河童様

なぁ恋

文字の大きさ
103 / 118
我楽多の世界で

しおりを挟む

 
「この子の名は“ユウキ”と言う。
親が付けた名だ。唯一の贈り物。現在、この名前は何の意味も持たないし、誰も知らない……ああ、君の世界では意味有る言葉なんだね」

“勇気”
優月の中にある勇気。
きっとそれがあの状態を呼んだ。

「私は何故此処に来たんだ?」

自問自答の様に出た言葉。
別世界の物語を聞きに来た訳じゃない。
優月を失わない為にどうしたら良いのか。

今なら解る。
私に出来る事を知りたくて、私は此処に来た。
 

 
「僕達と君達は、似ている。
だが、全てがそうかと訊かれたら、全然違う。
けれどね、出来るなら幸せな未来であって欲しい。
優しい未来であって欲しい」

ロウゼはユウキの頭を優しく撫でる。

「此処は、ユウキの創った沢山のガラクタが転がっている。何故なら、失敗した世界は植物の様に枯れて壊れる」

ロウゼの足下に視線を落とすと、雲の様な形状の白いフワフワとした床だった。
目を凝らすと、それは丸い球体の集まり。
 
「成功しないと、いつまでも僕のユウキは目覚めない。僕はガラクタに囲まれて、窒息しそうだ」

限界はとうに越えて居た。
今の私がそうである様に……。

「僕は、心を繋げる事が出来る“テレパシー能力”を持ってる。
君も自覚は無くともそれとなく感じているんじゃないか?
君は僕だ。能力も受け継いで居る筈だ。
君は君の大事な子を護る為に、その全てを使いなさい。
後悔しない様に、その腕に在る重みを手放さない様に……」
 

 
頭に浮かんだ記憶。学校での事。優月に確かに頭の中で話し掛けて居た。優月もそれに反応して居た。

腕の重み。
身体の感覚が戻って来た。
同時に、ロウゼの世界と繋がった空間が、歪み、薄れて行く。

『幸せに、なりなさい』

ロウゼの声が、確かに聞こえた。

目を閉じる。
静かに、身体に重力がかかって来た。


───……

……

「河童!!」

クロスの声が耳に飛び込んで来た。

河童。
“癒しの力”を持った種族。

現実だったのか夢だったのか?

は“治して”居ると言った。
それさえ、河童の癒しと重なっている。

男?
誰の事だ?
判らない。

判らないが、腕の重みが私の優月だと、理解している。

ドウンッ!

頭上の爆音は、優月の宿った十拳剣がした事。
           
それで解って居るのは、に分かれた優月が危険に曝されて居る事実。
 

「おい! 大丈夫か!?」

クロスの声が必死で、意識がそちらに向く。

「どうしたんだよ?! お前まで意識無くなって、びっくりしたよ」

意識が?

「覚えていない」

クロスが嘘を吐いて居る様には見えないが、優月が息を止めた時の恐怖と違和感を思い出した。

ズウン!

今度は空とは違う、大地の割れる音が響いた。
途端に、何故か忘れかけていた赤い眼を思い出し、そちらを見る。

黄泉のイザナミは、まだそこに居て、その足下の地面はドロリとマグマの様に溶け、足首までが柔らかい土に埋もれていた。

天と地の破壊。
   
まるでを迎えたみたいだ。
 

赤い眼を遮る様に、白い影が目の前に現れた。

「貴方は、優月をお願いします」

影の正体は優良。
小さな緑色の体に白い着物を巻いて、赤い帯のリボンが揺れている。
見た目はまだ幼い。
だが、私の……双子の妹。

「あれは、私。逃げてばかりでは居られない」

妹河童で、イザナミの前世を持つ優良。

優良が右腕を前に翳すと、暖かい風が生まれ、柔らかい着物がヒラヒラと揺れて、優良の躰が土色の焔に包まれた。
右腕の土の焔がその力を発揮した。

「私が“私”を留めておくから、優月を助けて!」

言われて、自然と体が動く。
腕の中の優月に意識を集中する。

優月と十拳剣は今一体化している。ならば、私もそこに行けば良い!
優月は薄らと眼を開けていた。
そこから見えるのは、河童の証である星屑。その内にある優月の魂を捉える。

