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言霊のカミサマ
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しおりを挟む「僕は朗のモノだし、朗は僕のモノだ」
朗の胸に手を当てると、その心拍が激しく波打っているのが判る。
「私は……。とても、我が儘なんだ。優月を一人占めしたい。誰にも触れさせたくない。見せたくない……想わせたくない」
その瞳に隠されていた星屑が煌めき始めた。
「僕も、同じだよ」
朗の胸に置いた手を背中に滑らせ、抱き締める。
「朗を誰にも渡したくない」
「私は、優月しか見えていない。だが、優月の周りには同じ年頃の者達が沢山居る……優月は綺麗だから、誰も放っとかない。そうなれば優月も誰かに心奪われるかもしれない……不安で、不安で」
不安を吐露する唇を塞ぐ。
唇を離して僕と同じ瞳と視線を合わせる。
「僕は朗しか見えない。僕だっていつも不安だよ。朗は、とても素敵な男性だ……。知ってた? 中野先生がいつも朗を見つめてるって。中野先生だけじゃなくて、数えきれないくらいの女子生徒や、たまに男子だって見てる奴は居る」
その度に不安になってた。
「だって女性なら、それだけで男性を引き留められる」
朗も初めは、僕を助ける為もあったけど、お嫁さんにする為に河童に変えた。
「僕は男だ。それだけで不安で……」
「そんな事、私は気にしない」
「判ってる。だけど、僕が気にするんだ」
だから、
「僕は、僕を変化させてる」
最初は無意識だった。だけど、目に見える変化が現れてからは、意識し始めた。
目に見える変化。
「朗」
愛しい人の名前を呼んで、その手を取り、僕の胸に手の平を触れさせる。変化の兆しの起きている、小さく膨らみ始めた胸を……。
僕の身体は変化していた。
それが、必要なのか必要ないのか、解らないけど。
だけど、僕の無意識が変化を促した結果だ。
僕は、男で女でも在る存在に変化するんだと思う。
表現するなら、現在の僕と、前世の自分が重なって行く感じ。
僕たちは、愛しい人と幸せになりたかった。
「優月」
愛しい人が僕の名前を呼ぶ。
「朗」
彼の全てが愛しい。
その瞳を覗くと、煌めく星屑が溢れ出した。それは目の錯覚を起こす程に綺麗な涙で、朗の頬を伝い落ちて行く。
「何で───」
何で泣くの?
口にする前に、抱き締められた。
膝をついた朗が、僕の胸に頬を埋める形になって、
「お前を愛している。優月の、全てを、私の全身全霊をかけて」
あぁ。なんて幸せ何だろう。
朗の頭を包む様に抱き締め返す。
「僕も、何度でも誓うよ。僕の全ては朗のものだ。朗だけが僕の心を温かくしてくれる。朗だけが僕の全て。朗だけが僕の持つ宝物だよ」
“心”が軽くなって行く感覚に、身体が震えた。
目を瞑ると、黄金の輝きが視界を貫き、心から身体から、抜け出て行く。
どうしてか、それが何かは理解出来ないけど、それは、幸せのお裾分けなんだ。って、何となく感じられた。
「愛してる」
なんて素敵な響き。
言葉は水の様に柔らかく、僕らの全てに浸透する。
身体に心に……。
「愛している」
互いを想い合う気持ちを言葉にすると、温かで、幸せな気分になる。
これこそ、言霊の真髄なのかもしれない。
それは今も昔も変わらぬ想いを言葉に乗せて、僕らは生きて行く。
精一杯、僕らの世界を───……。
僕がまだ小さな頃、
おばあちゃんが話してくれた“河童の伝説”。
「この池には河童様が住んでるんだよ。 河童様の作る薬は万能薬で、どんな怪我もたちまちに治ってしまうんだ」
僕の家の裏には小さな池がある。 それは江戸より前は大きな沼で、ある時先祖がひょんな事から河童を助け、感謝した河童が沼を澄んだ小さな池に変えた。
それから先祖は池の側に祠を作り、河童様を奉った。
何代かは河童様と交流を持ち、万能薬を頂いて、代わりにキュウリを差し上げたりしていた。
でも、そう。それは、もう遠い昔話。
人間と河童様は出逢い、長い長い遠回りをして、想いを通わせ、そして、幸せになりましたとさ。
僕と朗はいつまでも幸せに、僕らの世界を生きて行く。
“想い”は永久に、自分の中に在る。
自分の未来を切り開くのは、自分自身なのだから。
河童様
Eエブリスタ 2013/11/19
アルファポリス 2021/01/05
――――end――――
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