勇者の息子は従魔と神託騎士になる~FPSとMMORPG能力で自由気ままに人助けをします~

暇人太一

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第一章 神託騎士への転生

第二十三話 兵士にギフトを贈る

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 目の前には二人の兵士がロープで拘束されて横たわっている。

 彼らは俺たちがいる方向に来た斥候で、《ガレージ》に車両をしまって隠れようとしたところで鉢合わせてしまったのだ。

 ただ、運がいいことに【落ち人】だと馬鹿にしてくれたおかげで、応援を呼ばれることはなかった。

「どうするんだ?」

「帰してあげるよ。すぐにじゃないけど」

「……そのままか?」

 胡乱げな視線を向けてくるけど、ドラドの中の俺はいったいどれほど性格が悪いのか。

「……ずっと欲しがっていた魔具をプレゼントしてあげるつもりだよ」

「いいのか!?」

「うん。パー・プーさんの部下にもプレゼントする予定だからね!」

 まぁ希望するものと同じかどうかは知らないし、後半戦の部隊は銃のことを知らないだろうから、欲しがっているかどうかは知らない。

「じゃあ拘束は手足だけにして」

「……何でだ?」

「まぁいいからいいから!」

 彼らには魔具付きの服をプレゼントする。
 《PX》で腕を通さなくてもいいことからエプロンを選択し、比較的丈夫な生地で作られたものを選んで購入した。
 エプロンにはC4爆弾を取りつけ、斥候に着させて脱げないように粘着テープで体に固定する。

「……やっぱり」

 ドラドに追及されないように斥候の二人に話し掛けた。

「……斥候のお二人さん、こちらは迷宮産の魔具と同等のものです。しかし、選ばれた存在しか使うことは許されません。なるべく多くの兵士に見せて魔具が選んでくれる人物を捜してください。それと、無理矢理外そうとすると呪われるそうですので気をつけてください。……残念ながら私は選ばれませんでしたので」

 多くの兵士を巻き込んで爆死してくれ。手間が省けるからな。
 選ばれた人たちは先に天界ツアーに行けるからさ。

「俺たちが出発したら放してあげて。ティエラたちは場所を変えてね!」

「分かったわ!」

「気をつけてね!」

「もちろん! じゃあいつものアレをよろしく!」

 斥候の目を塞ぎ、魔法をかけてもらう。
 ティエラの魔法が成功したようで、毛皮の存在が薄く感じる。どうやら成功したようだ。
 手にはHK45Tを持ち、ドラドと一緒に子羊マークがある場所に行く。

 どうやら前日に野営した場所らしく、簡単な防護柵が設置されたり天幕が張られたりしていた。
 だから暗くなるギリギリまで森の中を進んでいたのか。

 さすがに門はないようで、魔法がかかっている俺たちはすんなりと通り抜け、王女がいる一番大きな天幕まで簡単に近づけた。
 予想通り兵士達は油断しており、一箇所に集まって大宴会を行っていたのだ。

 まるで蛮族か盗賊のようである。

「それにしてもいい女でしたね! 俺たちの慰労に使っちゃダメなんですか?」

「陛下が無傷で連れて来いとさ。まぁ飽きたら下賜してくれるだろ」

「いや、飽きないでしょ!?」

 などなど……。
 君らは二度と故郷の土を踏めないから、下賜がどうのと気にする必要はないのだよ。

 ドラドは不愉快そうな表情をしていたけど、俺は不憫な彼らを思うと怒りも引っ込んだ。

 最後の晩餐を心行くまで楽しんでくれたまえ。

 最後の晩餐を邪魔してはいけないと思い、ドラドを引っ張って天幕に向かう。

「……少しならいいだろう。お主もそう思うよな?」

「……エルフの村に手を出さないのならな」

「おぉーー! 聡明な女性は好きだよ! お主も大きくてたくましい男が好きだろぉぉぉ?」

 何やらおかしな会話をしているが、天幕内の人数は二人で、気が逸れているというまたとないチャンス。逃してなるものか……。
 ドラドにジェスチャーで指示して、天幕の繋ぎ目から手を入れて男の頭に照準を合わせる。

