勇者の息子は従魔と神託騎士になる~FPSとMMORPG能力で自由気ままに人助けをします~

暇人太一

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第一章 神託騎士への転生

第十八話 情報漏洩の対策をする

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 ドラドに穴の深さを指示して、カグヤの糸でグルグル巻きにされているエルフ男性を縛られたまま木に吊す。

「カグヤの糸は貴重だからしっかり回収しろよ! 強欲なやつがカグヤを狙うきっかけになるからな!」

「そうなのか! 丈夫で綺麗だもんな!」

 ということで糸を回収してロープに変える。万が一汚すことになったら目も当てられないからだ。

「恥ずかしいの」

 可愛い……。我が家の従魔はもれなく全員可愛い。特にモジモジ。

「ディエス、早くやらないと!」

「あっ! そうだったね!」

 未だ気を失っているエルフの腹を殴る。

「――グゥッ!」

「起きたかね?」

「――ッ! ……っ!」

 鋭い視線で睨みつけるも口を塞いでいるせいで声が出せないようだ。
 エルフが起きたところで神スマホのカメラを起動して、録画モードに切り替える。

「こんばんは。夜分遅くに【聖王国】の兵士のところに何しに行ったのですか?」

「……っ! ……!」

「はいはい……なるほどね。殲滅作戦が行われることを伝えに行ったのですね」

 言わずとも分かるだろうが、彼は一言も話していない。
 すでに答えを知っている質問をしているだけで、彼の答えや意見は必要ではないのだ。ただ、『審問をした』という証拠を造っているだけ。

 元日本人だけあって、重箱の隅をつつくような相手を想定した行動を取ってしまうんだよ。
 クレーム対策のために、幼稚園児に向けたような説明を各商品に記すようなものだ。

「ということは、あなたは密偵になるわけですが、それに対しては反論しないと。潔いところは好感を持てますが、エルフのくせにエルフを売り渡して私腹を肥やす豚になったわけですか」

 背中の振動ブレードを抜く。

「――ッ!」

 吊された状態で逃げようと体を揺らすエルフ。

「二足歩行の豚と言えばオークですか? 人生初めてのオークはエルフの皮を被っているようです。まずはその皮を剥ぐことから始めましょうかね?」

 両親から武術を習っていたときに殺気に準ずるものを向けられ、萎縮して動けなくなるようなことにならないようにされた。
 異世界に来て役立っているけど、当時はトラウマになるレベルで怖かった。

 そして今、俺がその恐怖を与えているらしい。

 エルフの股間が濡れ始め、体がガタガタ震えている。

「どうしました? まさか【落ち人】にビビっているんですか? 絶対的な弱者なのでしょ? 誇り高きエルフの戦士に擬態しているんだからビビっちゃダメでしょ!」

 振動ブレードを持ち上げ、一歩一歩ゆっくり近づいていくだけでエルフの瞳から涙が溢れ出した。

「命乞いの機会が欲しいですか?」

 コクコクと必死に頷く。

「一人での行動か命令されたのか。誰に命令されたのか。何を伝えに行こうとしたのか。洗いざらい全て話すことです。そして見たことを全て自分の意志では言わないと、神に誓ってください」

 コクコクと頷いたことを確認してから口のロープを切る。

「はっ……はっ……はっ……」

「時間は有限ですからね?」

「はっ……はい……。村長の命令で聖遺物アーティファクトファクト級の魔具を持っていることと、防衛陣地を築いていることを……報告しに行こうとしました」

「自分で言うのもアレですが……『【落ち人】が魔具を持って敵対するみたいです。敵は四人しかいません』と報告しても、笑われるだけで脅威にならないのでは? むしろ、鴨が葱を背負ってきた状態ではないですか?」

「……アラクネがいますから」

「あぁーー! つまり私たちはおまけで、カグヤが一人で殲滅すると。魔具は自己防衛のために持っているけど、魔力がない私には使えないから、剣にだけ気をつければいいと報告するつもりだったわけですか」

「……その通りです」

 カグヤたちが主力であることは間違いではないけど、魔具だと思われているのは何でだ?

