河童様

なぁ恋

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我楽多の世界で

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姉ちゃんが十拳剣を頭上に翳す。
僕は、今持てる力を剣に込めた。

「「行っけ―――!!」」

姉ちゃんと僕の声が重なり、光を帯びた剣が、くうを裂く様に振り下ろされた。

剣から放たれた光は黒龍を突き抜け、瞬間、黒龍は動きを止める。
変化はない様に見えた。
だけど、その躰にヒビが入り、パリンッ  と、音を立てて剥がれ落ちる。

剥がれたのは、黒い鱗。

そのまま、力を失った黒龍は地上に弧を描いて落ちて行った。

僕達は、勝ったの?!

先輩が、黒龍を追って地上を目指す。
落ち行く先は、龍羽神社の在る山。

場所。

意識が急激に引っ張られ、白い光になって、十拳剣から離脱する。
感覚でそうだと理解した。

今度は、愛する朗と一緒に自分に帰る。

僕達は、いつも、いつだって一緒に居るんだ。
それが当然で、自然な事。



突然、身体の感覚が戻る。
しっかりと朗に抱き締められて居て、何の不安も恐れも感じないですんだ。

「朗……」

愛しい人の名前を呼ぶ、僕を見つめる星屑の輝く瞳。
視線が上空へ移動する。

「黒龍が、来る」

 朗の視線の先には、さっきまで落ちる所を追い掛けていた黒龍が、今度は頭からこちらに落ちて来る姿が見える。
地上に到達するまでには、そう時間がかからない様に思えた。

「優月。大丈夫なのか?」

クロスの心配そうな声。目をやると、クロスの背中が見えた。
まるで僕達を護る様な体勢。
その先には黒い闇と茶色の炎が揺れていた。

「何が あったの??」

僕が離れてた間に何があったの?

体を起こし、クロスの見てる先を見ると、そこには右手の焔を全面に出した小さな優良が、黄泉のイザナミと対峙している所だった。



* 黄泉のイザナミ side*

右のの土の焔を纏った小さな妖怪。
この妖怪が、イザナミ。

私の元。
私は影。
私はニセモノ。

だが、この力は“イザナミの力”は、大本で在る者よりも私の方が強い!
ならば、私が吸収してしまえば良いのではないか??


そうだ。
そうすれば、私は私で居られる!

胸に渦巻く嫉妬心が、希望に変わる。
希望は欲望に変わり、強い力が湧き上がる。

その時、頭上に頭のの気配を感じ、実際に黒い鱗が降り注いで来た。


「「ふふ……ふふふふ。アハハハ!」」

あまりの喜びに気が変になった様に笑いが込み上げる。
気が?
そうか。そうだ。私は元から狂って居るんだ。
その狂いを正すには、目前の“力の塊”を───喰えば良い。



“力の塊”
ただの妖怪。
ただの妖怪で“イザナミ”ではありえない。
私の方が遥かにイザナミで、イザナミの傍らには、常にイザナギが居る。

黒衣のイザナギが。

頭のが自身の一部を剥がしながら落ちて来る。
           
目前のは、右のの焔を身に纏い厄介だ。

だが……、
「「頭のぉ!!    そなたはまた、母と一緒になるのだ!」」

河童と、の力を持てば“力の塊”を捩じ伏せ、私の一部にしやすくなるだろう。

先に落ちくる黒の鱗を身に纏うと、それは黒衣の着物となり、体を優しく包む。
まるで、イザナギと対の衣の様に。

私こそ、あの方に相応しい。
相応しいのだ!

叫び、頭のを頭上から体に吸収する。
私から産まれた子。
それを母胎へと返す。
黄泉では常に一緒に居たのだから。
それは正当で当たり前の事。



「「あぁああっ───!!」」

頭を締め付ける痛みに体を曲げる。
それが何故かは解っている。
頭のは黄泉を出てから躰を持ち、自我を持ち、自身の力を確立して居た。

右のの場合は、先程視た“河童の記憶”によると、いとも簡単に同化して居た。
それは自我が芽生える初段階の状態で、同意させるのは容易く、さらに“言霊”で縛ったから。

ゆえに、同意無しにその力を吸収した私を拒んだ頭のの自我が、私の内で暴れ狂う。

そこまでして私に抵抗するのか?
先程の“言霊”には簡単に染まったと言うのに。

───……あぁ、そうか。

私でさえ、河童の言い様に怒りが込み上げたのだ。だから、頭のの言い分に耳を傾けねばならないのだろうな。

「「良いだろう。力を手に入れた暁には、そなたの個を認め、解放してやろう。だから今は私と共に……」」

私を解放する為に、長い長い孤独と言う呪縛から逃れる為に。



約束の言葉に同意した頭のの抵抗が止む。
頭に宿る頭のの力、それは全身に浸透する。
身体の先端まで痺れる程の力のうねりが流れ、落ち着くと静寂が訪れた。

客観的に自身を視る。

黒い着物は体の線に柔らかくぴったりと張り付き、額には、雷の筋が横に黒く立体的に浮かび上がる。

それは、力の証。
河童と同じ力の証。

だが、能力は私の方が上!

「「さぁ、始めよう」」

河童の不安を映す顔に満足し、笑みが零れる。

私が私を取り戻し、
私のあの人を手に入れる為に足を踏み出す。

後退る河童に、嬉しくなり声を立てて笑う。

「「私が、イザナミなのだ」」

それが、事実なのだから。



宣言し、足を踏み出すも
足にまとわり着く土が先を阻む。
黄泉の土に似た熱く熱を持ったそれは、泡立ち、肌に刺激を受けた。
泡は、淡い焔を噴き出し、盛り上がる。

それは、雷。
はっきりとした形を持たない私の子らが、黄泉から這い上がって来た。

イザナミの力に、存在に惹かれたのか、黄泉に置いて来た子らが、再び私の内に戻って来ようとして居る。

淡い焔が躰を纏う。

頭から指先、足先まで、心地好い焔がまとわり着き、躰の内に入り込む。
イザナミの全ての力が、私を認め、私に力を与えてくれる。
喜びに体が震えた。

胸には火の雷が心を熱く火照らせ、腹部には黒い雷が留まり、下腹に渦巻く裂く雷が風を湿らせ、 左足に鳴る雷が、右足に伏す雷が大地を踏み固めた。


左手を上げ、目前に佇む河童に視線を定める。

左手には右のと対の若い雷が宿って居た。
力の焔は全身から左手に集中する。


「「想いは、成就させてこそ意味があるのだ」」


声が聞こえた。
愛しい、私のイザナギ。
ずっと聞きたかった声。

「そう。願えば……叶う。それが、神の特権」

私は産女神イザナミ。
それ以外には、なれない者。

河童は右手を翳し、土の焔を纏っている。
けれども、私の焔には敵わない。
八つの内、七つは私と共に在るのだから。

そうして、力が有る者が常に勝って来たのだ。
それがどんなに理不尽な事だったとしても。

、そうして在るものなのだから。





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