらっていいですか?」

「う、馬は?」

「それはこちらで用意します」

「かしこまりました」

 食堂にいるブルーノさんやエイダンさんにも声を掛け、全員が支度をしている間に馬の準備をする。

「イムレ、コンテナの中にいる蹴撃鳥キックバードを吸収してくれる?」

『イムレ、吸収する』

 蹴撃鳥は五等級の上の魔物で、ダチョウのように陸上を走る鳥だ。階級が低い割に捕獲の難易度が高い、所謂ハズレ魔物である。
 脚力を活かした蹴撃を気をつければ、登録したばかりの冒険者でも討伐可能だ。

 しかし下級の依頼で登場することがほとんどなく、中堅以上になってから初めて知る者も多い。
 何故なら、基本的に騎獣用の捕獲依頼がメインだからだ。

 つまり、イムレに吸収させた理由は、イムレに蹴撃鳥になってもらって馬車を引いてもらおうと考えたわけである。

「イムレ、変身できる?」

『イムレ、変身できる』

 …………なんか違う。

 通常の蹴撃鳥は、草原にいるため茶色っぽい体色をしている。
 見た目はチョ◯ボみたいな感じなのだが、イムレの姿はどちらかというとデブチョ◯ボだ。
 しかも元の体色である至極色をしてしている上、元の蹴撃鳥より大きい。

『どう?』

「可愛い」

『うん。イムレ、可愛い』

「一緒に行こうか」

『うん。行く』

 俺の後ろをノシノシとついてくる可愛いイムレ。
 その様子を口を開けて見守る我が家のモフモフたち。

『お、おい……イムレか……?』

『イムレだよ』

『お前一体で引くのか?』

『そうだよ』

 あぁ、エルフの神秘を使えば連結しても大丈夫そうだ。

『イムレ、可愛い?』

『まぁ……可愛いんじゃないか』

『イムレ、嬉しい』

 短い翼をバサバサ動かして喜びを表現しているイムレ。可愛さが倍増している。

「ディル、そちらの子はだぁれ?」

 支度組が支度を終えて中庭に集まってきたのだが、巨大な鳥の正体がイムレだと気づいていないようだ。

「こちら、イムレです」

「はぁっ!? スライムのっ!?」

「スライムの。元の魔物とはちょっと違うけどね」

「イムレちゃん、かわいいーーーっ」

 普段から仲が良いニアが、巨大鳥の正体がイムレと聞いてすぐに飛びついた。
 全体的にふわふわモフモフの羽毛がニアを包みこむ。

『イムレ、可愛い』

 他の女性陣もイムレを愛で、その間に商会担当者たちが馬車を持ってきた。
 馬を外そうとしているのを止めて、北門で外すように指示する。
 彼らはイムレを見て驚き、デッドマン号を引くテオを見て驚いていた。まだまだ驚くことはあるだろうけど、すぐに順応してくれると嬉しいな。


 ◆


 ポットの外。
 街道から少し離れた位置でルークは巨大化した。

『どうだ? 都市が真っ平らになるところが想像できるのではないか?』

 確かに、ルークの言うとおりだ。
 赤竜よりも大きく立派な体躯は、その場にいるだけで畏怖を抱かせるのに十分な風格を持っている。

「ルーク、ママと約束したでしょう?」

『そうだったかなぁ?』

「……虎ちゃん、嘘をつくような子になっては駄目よ?」

「ナッ」

『ちゃんと覚えておるとも。そこにいる人間が仕事に励めるように叱咤激励しただけだ』

 なるほど。
 商会担当者に対する脅しか。
 いつもの小型化したルークより、今の巨大化したルークの方が真っ平ら宣言に真実味があるからね。

「……全力を尽くさせていただきます」

『うむ。期待しておるぞ』

「じゃあ乗ってください。馬車はその場においといてくれれば、エルフの神秘で運びますので」

「な、何ですって?」

「エルフの神秘です」

「えっと……」

「分かるぞ。こいつがエルフじゃないって言いたいんだろ? でも気にするだけ無駄だから、言う通りにしておけ」

「は、はい」

「じゃあどうぞ」

 ちなみに、イムレはスライムの姿に戻って俺の腕の中にいる。
 珍しく甘えているイムレを可愛がりつつ、ルークの背中への搭乗を促す。

「おい。どうやって?」

「身体強化、使えない?」

「いやぁ……使えるけど……」

「仕方ないなぁ。エルフの神秘ぃぃぃぃっ」

 ──〈魔力掌握〉
 ──【念動:浮遊】

「「「うおっ」」」

 全員をルークの背中に乗せ、馬車とデッドマン号を【念動】で運ぶ。

「皆さま、青獅子航空六二九便、宿場町行きをご利用くださいましてありがとうございます。機長は、私ディルが担当させていただきます。当機はまもなく離陸いたしますので、落下しないようにしっかりと掴まってくださいますようにお願い申し上げます」

「またおかしくなった」

「ディル、どうしたの?」

『ルーク、出発進行っ!』

『うむ』

「テイクオフッ」

「「「うおぉぉぉぉっ」」」

 赤竜航空を利用したナディア親子とテオは少しマシだが、それ以外の人たちは雲の上を走っていくことに感動しているようだった。
 今日はきれいな雲海が広がっており、海を知っているルイーサさんたちは「雲の海ね」と言っていた。

 そして雲の上を通って行くこと数十分。
 目的の宿場町近郊に到着した。

「ディル、どうやって降りるの?」

「前回と同じ、空挺降下です」

「ママは前回を知らないのだけど?」

「母上、魔光貝と同じです」

「…………落下するの?」

「はい」

 仕事前に騒がれると、これからの行動に支障が出るはずだ。
 帰るときなら姿を見られても大丈夫だけど、今はできるだけ姿を隠しておきたい。

「安心してください。エルフの神秘がありますから」

「…………誰よ、あの言葉を教えたのは」

 カミラさんも魔法の言葉がお気に召さないようで、発案者に文句を言いたいようだった。

「ル──じゃなかった。母上です」

「えっ? ルイーサ、本当?」

「えぇ。本当よ。私もこんなに便利使いされるとは思ってなかったの」

「大変助かってます」

「「…………」」

 二人の美人エルフからジト目を向けられるも、華麗にスルーして商会担当者を馬車に押し込んだ。

「他の皆さまはデッドマン号に乗ってください。乗り物ごと降りれば怖くないと思います」

「そんなことはないと思うの」

「さぁ行きますよ」

 有無を言わさず浮遊させ、小さくなったルークを抱いて一緒に地上に着地した。

「ほら、怖くなかったでしょう?」

「「…………」」

 美人エルフから睨まれたが、イムレを巨大化させて視線から逃げる。

「じゃあイムレお願いね」

『イムレ、頑張るっ!』

 馬車の後ろにデッドマン号を連結し、馬車の御者台から出発を指示する。



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