 ――あっ! テーザー弾か!

 被害者が雷撃を受けたとか言ってそうだな。手榴弾や弾丸もそうだけど、破裂したり着弾したりすれば消えるようになっている。薬莢と同じだ。
 テーザー弾も消えて火傷の跡だけが残り、本人が痺れるような気がしたとか言えば、魔具から放たれた雷の魔法と勘違いしてもおかしくない。

 油断してもらいたいからトーチカのことを話されると困るけど、魔具だと勘違いされているのは僥倖かもしれない。

 仮に他の密偵が報告に行ってもトーチカを囮にして地雷を仕掛けたり、偽の情報を報告したと思わせることで離間工作にも使えるのでは?

 うん、無傷で帰してあげよう。

「さて、最後に神に誓ってもらうのですが、私の言葉を復唱してください。そうすれば懺悔をしたあなたの不利にならない方法で誓いを行えます。いいですか?」

「はっ……はい! ありがとうございます!」

「いいえ、当然の権利です。では続いてくださいね。『創造神様に誓いの言葉を。私は今夜のことを、自分の意志で話すことはしないと命に掛けて誓います』。どうぞ」

「そ……創造神様に誓いの言葉を。私は今夜のことを、自分の意志で話すことはしないと命に掛けて誓います」

 ぽわっとエルフ男性の体が光り、宣誓が成立し記録された。

「気をつけてお帰りください」

 木から降ろして縄を解いてあげると、逃げるように村に戻っていった。

「それでどうするんだ? 一応できたけど」

「村の近くで野営して、敵に報告に行くなら行くで罠を仕掛ければいいかな。というか報告って言ってたけど、すでに隷属していたんだな」

「じゃあ、ドラドはどこから攻撃するの?」

「トーチカを放棄する場合は、装甲車から攻撃してもらおうと思っている。植物で偽装してね」

「やったぁぁぁぁぁーーー! 穴掘りを頑張ったかいがあったぞぉーーー!」

「……まだ分からないよ? トーチカを放棄した場合だからね」

「報告に行け……報告に行け……」

 祈るんじゃない……。動かさない装甲車は、ただの金属の塊なのにな。

 トーチカだったら膝を狙いやすいけど、装甲車の銃眼からでは高すぎて狙いにくいと思うんだよね。横なぎにしてもらいたいからな。

「ドラド、まだ穴を掘れる?」

「――んぁ?」

 ずっと念仏を唱えていたけど、ようやく帰ってきてくれたか。

「ま、まだ掘れるぞ!」

「それじゃあ少し変わった感じの穴を二つ掘って欲しいんだけど」

「何でだ?」

「片方はトーチカを放棄した場合に使用する場所で、もう一つは見つかった場合の移動先かな。本当は塹壕で繋げてしまうのがいいんだけど、さすがに大工事になっちゃうからさ」

「乗り物を置いて移動するのか?」

「乗り物を動かして移動するんだよ」

「なっ! 何だって!?」

 初めてスキルを見せたとき並みに驚いている。

「しかも、銃眼の位置が高すぎるから装甲車ごと穴の中に入れたいんだけど、そうすると攻撃ができないか、屋根の上に顔を出すから防御力が低くなるかのどちらかになるんだ。だから、固定装備を車内から遠隔操作してもらおうと思っている」

「う……撃てないのか?」

 一気に絶望の表情になったな。

「違うよ。ちゃんとスロープを造れば大丈夫だから」

 今回ドラドに乗ってもらうのは、「96式装輪装甲車」のB型というものだ。「ブローニングM2重機関銃」という完成度の高い銃で、12.7×99mm NATO弾を使用する。
 威力もさることながら、高い命中精度を誇る。

