最強姉弟、暗殺日和。~ダンジョン無双は極秘で弟は静かに生きたい~

桜竜

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学園と殺し屋とダンジョンと

暗殺者、入学する。姉、早速やらかす。

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 春の陽射しが柔らかく差し込む朝。新学期を迎えたエルゼリット高位戦技学園には、多くの新入生が集まっていた。  
 その人混みのなかに、目立つようで目立たない、目立ってほしくない姉弟が一組。

 「いやぁ~学園っていいわね!制服もかわいいし、空気も血の匂いがしない!」  
 「姉さん、声、でかい。『血の匂い』とか言うなよ……」

 ツインテールが揺れる金髪の美少女・リシア。そしてその隣を歩く黒髪眼鏡の地味系男子・シオン。  
 一見するとごく普通の兄妹のように見えるこの二人、実はかつて裏社会を震撼させた伝説の殺し屋コンビ――通称『クロスコード』である。

 「せっかく“普通の学園生活”っていうのを弟がやりたいって言うからさ~、付き合ってやってるのに。ねえ、どこまで殺しOKだと思う?」  
 「0だよ。基本、ゼロ。てかダメに決まってるだろ」

 かつて幾百の組織を壊滅に追いやり、「生存者ゼロ」を意味するコードネームを背負った姉弟は、現在、“普通”という名の仮面をつけ、学園に溶け込もうとしていた。  
 ただし、弟であるシオンだけが、真面目に溶け込む気満々である。

---

 入学式を終え、恒例の初期ランク診断。  
 校舎地下にある“実技ダンジョン”でモンスターを狩り、実力に見合ったランクが認定されるというシステムだ。

 「君たち、新入生グループ7だね?この扉の奥がダンジョンエリアC。制限時間は30分。勝てば勝つほど高ランク、でも生きて帰るのが最優先。……って説明、聞いてた?」  
 「うんうん♡よーしシオン、一狩りいこっか!」  
 「(もう、いやな予感しかしない……!)」

 入って数分――予感は、最悪の形で的中した。

 「おーらおらおら!はぁーい3連首斬り♡こっちのゴーレムさんもバラバラにしま~す♡」  
 「姉さーーーん!! 火力抑えてって言ったよね!?」

 仲間の新入生たちが剣を交えて必死に戦っている最中、リシア一人が敵を文字通り“無”にしていく。  
 スキル無し、詠唱無し、魔力感知なし。なのにすべてが終わっているという“現象”。

 「おい……今の、見たか?」  
 「え?いや、え?全部見えなかったけど、気づいたら敵いなかった……」  
 「彼女、一体……」

---

「お疲れ様でしたー。初期診断、これから結果を――」

 その後、ダンジョンから戻った生徒たちが集まる前で、教員の目が細められた。

 「グループ7、今回全滅級エリアを13分で完全制圧?……なんだこれ」  
 「いや、それがですね、彼女が一人で……」  
 「げ、言うな言うな言うな……!」

 シオンは即座に学園端末にハッキングし、グループ全員の戦闘ログを編集。  
 姉は“ほぼ何もしなかった”、あくまで全員で戦った体に改竄。

 「ふぅ……ギリセーフ」  
 「なーにやってんの、シオン」  
 「ログ改ざん。姉さんのやらかし帳尻合わせ」  
 「あら~優しい♡シスコン?」

 「違う。俺はただ、“普通に青春”したいだけだ」

---

 こうして、最強の姉弟は誰にも正体を知られぬまま、学園生活をスタートさせた。  
 ……なお、その数日後には、リシアの派手すぎる模擬戦パフォーマンス動画がSNSで拡散され、シオンの胃痛は倍増することとなるのだが、それはまた別のお話である――。
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