勇者の息子は従魔と神託騎士になる~FPSとMMORPG能力で自由気ままに人助けをします~

暇人太一

文字の大きさ
17 / 30
第一章 神託騎士への転生

第十七話 お土産を心待ちにする

しおりを挟む
「ドラド、さっきはありがとね!」

「いいってことよ!」

「おかげ平和な会談になったよ!」

「そうだな!」

 今もなお、敵意を剥き出しにしている監視要員に聞こえる声量で話す。
 村に来たときから赤い表示だったが、話し合いの後は徐々に赤い光点が増えていっている。あることないこと吹聴しているのだろう。

 自分の目で見たことが全て正しいわけではなく、見ていなくても正しいことはある。
 しかし、すぐ側にいるのだから確認くらいは訪れて、自分の五感や心を使って判断しろよ。人から聞いた話を鵜呑みにして善悪を決めているとか……阿呆か?

 これじゃあ【聖王国】との取引も鵜呑みにしているパターンだな。
 そもそもの話、何もできないと自他ともに認めている王女を一人拘束するよりも、エルフを捕まえて奴隷にした方が大きな利益をもたらすだろう。

 王女の身柄は大義名分作りの建前で、エルフの奴隷を確保するついでくらいに思われていそうだな。俺なら確実にそうする。
 たった一人のために大規模な部隊を派遣するとか、見逃せない行動を取っているか、リスクを超えるリターンを見込めているかしないとやらないだろうよ。

 前者はありえないから、確実に後者だな。

 エルフで村規模だから薄れているけど、やっていることは盗賊と同じだからね。

 こんな人たち助けたくないわーー!

「憂鬱だけど……やることをやらないと」

「偵察をするんだろ? どうやるんだ? 乗り物に乗るのか?」

「乗りません」

「……じゃあどうやるんだ?」

「ドローンを飛ばす」

「なんだそれは」

「今回使うのは、空を飛ぶおもちゃにカメラや武器をくっつけたものかな」

「なぁ! なんと面白そうなおもちゃなんだ! 早く! 早く見せろ!」

 今回はグライダータイプのドローンではなく、空撮や農薬散布に使われる一般的なドローンを使用する。
 グライダータイプはコストがかかるし、所持台数が少ない。しかも修理部品含めて《PX》で購入できないから、墜とされるかもしれない状況では使いたくない。……自業自得かもしれないけど。

 ヘッドセットに同期して視界の端に表示することも可能だが、ドラドも一緒に見たいだろうから手元のコントローラーで映像を確認しよう。

 ――え? 他の二人はいいのかって?

 彼女たちは特別任務をこなしているため、テントの中にはいないのだ。
 教会関係の言葉で表現するなら、『異端審問官』という言葉が適しているかもしれない。懺悔の機会を自ら拒否した者たちに関係する部署で、教会の特殊部隊である。

 逃げることができたなら、そのときは許してあげよう。

「じゃあ飛ばすよ!」

「やらせてくれ!」

「……今日は暗いから無理かな」

「……明るいときならいいんだな?」

「もちろん! 約束だ!」

「……分かった! 我慢する!」

 二脚の椅子を隣り合うように並べて座る。
 手元のコントローラーでドローンを離陸させ、正門の方に向かって飛ばす。
 静音設計で黒塗りのドローンは夜空に溶け込み、静かに偵察行動を開始した。

「すごっ! 飛んだぞ! 鳥じゃないのに! ――もしかして……あの大きいのもあるんじゃないのか!?」

 ヘリのことかな?

「あるよ」

「何ということだっ! 楽しみなことがたくさんだっ!」

「すぐには使えないけどね」

「……なんで?」

 キラキラしていた瞳から光が消えていく。声も低くなっているような気がする。

「ほら、焚き火台のときに言ったでしょ? 【液体魔力】のこと! アレが必要なんだよ! ドラドにもらった分だけじゃあ足りなくて作れないんだ!」

「……材料はどこで手に入るんだ?」

「迷宮か鉱山かな。魔核だけなら魔物から採れるんだけどね。魔石だっけ? それがないんだ」

「【聖王国】の次は魔物だな! 頑張るぞ!」

「頑張ろう!」

 機嫌が良くなったドラドの瞳にキラキラが戻る。おかげで可愛さも戻ってきた。一瞬、猛獣の血が蘇ったのかと思うほどの迫力があったもんな。……うん、養母さんにそっくりだ。

「おっ! 見えてきた!」

「よく見えないぞ!」

「暗視モードだからね。位置と規模が分かればいいかなって思ったんだけど……まさか部隊を分けて行動しているとはね。連携も取れていないし」

「謎だな。でも正門の方が近いから、正門側に防衛陣地を造った方がいいよな。村には他に門はないし、閉じこもっている間に各個撃破していけばいいんだから」

 ドラドの言うとおりなんだけど、なんとなく嫌な感じが拭えないんだよな。
 何かを見落としている気がする。……何だ?

「うーん……まぁこのままじゃあ明日の昼くらいには着きそうだな。陣も張ってないようだし、休憩を取っているだけだったら時間がないか」

「それなら早く準備しないとな!」

「……そうだな。じゃあ片付けしていくか」

「あっ! 留守番がいないもんな!」

「その通り! 泥棒がいないとも限らないからな!」

 俺とドラドは盛り上がった土の上に載っているテントやテーブル、調理器具などの細々している物を《コンテナ》に入れていった。
 そのあと、ドラドが地面をならして元通りだ。

「ちょっと行ってくる!」

「お、おい! どこに!?」

 ポテポテと走ってツリーハウスを目指すドラド。食事の後に「また明日」って言ってたじゃん。

「おーい! おれたちがやっつけてくるからな! 疑っているなら、戦闘が始まったら壁の上から見てみろ! ボッコボコにしていると思うぞ! じゃあ、また明日な!」

「……」

「よしっ! ディエス、行くぞーー!」

「……ドラドって勇者みたいだね」

「そ、そうかな?」

 照れてる……。可愛い。

 ――あれ? 待てよ。そうなると……俺って勇者パーティーにいる聖騎士のポジションになるのでは?

 嫌すぎるぅぅぅぅぅーーー!

 怨敵と同じポジションとか……。
 これから騎士らしくせず治療ばかりしていれば、もしかしたら神官ポジションに転職できるかも……。頑張ろう。

 閑話休題。

「じゃあ簡単に説明するね」

「おう!」

「穴を掘ってその中に隠れられるようにする。穴の上を覆って頑丈にし、相手からの攻撃を受けても大丈夫な盾というか甲羅? を造る。その際、銃眼と呼ばれる穴を開けておく。攻撃するための窓だね」

「ふーん。地魔法でできるな!」

「それじゃあ門の外に出たらよろしく!」

「任せろ!」

 ちなみにドローンは、コントローラーについているGPSに向かって自動で帰還する機能を使っている。
 ゆえに、放って置いても合流できる手はずだ。

「門を開けてもらえますか?」

「夜間の開門は禁止している!」

「話は通っているはずですが?」

「協力しなくてもいいと聞いている!」

「はぁ……。懺悔の機会を与えたのに、つまらん罪を自分で積み上げるとは……。間抜けか?」

「何だとッ!? この野郎ッ!!!」

「もう我慢ならねぇッ!」

 門番二人が殴りかかってきたため、近くにいた方のエルフの右腕を取って無理矢理左を向かせ、勢いがついているもう一人にぶつける。
 横を向いたエルフの脇腹を殴打して退けた後、仲間にぶつかって転倒したエルフの頭を蹴り飛ばす。

 腕を取っている方のエルフを無理矢理引き起こして追撃を行う。
 髪を掴んで顔面に膝蹴りを一発。
 最後に、寝転がっているエルフの上に叩き落として終わりだ。

「二人がかりのくせに弱いな」

「だけど、おかげで門番がいなくなったぞ!」

「それもそうか。門を守れない門番が悪いのであって、無人の門を通った者が悪いわけではないはずだ。――あぁそうそう。諸君、協力感謝する!」

 周囲で指を咥えて見ていただけの者たちにも感謝しておく。

「殴りかかってきてくれて助かった! 正当防衛が成立するからな!」

 ドラドは純粋に門番に感謝しているようだった。素直な子だ。

 感謝の言葉を告げ終わったドラドと協力して無人の門を開けて通り、トーチカを造るのに適している場所を探しながら移動する。
 すると、特別な任務をこなしている別働隊から連絡が来た。

『ディエス、捕まえたけどどうする?』

『俺たちのところに連れてきて。あっ! 分かっていると思うけど、村の外にいるからね!』

『はーい!』『分かったの!』

『よろしくねー!』

 できれば手の内を晒したくはないが、いちゃもんをつけられるのも面倒だから、確認できるように村から比較的近く、【聖王国】の兵士が陣形をとれるくらいに開けた場所。
 さらに狙撃ポイントからカバーができ、敵の陣形に対して横撃できる位置。

「うーん……ここかな」

「サクサク掘るから、見張りよろしく!」

「任せろ!」

 重機はあるけど、音がうるさいし【液体魔力】も使うから使いたくない。
 ドラドの楽しみにしている乗り物が重機だけになってしまうとか……可哀想だろ。魔法で代用できるならば、積極的に節約していかなければ。

「ただいま!」「ギリギリだったの!」

「おかえりーー!」

 なでなでモフモフして労う。同時に俺も癒される。

「ギリギリだったって言ってたけど、なんかあったの?」

「精霊魔術を使っていたみたいで、マップ上の位置と目視の位置が違ったのよね」

「――え? そんなこともできるのか。それで、どっちが合ってたの?」

「マップよ!」

「よかったーー! マップが間違っていたら優位性が低くなるところだった」

「カグヤのおかげだったのよ!」

 何故かモジモジしている。褒められているのに、意を決して何かを言おうとしているみたいな。

「カグヤの《魔眼》のおかげで、魔力で創った幻影だって分かったの!」

「ワ、ワイバーンも……《魔眼》を使ったの……」

「そうだったんだ! 元々狙撃だけで死んだとは思ってなかったから、どうかしたの? ってくらいにしか思ってないんだけど」

「鈍いなぁーー! カグヤは嫌われたくなくて隠してたに決まってるだろ!」

 穴の中から顔を出したドラドが知りたかったことを教えてくれる。

「なるほど! 《魔眼》は俺のいたところでは憧れの能力だから、とっても羨ましいなって思っているんだけど。封印されていると思っている《魔眼》は、一生封印されたままで生涯を終えるんだよ。たまにオーラを視ることができる人もいるけどね」

「「「へぇーー!」」」

 特殊な病気の症状だったから、感心されると心苦しい。

「だから気にしなくていいよ。使える力はドンドン使っていかないとね!」

「うん!」

「じゃあ、二人からのお土産で遊ぼうか」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

処理中です...