「……私は――」

「俺は嫌いだよ」

 男の質問に対する答えと同じタイミングで、引き金を二度引いた。

 先に決めていた通り、話し掛けたタイミングでドラドが天幕に入り、転倒する男を掴んでゆっくりと寝かせた。
 物音を立てては潜入が無意味になるからね。

「迎えに来ましたよ。そろそろ斥候も帰ってくるだろうから、急いでここを出ますよ」

 振動ブレードを取り出して鎖を切断し、パー・プーさんが持っていた鍵で首輪を外す。

「……私が戻れば……村が……」

「申し訳ありませんが、あなたの意志は無視します。あなたを助けるとは言いましたが、エルフを助けるとは言っていません。あなたが無事で村にいる間は害さないように配慮していましたが、あなたを手放し、助けようとした者を廃墟街の住人に売り渡した。……助ける価値もないクズ共には救いの手は届かないのです。では、失礼して」

 捲し立てるように説明したあと、一応一言断って荷物担ぎのように肩に乗せた。
 右手はHK45Tを使うためにあけておきたいからね。

 マップを見て、一度HK45Tをホルダーに戻す。

「ドラド、プレゼントを開封するけど……盾を用意したいから、スイッチを押してくれない?」

「――いいのか!?」

 一瞬だけ相手に同情するような視線をしていたけど、すぐに好奇心旺盛なドラドらしさが顔を出した。

「もちろんだよ! 俺がお願いしているんだからさ!」

 使い方を教えて魔法円盾を最大出力で展開する。
 ドラドも盾の内側に入り、準備万端でそのときを待つ。

「――降ろせッ!」

 爆破直前になってやっと状況を把握したのか、降ろすように抗議してきた。きっと恥ずかしがっているのだろう。
 ボディーアーマーのせいで、柔らかさがほとんど感じられないから気にしなくていいのに……。
 降ろすつもりはないから、王女を無視してドラドに起爆の合図を出す。

「ドラド!」

「任せろ! ポチッとな!」

 雷が落ちたような轟音が二度鳴り響き、爆風によって天幕が吹き飛んだ。
 俺たちは、あらかじめ魔法円盾を最大出力で展開していたおかげで無事である。まぁ盾の【液体魔力】は空になったけどね。あとで補充しよう。

 爆心地付近には赤い光点はなく、死亡判定の灰色の光点になっている。
 果たして、なくなっているのは赤い光点だけなのか……。見に行きたくない……。

 とにかく、この爆破の混乱に乗じてティエラとカグヤがいる場所に向かう。もちろん、途中でエルフの女性を助け出しながらね。
 カグヤは真っ先に見張りを始末してくれたらしく、比較的簡単に帰還できた。爆音に驚いた王女が気絶してくれたせいもあるだろうけど。

 一応三人を木の陰に隠し、王女は天幕から持ってきた毛布で簀巻きにして寝かせておく。起きて暴れられても面倒だからだ。

「ドラド、ミニミを使ってね!」

「任せろ!」

 俺はHK417からP90に戻した。大宴会をしていたせいで防具を着けていない者がほとんどだし、取り回しの良さと弾数を優先したからだ。

 ティエラは俺たちが帰還したことを確認したあと、赤い光点が固まっているところを狙ってグレネードの雨を降らせていた。
 シュポッシュポッシュポッと小気味良い音を鳴らし、直後、爆破音と悲鳴が聞こえて来る。
 ドラドは爆撃から逃れた者たちの中でも赤い光点が多く残っているところを選んで、防護柵の隙間から攻撃し始めた。
 死亡確認は後回しで、とりあえず当てることを優先しているようだ。当てさえすればトドメ大会の標的になるだけだしね。
 カグヤは疎らに行動して逃亡を図ろうとしている者を確実に狙撃していき、樹上の死神となっていた。

