48 / 118
巡る世界
1
しおりを挟む禁忌を破ったのは、
妖怪側。
それは美しい娘だった。
娘もその美しい妖怪に好意を持った。
為るべくしてなった関係だった。
そうして産まれたのは、希望だったのか。
それは未だに解らない。
*********
*優月side*
地下室に暖かい風が吹き荒れて、クロスを抱き締めて倒れない様身体を伏せる。
一瞬の出来事。
風が止むと、
白い髪に変身し、剥き出しになった上半身から湯気をあげた先輩の背中が見えた。
先輩の前に姉ちゃんが長い髪をなびかせて直立してた。
「「あぁ……あああ―――……」」
葵が唸る。
顔を上げて二人を凝視する。長い髪に隠れていた顔が風に煽られ露になった。
鈍色の肌がひび割れて、中の白い骨が覗いていた。
限界だったんだと改めて判った。
妖怪を人間にする。
そう姉ちゃんは言った。
そうする為に“龍の宝珠”に成るって……。
何が起こるか心配で、けど、確かに感じるおばあちゃんの気配に安心もして、見守るしかないんだと覚悟した。
何かあれば、手助けするんだって身構えて。
狭い地下室が何倍にも大きく感じられた。
早く助けたい。
僕の中の血が沸々と沸き上がる。
..
何かが目覚め様としているのが解った。
それは、僕の人生が変わる瞬間。
姉ちゃんが目覚めた様に、僕の完全なる目覚めが急速に始まっていた。
姉ちゃんの額が光りだす。それは星の様に仄かな慎ましやかな光り。
龍の鱗が光ってるんだ。
そして、先輩の全身が同じ光りに包まれて、形を変える。
この狭い地下室が一杯になるくらいに光りは伸びて、先輩が変化した。
長い尾を持つ白い龍に。
キラキラ光る鱗が全身を覆った蛇の様な躰。白髪はその背中を沿って長く揺れて、頭の左右に枝の様に先が丸く伸びた角が他と同じ様に白く輝いていた。
長い睫毛に縁取られた眼は、黒い眼球に白い瞳。
恐ろしくも神々しいその姿に息を呑む。
「成人した」
いつの間にか傍に居た朗が呟いた。
「大人になったの?」
「まあ、そんな感じだ」
長く生きてるのにまだ子どもだったって考えると、何か変だけど、龍の成人の条件は龍の宝珠を手に入れる事。
そうなると、姉ちゃんは“珠”に成っちゃったの??
姉ちゃんの行方を心配して目を凝らす。
ちゃんと姉ちゃんの姿でそこに居た。
安堵の溜め息を吐くも、これからどうなるのか想像も出来なくて、知らず朗に寄り掛かって居た。
*優星side*
温かい力が額から全身に広がる。
まるで羽根を広げたみたいに背中から力が突き抜けて、その力が響夜くんに届いたのを感じた。
解る。
これが“ルージュ”の能力。
響夜くんは、成人龍に成った。
ふわりと足が地に付き、しっかりとした感覚が身体に戻って来た。
手にした閻魔帖が示す力の使い方。
「響夜くん。頑張ろう」
「ああ。優星」
何だろう。
この一体感。
響夜くんと私が、まるで一人の人間に成ったみたいな感覚。
これは癖になる。
まるで快感。
「鬼の妖力を残らず吸い尽くすわよ!」
今なら何でも出来る気がする。
響夜くんとなら、出来ない事はない!
額に集まる力を鬼にぶつける。
「「グワァッ!!」」
大きな悲鳴が響き渡る。
三本角がひび割れ、布が剥がれる様に皮膚が崩れ落ちて行く。
それは水の流れの様に止まらない。
鬼の外側が崩れ落ちたと同時に河童達も剥がれ落ち、河童を長い尾でそっと受け留めた響夜くんが朗に渡す。
私は力の為すがまま、鬼の妖力を吸い取る。
それはそのまま響夜くんの力に成る。
「「う―――ガアァ―――……」
それはまるで断末魔の叫び。
そして唐突に声が止み、“鬼火”が消えた。
鈍色の鬼が居た場所に肌色の裸体男の子が佇んで居た。
3歳くらいの男の子。
その身体は傷だらけで痛々しかった。
ゆづがその子を抱き締めた。
「大丈夫だよ」
優しく言って、両手から流れる緑色の液体をその子に擦り付けた。
「うぁ……あああんっ」
その子は泣き始めた。
「―――……あさん。母さんっ!!」
母を呼ぶ小さな子ども。
聞こえてる?
先生。
*優月side*
葵が崩れる。
ひび割れた皮膚が落ちる時、朗の両親も解放された。
先輩が受け留めて朗に渡した。
僕は葵に集中する。
叫び声が響き。
躰が崩れる。
崩れた鈍色の肌の下、小さな姿が見えた。
“鬼火”が消えて、鈍色の土くれの中、露になった小さな葵。
その小さな身体に無数の傷がついていた。
僕は両手の平をむき出しの壁に擦り付け深い傷をつける。
そこから滴る血液は、緑色をしていた。
「大丈夫だよ」
小さな葵を抱き締めて傷に手を当て治す。
震える幼い葵。この姿こそが葵本来のもの。
「うぁ……あああんっ」
傷の痛みに涙が零れて、
「―――……あさん。母さんっ!!」
会いたい人の名前を呼ぶ。
「怖いよぉ」
身体の傷は治せても、心の傷は治せない。
この子にだって幸せになる権利がある!
0
あなたにおすすめの小説
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
孤独な蝶は仮面を被る
緋影 ナヅキ
BL
とある街の山の中に建っている、小中高一貫である全寮制男子校、華織学園(かしきのがくえん)─通称:“王道学園”。
全学園生徒の憧れの的である生徒会役員は、全員容姿や頭脳が飛び抜けて良く、運動力や芸術力等の他の能力にも優れていた。また、とても個性豊かであったが、役員仲は比較的良好だった。
さて、そんな生徒会役員のうちの1人である、会計の水無月真琴。
彼は己の本質を隠しながらも、他のメンバーと各々仕事をこなし、極々平穏に、楽しく日々を過ごしていた。
あの日、例の不思議な転入生が来るまでは…
ーーーーーーーーー
作者は執筆初心者なので、おかしくなったりするかもしれませんが、温かく見守って(?)くれると嬉しいです。
学生のため、ストック残量状況によっては土曜更新が出来ないことがあるかもしれません。ご了承下さい。
所々シリアス&コメディ(?)風味有り
*表紙は、我が妹である あくす(Twitter名) に描いてもらった真琴です。かわいい
*多少内容を修正しました。2023/07/05
*お気に入り数200突破!!有難う御座います!2023/08/25
*エブリスタでも投稿し始めました。アルファポリス先行です。2023/03/20
早く惚れてよ、怖がりナツ
ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。
このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。
そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。
一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて…
那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。
ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩
《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる