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学園と殺し屋とダンジョンと
姉、まさかの学級委員。弟、胃痛をこらえる春の日。
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「おいシオン、おまえの姉ちゃん……今、校庭のモンスターにドロップキックしてなかったか……?」
クラスメイトのエリクが、額に汗を浮かべながら指を差した先には、確かに金髪ツインテの少女が跳び蹴りを炸裂させていた。
「してましたね……授業中なのに……」
シオンは視線を外し、そっとため息をついた。
—
エルゼリット学園に入学してから数日。
姉・リシアの“通常運転”ぶりは予想以上で、最強の座を維持しつつ、日々何かしら目立つことをしでかしていた。
初日はダンジョンを13分で無双。
翌日は購買でパンを買うために先輩を回し蹴り(※間違えて)。
三日目には、なぜか教師陣に見初められ――
「リシア・アークライト。貴様、学級委員をやれ」
「えっ♡ やるやる!そのかわり、ワタシの授業カリキュラムは暗殺と爆破を追加で!」
……そして、今。
「委員長」として任された“校内施設の安全点検”中に、訓練用のスライムを暴力的に倒しているわけである。
—
「なにが悲しくて、最強暗殺者の姉が学級委員やってるんだ……」
「妹にしか見えねえけどな」
「うるさいな。俺は平穏を保つので必死なんだよ」
教室に戻った後、シオンはこっそりタブレットを開いて、校内監視カメラの映像ログにアクセスする。
姉の奇行が映っていないか、日々の確認は欠かせない。
……ただし今日に限って、少しだけ事情が違った。
—
その日の午後。シオンは一人の女子生徒に呼び止められた。
切れ長の瞳と銀髪が特徴的な美少女――イリーナ・フォルテス。クラスの成績上位かつ、戦闘評価も高い才媛だ。
「シオン・アークライト、少し話があるの」
「……はい?」
誰とも積極的に関わろうとしないシオンが声をかけられたことで、教室の視線が一斉に集まる。
(……やめてくれ、目立つの嫌なんだ……)
—
「聞きたいことがあるの。入学初日のダンジョン訓練――あなたの姉がグループにいたわね」
「それは……はい」
「私の知っている“戦技パターン”と一致しない行動が多数見受けられたのよ」
「……具体的には?」
「魔力の軌道が存在しないのに、敵が瞬時に崩壊していた。それも複数回。これは正規のスキルでは説明できない」
シオンは汗をかきながら、精一杯“無知な一般人”の顔をする。
「えっと……僕の姉って、実はパワーバカで……戦い方がワイルドなんです、はい」
「……なるほどね。言葉は噛み合っていないけど、態度からして嘘じゃないように見えるわ」
イリーナは一歩引いて、「ふぅ」と軽く息をついた。
「でも、私は見た目や態度じゃなくて“現象”を見るの。あなたたち姉弟……普通じゃないわよね?」
その言葉に、シオンの表情が一瞬だけ強張る。
(――バレかけてる)
「……勘違いだと思いますよ。姉は確かに暴れるのが好きですが、暗殺とかそんな物騒なことは……」
「私、暗殺なんて言ってないけど?」
「っ……!」
――やられた。完全に誘導尋問だ。
—
その日の夜、寮に戻ると、姉がソファで逆立ちしながらプロテインバーを齧っていた。
「ただいまって言わないの?弟くーん」
「リシア、今日さ……クラスの子に、あのときの戦闘について突っ込まれた。明らかにバレかけてる」
「あら♡ やっと気づいてくれたのね~」
「いや、おまえの行動が原因なんだが」
「いいじゃん。カッコよかったでしょ?あたしの“流星爆裂裏回転斬”」
「それ今つけた名前だろ」
シオンは頭を抱える。
「マジで頼むから……せめて表で“人外ムーブ”するのやめてくれ。こっちは記録改ざんとフォローで寝る暇ないんだよ……」
そのとき、部屋の端末に緊急通知が入った。
内容は――“明日、Sランクダンジョンへの特例挑戦者募集”。
