うさぎの楽器やさん

銀色月

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<やまねこのふえ>のお話

50 こがね色の道 その1

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 「ここだ。」
と、うさぎの楽器やさんは、オルガンの裏側にあるペダルを踏み始めます。

3回ペダルを踏んだところで、
リンがオルガンを弾き始めました。
オルガンの和音が、距離を縮めるようにフェードインして、
ふえのデュオに合流してゆきます。



うさぎの楽器やさんは、ペダルを踏み続けながら、ワクワクして聴いていました。

ランの技巧の、すごいこと、すごいこと。
…はー、
外国の森の交響楽団で磨かれてる。
大切に育ててもらっているんだな。
なんとも、ありがたいことだ。

リンは、バランスをよくわかってる。
加減が絶妙なんだよ。
やっぱり、リンは楽器やに向いてるな。

ニノくんの音は、いいな。
なんだろうな、理屈じゃないんだよな。
ランの音と、好みが分かれるかもしれないが、オレは、ニノくんの音が好きだ。
…もしかしたら、あのふえも、そうなのかな。そんな風に思っているのかな。
だとしたら、オレと同じだな。

 …同じ?

 ああ、そうか。

うさぎの楽器やさんは、ふえの気持ちがわかった気がしました。
 


オルガンの和音が、こがね色の道をつくり出します。

ランは、ニノくんの意識を連れて、
オルガンの和音が敷いている道を進んでいます。

ニノくんは、ランにすべてを預けました。
心もからだも。
この道を通って、ランが、きっと見たこともない所に連れていってくれるのだと、わかっているのです。

 行ってみたい!

 見てみたい!

 この音楽は、一度しかないのだから。

 ああ、ありがとう。
 ぼくは、ふえを吹いていて、良かった。


ランの後ろ姿を追いかけながら、
ニノくんは、こがね色の道を進んでいきました。
 


オルガンの和音は、ニノくんの意識とふえの間にも入りこんでいて、
まるで、薄いカーテンを引いたように、
ふえからニノくんを隠しました。

2ndが1stへ語りかけるための空間を、作り出したのです。



『やあ、ごきげんは、どう?』
 2ndが、1stに話しかけます。

『もう、君の入るスキマはないよ。
ぼくは、ニノくんになった。
ニノくんは、ぼくになった。』
1stは、つまらない問いには答えないというように、おだやかに言いました。

『そうだね。』
2ndも、おだやかに言いました。

『ぼくたち楽器は、時間によって成長するけど、持ち主によっても、成長する。

きみは、いいパートナーとめぐりあったんだよね。』

『そうだ。ニノくんは、最高のパートナーだ。でも、もう、ぼくだ。

ぼくがニノくんになったから。』


2ndは、1stの言い分をのみこんで、ふたたび問いかけました。
『うん、
でも、ぼくたち楽器は、持ち主には、なれないだろ?
持ち主は、命に限りがある。
持ち主は、交代して、変わっていくんだ。』  

『…』

『ニノくんは、いつか居なくなる。』

『…』

『ニノくんが居なくなって、
成長したきみが残る。』

『…』

『きみは、ニノくんに出会って、
成長しただろう?
だから、今は、ちゃんと、ぼくと話してる。』


『…嫌だ。』
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