 正直な話し、俺の仕事がない。

 たまに流れてくる逃亡者を待ち伏せしているだけだ。もうすぐ終わりそうだけど、前半戦と比べると弱すぎる。
 装備のせいか、油断のせいか……。

 C4爆弾のせいかもな……。

 暇だから一人でトドメ大会を開催しよう。
 苦しまないように介錯してあげるのも神官の大事な役目だからな。

 前半戦部隊と、ワイバーン記念日に相手をした部隊を合わせれば一個大隊規模になるだろうか。
 たった一人のためにご苦労なこった。

 うーん……一個大隊と物資および装備の消失か。どれほどの損失になるか考えたくもない。『聖騎士』が悔しがる顔が見れないのは残念だ。

 神スマホに頼んだら表示してくれないかな。『ファンタジー・ゴッド・タレント』の初代優勝者になるだろう。
 オラクルナイトとして、名物審査員になってあげてもいいよ? 神に捧げる神事にすれば、遊戯の神であるサイコパス神も喜びそうだ。

 ――と、勝手にざまぁ展開を想像しながら介錯を続けている間に、殲滅作戦が無事に終了した。
 一応縮小上限の半径五,〇〇〇mまで表示するように設定を変更し、エルフの村以外に敵性反応も不審人物の反応もなかった。

 え? 【絶界の森】という魔境なのに魔物を気にしないのかって?

 ドラドがゴブリンに突撃するもんだから、残っていたオプション枠を使い、魔物や魔獣の反応は紫色にしたのだ。
 虫や動物との違いは体内にある魔力量で、一定量を超えた場合は紫色に表示されるらしい。

 設定するときに裏設定として書かれていた。

 だから、虫や野生動物は基本的に白色で表示されるけど、攻撃態勢に入れば赤色に変化する。
 魔物は基本的に危険な生物だから、周囲にいるときは警戒態勢が基本だ。赤色にする必要がない。ゆえに、紫色にした。

 多少分かりにくい色だけど、存在が分かるだけで十分だからね。
 使いにくい色を消費できてよかった。

 さて、気にしないのかということだが、すっごい気にしている。

 エルフの村は精霊で隠しているのだろうか、ポッカリと空白ができるほど魔物の反応がない。
 しかしひとたび村を離れると、そこは魔物の巣窟だったのだ。紫、紫、紫……。嫌になるほど紫色の光点がマップ上に表示されている。

 上限いっぱいまで縮小しているせいで、紫色の光点がギュッとなっていて隙間がない。

 では何故無事なのか。

 ひとえにカグヤのおかげであったりする。
 確実にカグヤを避けている。
 まだまだ外縁の部分だが、【絶界の森】という世界有数の魔境に棲んでいる魔物が避けているのだ。

 我らが天使は可愛いだけの雑魚天使ではなく、可愛さを兼ね備えた守護天使だったのだ。
 良きかな良きかな。

 カグヤに感謝して森を移動しなければいけないなと改めて思うのだった。

 ◇

「おい! 一人でトドメ大会はズルいぞ!」

「だって暇だったんだもん」

「おれも暇になったぞ!」

「大丈夫だよ! まだ片付けがあるから!」

「……またか」

「大丈夫だよ! 今回は装備を着けてない者が多いから、テントや馬車から回収するだけだよ! 死体も状態がいいものだけ馬車に載せて、あとは天幕とかと一緒に燃やして埋めていく」

「……まだ楽だな。あとアレは? 油樽の細工!」

「やるに決まってるじゃん!」

「……爆弾、好きなんだな」

 失礼なっ! 人を爆弾魔と一緒にするとは……!

「御褒美もあるからさ! 頑張って!」

「……何だ!?」

「それはお楽しみで!」

「気になるなーー!」

 王女をティエラたちに任せ、テンションの上がったドラドと一緒に二回目の後片付けをしていくのだった。

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