 直接操作も可能だし、ヘッドセットと同期すれば遠隔操作での攻撃も可能だ。
 狙撃の後、屋根の高さが地面より少し高くなる位置からミニミで攻撃してもらい、気づかれて危険を感じたら車両内に入ってM2重機関銃を遠隔操作する。

 さらに危険を感じたら移動する。その際、俺が遠隔操作で操縦をする予定だ。
 ドラドは銃眼から攻撃してもらえばいいと思っている。次の陣地ではミニミからのスタートで、最終的にはロードキルをぶちかます。

 その頃には人数も減っているだろうしね。

 小銃弾なら防御可能な装甲らしいから、流れ弾が当たっても大丈夫だろう。特に俺が撃ったやつ。

「――という感じなんだけど」

「何でスロープを造るんだ?」

「穴から出入りするためだけど」

「なるほどな! 任せろ!」

 ……彼は忘れているのだろうか。これが予備の作戦だということを。
 ガッカリするところは見たくないから、両方の作戦を使えるように準備しておこう。

 トーチカの入口近くにC4爆弾と遠隔起爆装置のセットを取り出して設置していく。

 出て行くときにスイッチを入れて行けば、手元のコントローラーで好きなときに起爆できるのだ。

 敵兵ホイホイにやってきたところをまとめて吹っ飛ばしてあげよう。
 ついでに森に入られたり逃げられたりしたときのために、「M18 クレイモア地雷」を等間隔に設置していく。

 森に入ったら遠隔操作で順次起爆させて逃走を阻止する。死体の損傷が激しくなりそうだが、殲滅を優先するためだ。
 あとは前後に逃げた者を処理すれば逃亡を阻止できるだろう。

 待ち伏せができ、情報漏洩の対策ができれば怖いものなどない……はず。
 
 ドラドもやる気に満ち溢れているおかげで、サクサクと穴を掘っている。それをティエラが魔法で隠していく。
 逆にトーチカの方は、魔力の残滓を分かりにくいレベルでわざと残したそうだ。俺には何にも感じられないが、「何か隠しているんじゃないか?」と思わせる程度が良い塩梅なんだとか。

 その後は村の近くにテントを張って朝まで熟睡した。
 報告に行ったかどうかの確認は、トーチカの近くの木に設置してきたドローンで確認する予定だ。

 早速ドローンを帰還させようと体を動かすと、今日も今日とてモフモフの虎さんが体の半分にのしかかっていた。

 うん、起こしてあげよう。

 フワフワ……ムニムニ……。お腹が柔らかい。

「……おはよう」

「……何してる?」

「起こしていたんだよ」

「そうか。……おはよう」

 もう! ツンデレさんは可愛いなぁ!

 ドローンを帰還させている間にティエラとカグヤを起こし、食事を含む朝の準備をしていく。
 昨日は時間がなかったということで、今日はハムエッグだった。ドラドは「すまんな」と言っていたけど、十分美味しかったから満足している。

「さて、ドローンにはエルフの姿が映っていたぞ! ということは……」

「報告に行ったってことだな!」

 開戦前に一度罠の確認と起動に行かなければ。

「じゃあ、あのエルフは死んだのかしら?」

「生きていると思うよ」

「え? 神様に誓っていただろ?」

「言わされたなら罰は受けないよ。まぁその場合は村長を糾弾できる材料が手に入るわけだけど。死んだ場合も、エルフは宣誓を無視する種族だと証明することになるから損はないな。俺は助かるように宣誓させたんだから、死んだ場合はオラクルナイトの慈悲を無碍にしたことになるしね」

「せ……性格悪いぞ……」

「失礼な! 敵に対しては容赦するなという両親の言葉に従っているだけだよ!」

「ふーん……」

 ジト目で相槌を打つドラドから逃げるようにして戦闘準備に移る。

「じゃあ浄化しに行こうか!」

「「「おぉーーー!!!」」」

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