光輝く世界で別れて出逢う~世界樹の子どもたち~

なぁ恋

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本編

竜覚醒

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『アンスっ!!!』
 
いきなり、殿下の俺を呼ぶ声が脳天に響く。直後、

ドゴオオォ───ン!!!!
 
近くで爆音が響き、続いて地響きが起こる。
揺れる足元に一同が驚く。

「何だ??」

嫌な予感しかしない。

「これは、を失っているんだ」

ユグドラシルの言葉で予感は的中だと確信する。
それに、聞こえ始めた殿下の声は、悲痛にみちて脳内に響き渡る。


『アンスアンスアンスアンスアンスアンスアンスアンス!!──……』


俺の名を連呼している。

「俺を探してる?」

もう頭より先に体が反応し、揺れる足場を踏ん張って、殿下を探す為外へ飛び出る。

「アウローレンス殿下!」

目の前に広がる光景に驚きしかない。

城の国王陛下の柩が置かれた大広間付近の城壁が頽れ、大きく口を開いている。揺れる大きな影が砂煙に浮かび上がり、周りの人間が酷く小さく見えた。

砂煙が収まると、そこに現れたのは美しく輝く黄金の鱗を持つ、その巨体に見合う大きな羽根を広げた巨大な竜であった。

「うそ!? 竜に目覚めたの?」

背後からヴァロアが叫ぶ。

「「ガァアァァ……っ『アンス……アンスアンスアンスアンスアンスアンス───……!!!』」」

耳に届く咆哮は、脳内では俺の名を叫んでいる。

ズズズズゥンン───……

更に砂煙が舞い上がり、咆哮は激しくなる。
俺の名を叫んでいる。

愛しさがじわりと心を満たす。
殿下は俺を求めている。

涙が零れる。

「俺を呼んでる。行かなきゃならない!」

体が発火しているように熱くなって来て、堪らず走る。殿下の元へ!!


俺のこれまでの恋愛は全て受け身。
来るものは拒まず。去るものは追わず。

だが、殿下のことは別だと言える。言い切れる。

こんなに、愛おしいと思ったのは初めてだ。
追い掛けたいと思ったのは初めてだ。

叫び、逃げ惑う人波を反対に駆け行く。
近くに見えて来た黄金の美しい人の名を叫ぶ。


「アウローレンス殿下!!」


途端に、咆哮が、ピタリと止んだ。
ガラガラと崩れる城の残骸。
見上げる先には巨大な黄金の竜。赤と黄金のオッドアイが瞬く。そして、俺の体程の大きさの顔を寄せて来た。
俺は躊躇なく腕を広げ殿下を迎え入れる。

「どうしたんですか? こんな、壊してしまうなど」

「「グルルゥ───……『お前が居ないのが悪い』」」

俺の体に顔を擦り付けて甘えて来る殿下がとてもとても、愛おしくて……可愛い……
手触りのいい鱗を撫でてやり、その大き過ぎる目元に口付ける。

「そうですね。それは、俺が悪い」

ふふふと、嬉しい笑みが零れる。

「さぁ───……元に戻って下さい。この姿も恐ろしく素敵ですが、貴方を抱き締めたい」

すると、全身が一瞬白く輝いて、そこに現れたのは───……小さな、男の子。
10歳の本来の姿の殿下がそこには居た。

「───さぁ、お出でなさい」

上着を脱ぎ、その露になった裸体の肩に掛けてやる。おずおずと両手を広げ、俺の腕に収まった殿下は、ぎゅっと首筋に小さな腕を絡ませて、首元に頬を寄せる。

「アンス……私の傍から離れてはならぬ」

肩口に温い感触。
泣いておられるのか……。

「はい。申し訳ございません。もう二度と殿下を一人には致しません」

そっと頭を撫でてやると、ほっと息を吐いてその小さな体を俺に委ねた。
年相応の甘え方に震える程愛おしいさが募る。

あぁ。何て、可愛らしい方なのだろう。
そのまま殿下の自室に足を向けた。


周りの者たちに他の王家の方々を見つけるように指示を出し、他には目もくれず前へと進む。

「さあ、まずは服を着なければ」

これより先は、誰よりも何よりも優先すべきことはアウローレンス殿下のこと。

「……私はあたたまりたい……」

その言葉にぞわりと全身が粟立つ。

「ええ、もちろん」

腕の中の小さな殿下の背中を撫ぜてやる。

「お疲れでしょう……まずは少しお休みになりましょう」

「絶対に傍から居なくなるな」

「もちろん。俺は殿下のものですから死しても傍を離れないでしょう」

「……本当に?」

「絶対です」

顔を上げた殿下が、その小さな両手を俺の顔に添え、怪しげに目を細める。

「絶対にか?」

「はい」

当たり前ではないか。
すると、殿下の小さな唇で俺のそれを塞がれ、あろうことか、舌が割って入ってくる。
抗えない。すると、探り当てられた舌を咥えられ、強い痛みを感じた。

「つ……っ」

にっこりと微笑んだ殿下の口端からたらりと血が零れ、それを舌先で舐めとる。

「勿体ない。アンスは美味しいな……お前に“呪詛”を施したよ。父王はこれで死したのだ。お前が私を裏切るなら、私が死ぬんだよ。だけど、お前が裏切らなければ、お前を護る盾となるだろう。私の傍を絶対に離れぬよう……誓いの言葉よりも確かな契約だ」

「幸せなことです」

本当に可愛らしい方だ。

「私の他には誰とも交われぬ」

「当たり前です」

「私の他には誰も見てはならぬ」

「ふ……特別な意味では殿下しか見えません」

束縛されるのがこんなにも嬉しいことだとは今まで気付かなかった。

「……だが。私の特別はヴィクトルだけだ」

一瞬胸が傷んだが、

「それを含めて貴方を愛していますよ」

腕の中の小さな肩が一瞬びくりと震え、再び首元に頬を寄せて来る。

「お前は“エドガー”も愛してくれるのか?」

「既に含まれています。ほら、殿下の全てが俺の腕の中にある」

静かになった殿下は、声を殺して泣いていた。
愛おしさだけが心に広がり、小さな体を抱き締める。

このお方は、俺の、俺だけの、伴侶


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