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言霊のカミサマ
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しおりを挟む「それだわ」
姉ちゃんが僕を指差す。
「何?」
「あんた、無意識に力を放出してる。龍羽くんも見えたよね?」
「そうだな。その力は言うなれば、……無言の言霊の力」
「無言の、って、言葉にしないと言霊なんて使えないでしょう?」
強い力だから、僕はいつも言葉を意識して使ってる。
気を付けて使ってる。
だから学校では前より無口なくらいだ。
気にしないで居られるのは朗と、姉ちゃんと先輩の前でだけ。
「それだけ思ってる事が強いのよ。何を考えてるの?」
訊かれても即答出来ない。
「え……と。」
「まあ、想像は出来るわ。恋人である先生が男で、自分も男で、とか、考えてるでしょう?」
「う」
流石姉ちゃん。
「そんな事、あの男は気にしてないわよ。最初から言ってたじゃない」
溜め息と一緒に吐き出す小言。
「その悩みを、無意識に解決しようとしているんだ」
先輩の指摘にぎくりとする。
「あ……。確かに、大丈夫。性別なんて関係ない。って、頭に浮かぶ度に暗示を掛けてた。……気がする」
「さっき、自分を抱き締めてたでしょう? その時、力の光が視えたわ」
「力の波動が体を包んでいた」
姉ちゃんと先輩の言葉に驚く。
「力の光って、言霊の?」
「そうだと考えられる。俺達は学年が違うから気付かなかったが、教室や、生徒の居る場所でそうしていたんじゃないか?」
「そうかもしれない」
教室では一人だから、つい考えてしまって不安になってしまう。
だから、考え過ぎない内に朗の所へ行くんだ。
「生徒の様子からして、子どもには視えて、大人には視えないのね。子どもは多感だから」
「でも、どうしてそれが皆に影響してしまったの?」
自分の悩みを考えていただけなのに。
「“力の光”が目に視えて居たとして、優月を神々しくて美しい。そう言った表現をする者も居た事を考えれば、それだけでも何らかの影響を与える理由になり得る」
先輩は腕を組んでステージ下を見下ろした。
そこには、全校生徒が居て、こちらを見詰めていた。
それは不気味な程静かに。
「姉ちゃんと先輩は、大丈夫なの?」
不安になって訊くと、
「大丈夫よ。私達は居て居ない様な存在だから」
さらっと答えた。
二人の存在に勇気をもらって、ステージ下を見て問う。
「皆、どうしちゃったの?」
「俺にとって、水先は大切な存在なんだ」
最初に口を開いたのは三菱君。
「え……」
申し訳ないけど、そうは思えない。
小中高と一緒に進学したけど、河童様の時以来、話した事なかったし。
「私も、水先君は大切。貴方が居ると何だか落ち着くの」
違う学年の女子。
「水先は、人とは違う。特別なんだ」
3年の男の先輩。
口々に首を傾げる事ばかりを言われて、戸惑う事しか出来ない。
何故? と、問うと、僕が居るから。って言われているみたいだ。
これは、好意何だろうか?
「だけど、彼が居るから……」
誰かが言った。
彼?
ザワザワと、彼が、彼が。と口にする生徒達。
「でも、追い出したから大丈夫よ」
女子生徒の言葉に、皆が、怖いくらい同じタイミングで頷く。
彼を追い出した?
あ。「朗だ」理解出来た。
僕は確かに“力の光”を放って居たかもしれない。
近くに居れば影響を与えていたかも。
だけど、影響を受けてるって言えば、朗の方がしっくりとくる。
そして、生徒に影響を与えたのは朗だ。
それなら、
「「水宝 朗の影響下の解放。水先 優月の力の光の遮断」」
言霊の発動。
それは、生徒の静けさと比例する様に浸透する。
「あら」姉ちゃんが口元を押さえて笑う。
「あいつのせいだったのか?」
先輩が溜め息を吐く。
そして、我に返った生徒達が、キョトンとして、ゆっくりとざわつきだす。
「あれ? 先生は?」
「終業式終わったの?」
今の出来事をすっぽりと記憶から無くした形になった。
パンッ と、姉ちゃんが手打ちをする。そちらに気を取られた生徒達が注目した所で、
「終わったわよ。さあ、帰宅しましょう!」と、皆を促した。
何事もなかったみたいに、生徒達は体育館から出て行った。
僕らもその後ろについて最後に外に出た。
そこに居たのは、朗。
駆けて来て、飛び付く様に抱き竦められた。
「もう……会えないかとっ」
僕を包む腕を擦る。
生徒達の言葉は、それは、そのまま朗の想い。
僕への朗の想い。
大切で、特別で……不安。
「朗。取り合えず、保健室に行こう」
見上げると、今にも泣き出しそうな朗の顔があった。
その手を取って、朗と多くを過ごした保健室に向かう。
その道中、小さい声で改めて訊ねる。
「朗は僕をどう想ってるの?」
「好きだ」
それは真顔で即答された。
カァッ と、頬が、胸が熱くなる。
その真っ直ぐな想いは、独占欲を沸き起こす。
きっと、朗も同じなんだと思った。
どう行った経緯で生徒達に影響を及ぼしたかはよく判らないけど、それだけ強い想いが朗を不安にさせたんだと。
繋いだ手に力を込める。
僕たちは、ちゃんと心も繋いでる筈なんだ。
だけど、見えないものだから不安にもなる。
だから言葉があるんだと思うんだけど、それがうまく伝わってなかったら?
一人、その想いは暴走する。
足早に保健室に入ると、後ろ手に鍵を締めた。
「僕も、朗が好きだよ。朗が好き。朗だけが好き。他の誰も入る隙なんてないくらい、僕の心は朗だけが満たしてる」
精一杯の想いを言葉に乗せた。
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