勇者の息子は従魔と神託騎士になる~FPSとMMORPG能力で自由気ままに人助けをします~

暇人太一

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第一章 神託騎士への転生

第十九話 兵士を蹂躙し殲滅する

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 テントを片付けてトーチカまで行くと、人が入ったことが分かる痕跡が残されていた。
 エルフがトーチカ内に入り、詳細を【聖王国】側に報告したのだろう。

 そろそろ斥候くらいは放っていてもおかしくないから、マップの設定を変更しよう。

 マップはデフォルトで、自分が通った半径二〇〇m以内を自動探索して表示するようになっている。もちろん、ドローンからの情報や地図などの情報を反映することもできる。
 さらにオプションを追加することで、縮小拡大の上限を上げられる。

 デフォルトの上限は二〇〇mから一,〇〇〇mだが、オプションを全て購入した俺は、五〇mから五,〇〇〇mだ。

 必要かどうかは別にして、備えあれば憂いなしという思いで最大にしてみた。
 一応ゲーム内では、拡大することで遺跡内の隠し部屋を見つけたり罠の種類が分かったりと、鑑定に似た副次的な能力があったが。
 まぁ自動探索の範囲は変わらないけどね。

 今回は二,〇〇〇mに設定しておく。

 すると、やはり斥候の姿が確認できた。人数とカグヤの存在を確認して、情報が正確かどうかを判断しているのだろう。

 斥候が戻ったことを確認した後にC4爆弾を起動して、隠してある方の穴の一つに96式装輪装甲車を出す。

「おぉーーー!!!」

「うわぁーーー!!!」

「すごぉぉぉい!!!」

 興奮状態のドラドを始め、ティエラもカグヤも興味津々だ。

「狙撃は別の場所からお願いね」

「任せろ!」

「ドラドがミニミを撃ち始めたらエンジンをかけるから、驚いて攻撃をやめないでね。できれば動かしたくはないからさ」

「分かった!」

 あらかじめドラドのヘッドセットとM2重機関銃を同期してあるから、コントローラーを握れば操作方法が分かると説明しておいた。

 次は狙撃チームだ。

「二人は見つからないように少しずつポイントを変えてね。馬に乗っているやつから攻撃していってくれればいいからさ」

「分かったわ! わたしはカグヤの護衛ね?」

「その通り! あと対人地雷のリモコンを渡しておくから、敵が森に逃げ込みそうだったら爆破して。マップ上に黄色の数字があるんだけど、それと同じスイッチを押してくれればいいからね。トーチカの方は爆弾マークだから気にしなくていいからね!」

「――任せてちょうだい!」

 ティエラも嬉しそうだ。活躍の場を用意してあげられて良かった。
 いつもは縁の下の力持ち的な役割が多いからね。

「カグヤも頑張るーー!」

「お願いね」

 なでなでモフモフしているところにドラドから質問がとんできた。

「ディエスは?」

「俺は後方にくっついている馬車の処理かな。輜重部隊らしいんだけど、死体を詰める棺桶にしようと思ってるんだ」

 視覚情報支援機能の一つである《望遠モード》を使って斥候が戻った方向を確認したときに、彼らの棺桶を偶然見つけてしまったのだ。

「じゃあ馬に気を遣うことなく殲滅できるな!」

「その通り! それじゃあ各自配置について。そろそろ来るみたいだよ」

 マップには大量の赤い光点が表示されており、縮小しているせいで大きな赤い光点に見えなくもない。
 逃亡者の発見と別部隊の監視のために拡大できないから仕方がないが、すごく見づらい。だから、拡大したマップでの殲滅はみんなに任せて、俺は撃ち漏れた者を追撃していく役に徹しよう。
 幸いなことに、灰色の中の赤い光点を狙うという簡単な仕事だ。頑張ろう!

 そろそろ射程範囲内だが、ドラドの使うVSSの射程を考えると四〇〇m以内からの銃撃が望ましいな。

 狙撃大会には俺も参加する予定だから、近いのは助かるかも。カグヤみたいに狙撃の天才じゃないからね。

 まずは指揮官を処理し、次は魔法部隊を処理しよう。後回しにするほど面倒になる戦力らしい。
 特に物理障壁だ。
 ティエラ曰く、魔具だと勘違いしてくれる間は使用されることはないらしいが、物理攻撃だと気づかれたら面倒なことになるらしい。
 一応対応策はあるが、【液体魔力】の関係で使いたくないのだ。
 よって、真っ先に相手をしてあげようと思う。感謝したまえ!

 魔法がなければ金属と金属の戦いになるはず。特殊なスキル持ちか魔具さえなければ、金属を着て金属の武器を振るう有象無象だ。
 最悪の場合は、M2重機関銃を使ってミンチにしてくれるわ!

 ちなみに、特殊なスキルや魔具のどちらも指揮官クラスか側近が持っているだろうから、指揮官の処理も最重要任務なのだ。

『天界ツアーに申し込んだ団体さんが到着したみたいだよ。ご丁寧にトーチカの方向を向いて整列してくれているから、俺たちもたっぷりともてなしてあげようじゃないか』

  開けているといっても他よりはという程度にしか広くない場所に、一個中隊ほどの兵士が整列している。
 圧力をかけているつもりなのだろうが、隣の人との距離が近すぎて動きづらそうだ。「あなた方はその距離感で戦えるんですか?」と聞きたい。

 カグヤが成体じゃないと思って油断しているのかな?
 だとしたら、致命的な勘違いだったと後悔することになるだろう。

 何故なら、我が家のモフモフたちはやる気に満ち溢れているからだ。

『心を込めてもてなすぞ!』

『涙を流させてあげるわ!』

『笑顔も見たいね!』

 ほらね?

