うさぎの楽器やさん

銀色月

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<やまねこのふえ>のお話

55 前奏曲

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テンくんが加わったオーケストラの音は、
いっそう輝きを増しました。

なにせ、コンサートマスターですからね!

もともと、テンくんの音は、力強く、表現力があって、
そこにいるだけで、メンバーが安心する存在なのです。


「オレも加わっていいかな、いいよね!」
オークも、気を持ちなおして、立ちあがります。
バイオリンを構えて、久しぶりのオーケストラに、嬉々として入っていきました。
 


森のオーケストラが、ひとしきりプレリュードを演奏したところで、
テンくんは、マエストロ・インコ先生の合図を待ちます。
来る、と同時に、ランとアイコンタクトをとりました。

オーケストレーションが、波のように引いていきます。

それと入れ替えに、スポットライトをあびるように、ランが前に出ます。

ランの音を間近できいたオーケストラのメンバーは、目を輝かせました。
目がハートの女子メンバーもいますよ!

いい演奏家と音でふれあうと、それだけで成長するものですから、
そんな機会があったら、ぜひ逃さないでください。


ランの音は、すぐに森のオーケストラに受け入れられました。
ランは、この森で生まれ育ったのですから、
根底に流れる音楽は、かけはなれたものではありません。
あたりまえといえば、あたりまえでしたね!

ただ、2ndが1stに語りかけることはありませんでした。

もう、役目が終わったとわかったからです。
自分の出る幕ではないと。

2ndは、1stの危険な音をカバーすることに徹しました。
なぜなら、
かわりに1stに語りかけたのは、ニノくんだったからです。 

 いえ、

 ただしくは、

 ニノくんの中の、あの、うさぎの楽器やさんだったのですがね!


「やあ、やっとあえたね。

 ずっと、きみと話したかったんだ。
 おぼえてる?きみをつくった、楽器やだよ!」

ニノくんの中のうさぎの楽器やさんは、いつものように軽く話しかけました。



『…おぼえてるよ。わりと、長いあいだお店の棚にいたんだから。』
ふえは、自分を生み出してくれた、
言ってみれば父のような存在のうさぎの楽器やさんに、ぶ然として…、

いつもよりは素直に答えました。
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