星屑に視えたのは、優月の軌跡。

無数の星屑の中、その一つ一つがまるで幾人もの人影に見えた。
その中の三つの光が、しっかりとした人型を作り出す。

一つは小さな子どもの菊理媛。
一つは小さな子どものゆうつき。
一つは小さな子どもの優月。

その子らが互いに手を繋ぎクルクルと回る。
回り、それぞれに成長する。
菊理媛は、美しく黒髪の伸びる様が印象的で、
ゆうつきは、勝気な大きな眼が笑う様がとても心騒がせ、
優月は、頭の天辺から足の爪先まで、私の心を捉えて離さない。


も、私は知り、愛している。

だが、今現在求める私の愛する者は、ただ一人。
彼、優月だ。

その輝きを、瞬時に見極め、手を伸ばす。
その手に、確かな感触を感じ、引き寄せる。

腕に抱くのは、優月。
優月だけ。



* 優月side*

硬い尾が何度も刃を掠める。
雷が容赦なく降り注いで来て、痛みはないのに、恐怖で身が縮まる。
気だけは前に進むのに、どうにもならないもどかしさで力が抜けて行く。
思わず周りには聞こえない声を上げた。

「ゆづ!  大丈夫なの?」

姉ちゃんも余裕はない筈なのに、気遣ってくれる。

先輩が黒龍をよけて空を翔け、一瞬攻撃が止んだ。

何も考えられなくて、思考が停止する。
次に攻撃を受けたら負けるかもしれない。そんな不安が頭を過ぎる。

怖い。
怖い!


その時、
何か温かいものに包まれた。
それは、僕の知った温かみ。
僕の今は無い筈の腕を掴まれて、背後を振り向く。

そこに居たのは、朗。

「何で?」

朗は満面の笑みを浮かべて、そして強く抱き寄せられた。

ここは、十拳剣の内、朗の顔が見える訳ないし、感触も在る筈がないのに。

「大丈夫だ」

低い声が、耳元で優しく囁く。

「朗……。幻じゃない?」

頭を撫でられる。

「あぁ、幻じゃない。私だ」

でも、ここは“十拳剣”の内。どうして朗が?
パニくるも、宥める様に背中を撫でられ、落ち着いて来た。

「お前を追って来た」

追って?
思い出したのは、朗の言葉。

“置いて行かないでくれ”

僕は、朗を置いて来てしまってた。

「朗。ごめん! 僕っ」
「いい。いいんだ。こうして私が傍に来た。これが私達の形だ」

何時だって、追い掛けて来てくれるのは朗だ。
それは、前世から。

「今は目前の事だ」

そうだ!  黒龍。
意識を外に戻すと、上空から黒龍目掛けて降下している所だった。

僕は、何の為に力を使うの?
それは、自身の幸せの為に。
大切な人を護る為に。

背後から、ふわりと優しく抱き締めてくれる朗が、僕を安心させ、力をくれる。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

孤独な蝶は仮面を被る

緋影 ナヅキ
BL
   とある街の山の中に建っている、小中高一貫である全寮制男子校、華織学園(かしきのがくえん)─通称:“王道学園”。  全学園生徒の憧れの的である生徒会役員は、全員容姿や頭脳が飛び抜けて良く、運動力や芸術力等の他の能力にも優れていた。また、とても個性豊かであったが、役員仲は比較的良好だった。  さて、そんな生徒会役員のうちの1人である、会計の水無月真琴。  彼は己の本質を隠しながらも、他のメンバーと各々仕事をこなし、極々平穏に、楽しく日々を過ごしていた。  あの日、例の不思議な転入生が来るまでは… ーーーーーーーーー  作者は執筆初心者なので、おかしくなったりするかもしれませんが、温かく見守って(?)くれると嬉しいです。  学生のため、ストック残量状況によっては土曜更新が出来ないことがあるかもしれません。ご了承下さい。  所々シリアス&コメディ(?)風味有り *表紙は、我が妹である あくす(Twitter名) に描いてもらった真琴です。かわいい *多少内容を修正しました。2023/07/05 *お気に入り数200突破!!有難う御座います!2023/08/25 *エブリスタでも投稿し始めました。アルファポリス先行です。2023/03/20

早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。 このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。 そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。 一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて… 那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。 ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩 《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

処理中です...