うさぎの楽器やさん

銀色月

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<うさぎの楽器やさん>のお話

6 ピアノ・トリオ

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ニノくんが、お店の仕事に慣れた頃、
うさぎの楽器やさんは、ニノくんに、お店番をまかせて、
しばらく、出かけたことがありました。


森を出て、街へ行ったのです。

街の大きな楽器やさんに行って、
演奏家と連絡を取ってもらい、
コンサートをひらく約束をしてきたのです。

ピアノ・トリオがどんな演奏家なのか、
ニノくんが知ったのは、
うさぎの楽器やさんが描いた、コンサートのポスターが出来上がったときでした。

ポスターの絵の中で、
黒いネコのバイオリン弾きと、
ブチのネコのチェロ弾きと、
ちょっと毛あしの長いネコがピアノを弾いていました。

そして、
「ピアノ・トリオ<キングダム>初来森!
チケットのお求めは、うさぎの楽器やさんへ」と書かれてありました。

うさぎの楽器やさんは、この、<キングダム>の大ファンで、
<キングダム>の演奏をレコーダーで録音したものを、よく聴いていました。

森の動物たちにも、<キングダム>の演奏を聴かせたいというのは本当ですが、
いちばん聴きたがっているのは、うさぎの楽器やさんなのです。


「<キングダム>は、ね、人気があって、
いろんな街や、森から、呼ばれているんだ。
だから、忙しくてダメだと思ったけれど、
街の楽器やさんに知りあいがいてね、
きいてみたら、なんと、来てくれることに、なったのさ。
ああ、ほんとうに、
もう、夢みたい!」

うさぎの楽器やさんは、ポスターを見ているニノくんに、言いました。

そして、その後、オリーブのお店の、
1番目立つところに、ポスターを貼りに行きました。

すると、ポスターを見たお客さんが、
すぐにお店にやってきましたよ!

「<キングダム>だって⁉︎すごいじゃないか!」
お客さんは、1番いい席に座れるチケットを買いました。

ニノくんは、それから、お店が終わるまで、
次から次に来るお客さんに、チケットを売り続けました。

チケットは、次の日の夕方には、売り切れてしまいました。


うさぎの楽器やさんは、森のオーケストラの練習が、終わってから、
森の広場で、コンサートの会場づくりをしました。

席を増やして、もっとお客さんが座れるようにするのです。

「追加のチケットを売ろう。
<キングダム>の演奏は、会場を広くしても、大丈夫。
迫力があって、音がちゃんと届くからね!」
    
うさぎの楽器やさんは、自分のことのように、得意になっていいました。
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