『それじゃあ――戦闘開始!』

 直後、豪華なフルプレートアーマーを着込んだデブの頭が吹き飛んだ。体は馬からずり落ち、従僕らしき男の上に落下した。

 俺も樹上からHK417を構えて、騎乗している者の頭を狙って撃っていく。

 パシュッ! と可能な限り小さくされた音を鳴らしながら発射された弾丸は、人間の頭や首を貫いていく。

「ど……どこから攻撃を受けているッ!?」

「密集陣形を取れ! 頭を低く――」

 すでに密集してるじゃん。それに、指示を出すヤツから天界に行くことになるんだよ?

「盾で――」

 ここでようやく敵兵も気づく。馬に乗っている者か指示を出している者から攻撃されていることに。

 急いで馬から降りようとしている者もいるが、周囲の人間が阻んでいる。
 醜い行動だが、指揮官が狙いだった場合は生き残れるかもしれないからだ。それに囮になってもらっている間に対策を練れるからな。

 ――させないけど。

「魔具なのだろ!? 魔法障壁を張れ!」

 やった! ティエラが言っていた通りの展開になった!

 つまり蹂躙のチャンスだ。 

 予想を立ててくれたティエラ、情報を漏らしてくれたエルフさん、どうもありがとう。楽ができます!

『魔法障壁を張った者が魔法部隊だから、最優先で攻撃していって!』

 HK45Tにつけたレーザー照準器で標的を共有していき、残しておくと厄介な魔法部隊を一掃する。
 俺もレーザー照準器で指示した後は再び狙撃に参加していく。

『任せろ!』

『分かったの!』

 疎らに撃っていたが、狙撃対象を絞ったことで天界への渡航手続きが一気に加速した。
 それにしても、騎士や兵士よりも金属部分が少ないが、特殊な装備をしているのか一撃で死なない者が少なくない。

 でも死なないだけで、攻撃による衝撃波受けているようだ。頭に被弾した者はもれなく倒れ込んでいる。
 倒れただけの者には追撃で数発撃ち込んでトドメを刺す。復活なんかさせない。

「なっ……何故だっ!?」

「もしやエルフが嘘を言ったのでは……!?」

「ま……魔法部隊が全滅します!」

「ではどうしろと――」

「うわぁっ――」

 最後の魔法部隊員を処理すると障壁が消えた。

「死体を外側に――」

 酷いことをする。死体蹴りに加え、戦場で余計な行動は命取りだというのに……。
 しかも自分は人に隠れて頭を隠して指示を出す始末。……別に頭を狙う必要はないんだよ? ただ、綺麗な状態で処理すれば片付けが楽になるかなと思っただけなんだよ。

「あ……穴だ! あの穴から攻撃をすると言っていただろ!」

『トーチカに近づいたら爆破する。そしたらドラドは装甲車に戻ってミニミの準備をしてくれ! 俺は馬車が逃げないようにしてくる! カグヤたちはドラドのフォローと地雷をお願いね!』

 爆破と同時にエンジンを始動させれば、うなり声のような音も誤魔化せるだろう。

『了解だ!』

『わたしたちも移動するわ!』

『気をつけて行ってきてね!』

『ありがとね! それじゃあ、よーい――起爆!』

 ドンッ! と爆発し、亀の甲羅のように人員を守る壁が爆砕した。
 爆発による被害はもちろん、飛んできた瓦礫による被害もあり、【聖王国】の兵士は恐慌状態に陥っていた。

 一個中隊二百人ほどの兵士のうち、すでに三割ほど減っているようだ。
 生き残っている人員は【絶界の森】に来れるほどの実力者だろうが、指示を出すことに不慣れなのか叫び声しか聞こえない。

 それともビビっているせいで黙っているのか?

「盾……盾だ!」

「密集して」

「頭を下げて」

「盾を掲げろ!」

 なるほど。的を絞らせないように複数人で指示を出すことにしたのか。

『ドラド、密集したらボーナスステージだぞ。ド真ん中の足元を狙って撃ちまくれ!』

『最高だな!』

 こうなることも予想して頭ばかりを狙っていたのだよ。足元をあけてくれて感謝感激雨霰。

「俺も行くか」

 今日ばかりはあの目立つ外套ではなく、森に紛れるような迷彩柄のフード付きの外套羽織っている。

 白い髪も隠す必要があったからだけど、振動ブレードが抜きにくい。
 もういっそのこと最初から抜いていこう。首を飛ばせば音がどうのとかは気にしなくていいし、左手で持てばHK45Tを右手で使えるしね。

『おれの時代、到来――!』

 ダダダダダダッ! とミニミをぶちかますハイテンションのドラド。
 反対に攻撃を受けている側は、足を削られていき次々に転倒。盾の重さに堪えられず、痛みに打ち震えて周囲を巻き込んでいく。
 中には鎧を脱ぎ捨て、這って逃げようとする者まで。……逃げられるはずもないのにね。

 横目に確認すると、そこはもう地獄の底のようだった。
 阿鼻叫喚の様相を呈しており、命乞いの言葉も聞こえ始める始末だ。

『盾が邪魔で狙撃できないの』

 ドラドから遠い位置にいる者や密集陣形の中央にいる者は、同僚を肉壁にして頭上を死守しているようだ。
 そのせいでカグヤの射線が通らなくなった。

『ティエラ、グレネードで盾を壊してあげるといいよ』

『なるほどね』

 ダネルMGLから発射される40mm擲弾で盾を破壊すれば射線が通るし、ドラドの攻撃をやり過ごしている者たちにも危機感を煽ることができる。

 今の場所は安全ではないと思わせられれば、肉壁シェルターから引っ張り出せることができたも同然だ。

 さてさて、輜重部隊も異変に気づいているだろうから急がないと。

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