「へぇ、いいじゃん。行ってみたい♡」
「待て、リシア……お前、また暴れる気か?」
姉はにこりと微笑み、口元にプロテインバーを差し出した。
「だって……“最強”って、我慢できるもんじゃないでしょ?」
—
かくして――また弟の胃痛が1レベル上がった。
クラスメイトのエリクが、額に汗を浮かべながら指を差した先には、確かに金髪ツインテの少女が跳び蹴りを炸裂させていた。
「してましたね……授業中なのに……」
シオンは視線を外し、そっとため息をついた。
—
エルゼリット学園に入学してから数日。
姉・リシアの“通常運転”ぶりは予想以上で、最強の座を維持しつつ、日々何かしら目立つことをしでかしていた。
初日はダンジョンを13分で無双。
翌日は購買でパンを買うために先輩を回し蹴り(※間違えて)。
三日目には、なぜか教師陣に見初められ――
「リシア・アークライト。貴様、学級委員をやれ」
「えっ♡ やるやる!そのかわり、ワタシの授業カリキュラムは暗殺と爆破を追加で!」
……そして、今。
「委員長」として任された“校内施設の安全点検”中に、訓練用のスライムを暴力的に倒しているわけである。
—
「なにが悲しくて、最強暗殺者の姉が学級委員やってるんだ……」
「妹にしか見えねえけどな」
「うるさいな。俺は平穏を保つので必死なんだよ」
教室に戻った後、シオンはこっそりタブレットを開いて、校内監視カメラの映像ログにアクセスする。
姉の奇行が映っていないか、日々の確認は欠かせない。
……ただし今日に限って、少しだけ事情が違った。
—
その日の午後。シオンは一人の女子生徒に呼び止められた。
切れ長の瞳と銀髪が特徴的な美少女――イリーナ・フォルテス。クラスの成績上位かつ、戦闘評価も高い才媛だ。
「シオン・アークライト、少し話があるの」
「……はい?」
誰とも積極的に関わろうとしないシオンが声をかけられたことで、教室の視線が一斉に集まる。
(……やめてくれ、目立つの嫌なんだ……)
—
「聞きたいことがあるの。入学初日のダンジョン訓練――あなたの姉がグループにいたわね」
「それは……はい」
「私の知っている“戦技パターン”と一致しない行動が多数見受けられたのよ」
「……具体的には?」
「魔力の軌道が存在しないのに、敵が瞬時に崩壊していた。それも複数回。これは正規のスキルでは説明できない」
シオンは汗をかきながら、精一杯“無知な一般人”の顔をする。
「えっと……僕の姉って、実はパワーバカで……戦い方がワイルドなんです、はい」
「……なるほどね。言葉は噛み合っていないけど、態度からして嘘じゃないように見えるわ」
イリーナは一歩引いて、「ふぅ」と軽く息をついた。
「でも、私は見た目や態度じゃなくて“現象”を見るの。あなたたち姉弟……普通じゃないわよね?」
その言葉に、シオンの表情が一瞬だけ強張る。
(――バレかけてる)
「……勘違いだと思いますよ。姉は確かに暴れるのが好きですが、暗殺とかそんな物騒なことは……」
「私、暗殺なんて言ってないけど?」
「っ……!」
――やられた。完全に誘導尋問だ。
—
その日の夜、寮に戻ると、姉がソファで逆立ちしながらプロテインバーを齧っていた。
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「あら♡ やっと気づいてくれたのね~」
「いや、おまえの行動が原因なんだが」
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「へぇ、いいじゃん。行ってみたい♡」
「待て、リシア……お前、また暴れる気か?」
姉はにこりと微笑み、口元にプロテインバーを差し出した。
「だって……“最強”って、我慢できるもんじゃないでしょ?」
—
かくして――また弟の胃痛が1レベル上がった。
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